弁護士 森田 茂夫
    
先日、テレビを見ていたら、病院で使う器具を開発した会社が、その器具に問題がないか、改良すべき点がないかを見るために、いくつかの病院に、試験的に使ってもらえないかと申し出たところ、すべての病院から断られたという番組を放送していました。

その会社は仕方なく、ヨーロッパの病院に依頼し、その器具を試験的に使ってもらっているそうです。
日本の病院が断った理由は、まだ正式に認可されたものではなく、100%安全とは言えないから、ということのようでした。

確かに安全を重視すれば、日本の病院のような対応になるのかもしれませんが、これでは進歩のスピードが遅くなります。
安全と、進歩のスピードと、どちらか一方だけ重視すればよいというものではないは思いますが、日本は安全の方に比重が偏りすぎているように思います。

あるいはもっと一般的に言えば、日本の社会は現状を変更することに慎重すぎるように思います。

規制緩和はなかなか進まないし、私たち弁護士が属する法律の世界でいえば、裁判官は現状を変更する判断をすることに対して非常に慎重です。
裁判で現状を変更する判決を得るためには、変更する理由があることを証明する必要がありますが、この証明が非常に大変ですし、仮に証明されたとしても、裁判官は、和解で穏便に解決しようと考えることが非常に多いように思います。

もっと現状を変更することに対して積極的な社会にした方がよいと思います。少子化で社会の勢いがなくなっている中、このままだと日本の将来が非常に心配です。