「間質性肺炎」と診断された方へ――その肺の病気、アスベストが原因かもしれません 石綿肺(アスベスト肺)の労災認定と、受けられる給付金――弁護士が解説
【この記事のポイント】
「間質性肺炎」「肺が線維化している」と診断されたが、原因は分からないと言われた――。間質性肺炎の中には、過去に吸い込んだアスベスト(石綿)が原因の「石綿肺(アスベスト肺)」が含まれています。石綿肺は、じん肺法の「管理区分」が管理2以上と決定されると、建設現場で働いていた方は550万〜1,300万円の建設アスベスト給付金の対象になり、管理4や合併症がある場合は労災の給付を受けられます。労災の対象にならない方にも、著しい呼吸機能障害があれば救済給付があります。すべての制度の入口は、じん肺健康診断を受けて管理区分の決定を申請することです。本記事では、間質性肺炎と石綿肺の関係、管理区分の仕組み、制度ごとの要件と給付額、準備する資料を解説します。

1. 間質性肺炎と言われたら、まず「昔の仕事」を思い出してください

1. 間質性肺炎と言われたら、まず「昔の仕事」を思い出してください

間質性肺炎は、肺の「間質」と呼ばれる部分に炎症や線維化が起こり、肺が硬くなって酸素を取り込みにくくなる病気の総称です。息切れや乾いた咳が続き、進行すると日常生活にも支障が出ます。原因が分からない「特発性」と診断されることも多いのですが、原因がはっきりしているものもあります。その代表が、粉じんを長年吸い込んだことによる「じん肺」であり、石綿を吸い込んだことによる「石綿肺」です。

石綿肺は、石綿を扱う仕事を辞めてから10年、20年とたってから症状が出ることが珍しくありません。そのため、診察の際に昔の仕事の話が出ず、原因不明の間質性肺炎として扱われているケースがあります。建設現場、造船所、石綿製品の工場、保温・断熱の工事、配管工事、自動車の整備などに携わった経験がある方は、その経歴を必ず医師に伝えてください。原因が石綿だと分かれば、受けられる補償が大きく変わります。

アスベストによる病気の全体像と当事務所のサポートについては、当サイトの「アスベスト(石綿)健康被害の給付金・賠償金相談」をご覧ください。

2. 石綿肺(アスベスト肺)とは――じん肺の一種です

2. 石綿肺(アスベスト肺)とは――じん肺の一種です

石綿肺は、石綿の繊維を長期間にわたって大量に吸い込むことで、肺に線維化(硬くなる変化)が起きる病気で、じん肺の一種です。中皮腫や肺がんと違い、比較的高い濃度の石綿を長く吸い込んだ方に多く見られ、石綿製品の製造や吹付け、断熱材の施工や解体などに従事していた方が典型です。

石綿肺には、次のような特徴があります。

  • 石綿を吸い込んでから発症するまでに、10年以上かかることが多い
  • 石綿を吸わなくなった後も、ゆっくり進行することがある
  • 肺結核、続発性気管支炎、続発性気胸などの合併症を起こしやすい
  • 胸部CTで「胸膜プラーク」(胸膜の肥厚)が一緒に見つかることが多い

胸膜プラークは、石綿を吸い込んだことを示す目印のようなもので、特発性の間質性肺炎との見分けに役立ちます。画像で胸膜プラークを指摘された方は、石綿肺の可能性をより強く疑う必要があります。

3. すべての制度の入口になる「じん肺管理区分」

3. すべての制度の入口になる「じん肺管理区分」

石綿肺について労災や給付金を受けるには、まず「じん肺管理区分」の決定を受ける必要があります。じん肺管理区分は、じん肺健康診断の結果(胸部エックス線写真の像と肺機能検査)をもとに、都道府県労働局長が決定します。

管理区分内容受けられる主な制度
管理1じん肺の所見がない―
管理2エックス線写真の像が第1型で、著しい肺機能障害がない建設アスベスト給付金(550万円〜)、健康管理手帳
管理3(イ・ロ)第2型〜第4型で、著しい肺機能障害がない建設アスベスト給付金(800万円〜)、健康管理手帳
管理4第4型の大きな陰影がある、または著しい肺機能障害がある労災給付、建設アスベスト給付金(1,150万円)

管理区分の決定は、会社を通さなくても申請できます。じん肺健康診断を行っている医療機関で診断を受け、その結果(じん肺健康診断結果証明書)とエックス線写真を添えて、都道府県労働局に申請します。退職した後でも、何年たっていても申請は可能です。

管理2または管理3と決定された方には、申請により「健康管理手帳」が交付され、離職後も定期的にじん肺健康診断を無料で受けられます。症状が進んだときは、改めて管理区分の決定を申請し、区分を上げてもらうことができます。

4. 石綿肺が労災と認められる基準

4. 石綿肺が労災と認められる基準

厚生労働省の認定基準では、石綿を扱う作業に従事した労働者に発症した石綿肺は、次のいずれかに当てはまる場合に、業務上の病気(労災)と認められます。

  • ①管理4の石綿肺(石綿肺によるじん肺症)
  • ②管理2、管理3、管理4の石綿肺に、次の合併症が生じた場合:肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸

つまり、管理2や管理3であっても、合併症があれば労災の対象になります。労災と認められると、治療費(療養補償給付)が自己負担なしになるほか、働けない期間の休業補償給付、療養が長引いた場合の傷病補償年金、症状が固定した後の障害補償給付、亡くなられた場合の遺族補償給付などを受けられます。石綿肺で亡くなられた方のご遺族で、労災の請求が時効になっている場合は、石綿健康被害救済法の「特別遺族給付金」の対象になることがあります(請求期限は2032年3月27日です)。

【ポイント】労災の判断は、管理区分の決定が先です
石綿肺については、原則として、都道府県労働局長が管理区分を決定した後に、労働基準監督署が労災かどうかを判断します。病院で「石綿肺の疑い」と言われただけでは、労災の手続きは進みません。まずはじん肺健康診断を受け、管理区分の決定を申請することが出発点です。

5. 建設現場で働いていた方へ――管理2から給付金の対象になります

5. 建設現場で働いていた方へ――管理2から給付金の対象になります

建設現場で石綿を吸い込んで石綿肺になった方は、国から「建設アスベスト給付金」を受けられる可能性があります。石綿肺の場合、管理2から対象になる点が大きな特徴です。

病態給付額
管理2で合併症がない550万円
管理2で合併症がある700万円
管理3で合併症がない800万円
管理3で合併症がある950万円
管理41,150万円
石綿肺で亡くなられた場合1,200万円または1,300万円(生前の病態による)

対象となるのは、1972年10月1日から1975年9月30日までの石綿の吹付け作業、または1975年10月1日から2004年9月30日までの屋内作業場での建設作業に従事していた労働者、一人親方、中小事業主などです。請求期限は、管理区分が決定された日(亡くなられた場合は死亡の日)から20年です。

給付金を受けた後に症状が進んで上の区分に該当するようになった場合は、差額を「追加給付金」として請求できます。一方、対象期間内に石綿にさらされる建設業務に従事した期間が10年に満たない場合は、給付金が減額されることがあります。労災の給付を受けている方も、給付金は別に受け取れます。

6. 労災の対象にならない方へ――救済給付

6. 労災の対象にならない方へ――救済給付

石綿工場の周辺に住んでいた方、家族が持ち帰った作業着から石綿を吸い込んだ方、特別加入をしていなかった自営業の方などは、労災の対象になりません。こうした方には、独立行政法人環境再生保全機構が実施する「救済給付」があります。

救済給付の対象になる石綿肺は、「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺」に限られます。パーセント肺活量が60%未満であるなど、呼吸機能の検査結果が一定の基準に当てはまることと、石綿を吸い込んだ経緯の確認が必要です。認定されると、医療費の自己負担分と療養手当(月額103,870円)が支給され、亡くなられた場合は葬祭料(199,000円)が支給されます。申請前に亡くなられた方のご遺族には、特別遺族弔慰金(280万円)と特別葬祭料(199,000円)があります。

7. 石綿工場で働いていた方へ――国との和解

7. 石綿工場で働いていた方へ――国との和解

1958年5月26日から1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場で石綿粉じんにさらされる作業に従事し、石綿肺になった方については、最高裁判所が国の責任を認めた判決を受けて、国との和解により賠償金を受け取る手続きが設けられています。対象期間の一部だけ働いていた方も対象になり、石綿肺の場合は、管理2で合併症がない方(550万円)から、管理4(1,150万円)、亡くなられた場合(1,200万円または1,300万円)まで、病態に応じた賠償金が支払われます。労災や救済給付を受けていても、別に受け取れます。

建設アスベスト給付金と国との和解は対象になる方が異なるため、どちらに当てはまるかは職歴で判断します。会社がすでに廃業していても、国に対する請求は可能です。

8. 「特発性」と言われていても、あきらめないでください

8. 「特発性」と言われていても、あきらめないでください

すでに「特発性間質性肺炎」と診断されていても、それで終わりではありません。じん肺の診断は、胸部エックス線写真の読影とじん肺健康診断の結果にもとづいて判断されるため、呼吸器内科の一般的な診察とは視点が異なります。石綿を扱った経歴があり、胸膜プラークがある、画像の変化が石綿肺の特徴と一致する、といった事情があれば、労災病院やじん肺の診療に詳しい医療機関で、改めて診断を受ける価値があります。

職歴の整理も重要です。いつ、どこで、どのような作業をしていたかは、厚生年金の加入記録、雇用保険の記録、当時の同僚の証言などで裏づけます。会社が廃業していても、労災の請求はできます。

9. 準備しておきたい資料

9. 準備しておきたい資料
  • 診断書、胸部エックス線写真、CT画像(胸膜プラークの有無が分かるもの)
  • じん肺健康診断の結果、管理区分の決定通知書(すでにある場合)
  • 肺機能検査の結果(パーセント肺活量などの数値)
  • 職歴のメモ(いつ、どこで、どのような作業をしていたか。現場名や元請会社名も)
  • 厚生年金の加入記録(年金事務所やねんきんネットで取得できます)
  • 雇用保険の記録、給与明細、社員証など、勤務先が分かるもの
  • 当時の同僚や親方の連絡先

石綿肺は進行性の病気です。管理区分の決定や請求の手続きには時間がかかるため、資料の整理は早めに始めてください。

10. よくあるご質問

10. よくあるご質問

Q. 管理1と言われました。もう何も受けられませんか?
A. 現時点では給付金などの対象にはなりませんが、石綿肺は進行することがあります。症状が変わったときは、改めてじん肺健康診断を受け、管理区分の決定を申請してください。石綿を扱った経歴のある方は、健康管理手帳の交付を受けて、定期的に検査を続けることをおすすめします。

Q. タバコを吸っていました。不利になりますか?
A. 石綿肺の認定は、じん肺健康診断の結果(画像と肺機能)で判断されます。喫煙歴があっても、石綿肺そのものの判断や給付金の額には、原則として影響しません。

Q. 働いていた会社がもうありません。
A. 労災の請求は、会社が廃業していてもできます。年金記録や同僚の証言で従事歴を証明します。建設アスベスト給付金や国との和解も、会社の有無にかかわらず請求できます。

Q. 間質性肺炎に加えて、肺がんも見つかりました。
A. 石綿を扱った経歴があれば、肺がんも労災や給付金の対象になる可能性があります。石綿肺の所見がある方の肺がんは、従事期間にかかわらず労災の対象です。両方について、まとめてご相談ください。

11. まとめ――まずは、じん肺健康診断と管理区分の申請から

11. まとめ――まずは、じん肺健康診断と管理区分の申請から

間質性肺炎の中には、石綿が原因の石綿肺が含まれています。石綿肺は、管理区分が決定されると、管理2から建設アスベスト給付金の対象になり、管理4や合併症があれば労災の対象になります。労災の対象にならない方にも、著しい呼吸機能障害があれば救済給付があります。

どの制度を使えるかは、職歴と管理区分で決まります。「原因不明」と言われた間質性肺炎でも、昔の仕事に心当たりがあれば、あきらめずにご相談ください。じん肺健康診断の受け方から、管理区分の申請、給付金の請求まで、一緒に進めていきましょう。

グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ
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【出典・参照条文】

  • じん肺法第4条(じん肺管理区分)・第13条〜第15条(じん肺管理区分の決定等)
  • 厚生労働省パンフレット「石綿による疾病の労災認定」
  • 厚生労働省「石綿による疾病の認定基準について」(平成18年2月9日付け基発第0209001号。平成24年3月29日改正)
  • 特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(令和3年法律第74号)、厚生労働省「建設アスベスト給付金制度」
  • 石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号)、独立行政法人環境再生保全機構「アスベスト(石綿)による健康被害救済給付の概要」(令和7年4月1日現在)
  • 労働安全衛生法第67条(健康管理手帳)
  • 最高裁判所平成26年10月9日判決(泉南アスベスト訴訟)、厚生労働省リーフレット「平成26年10月の大阪泉南アスベスト訴訟最高裁判決により、国の損害賠償責任が認められました」
  • (注)本記事は一般的な解説であり、各制度の対象になるかどうかや金額は、職歴や診断の内容など個別の事情により判断されます。制度の内容や金額は改定されることがあります。実際の対応にあたっては専門家にご相談ください。
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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 時田 剛志

労働災害(労災)

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成27年12月登録後、労働災害に関する損害賠償請求案件を多数担当。安全配慮義務違反に基づく会社への賠償請求、後遺障害等級の認定対応、休業損害・逸失利益の算定など労災全般に精通。脳疾患等も取扱い、賠償額1億円超えの解決実績もある一方、1級~14級までぬかりなく対応。力強い交渉と柔軟な解決策を武器にしており、「労働災害と従業員からの損害賠償」をテーマにしたセミナーでの講演実績もあり、実務と理論の両面から被災者を支援する。