不倫慰謝料で「訴状」が届いたら 答弁書・第1回期日・和解までの流れと、絶対にやってはいけないこと――弁護士が解説
【この記事のポイント】
内容証明郵便の段階を経て、あるいは何の前触れもなく、裁判所から「訴状」が届くことがあります。訴えられたという事実に動揺し、封を開けられないまま放置してしまう方もいますが、それは最も危険な対応です。答弁書を出さずに第1回期日を欠席すると、相手の主張をすべて認めたものとみなされ、請求どおりの判決が出てしまうおそれがあります。本記事では、訴状が届いたときに確認すべき書類、答弁書の役割、裁判所の管轄、訴訟の流れと和解による解決まで、慰謝料を請求された側が知っておくべきことを弁護士が解説します。

1. 訴状は「特別送達」で突然届く

1. 訴状は「特別送達」で突然届く

裁判所からの訴状は、「特別送達」という特別な郵便で届きます。郵便局員が直接手渡しする方式で、封筒には裁判所名が記載されています。不在の場合は不在票が入り、一定期間郵便局で保管されます。

不倫慰謝料の請求は、まず内容証明郵便で届き、交渉がまとまらなかった場合に訴訟へ進むのが典型的な流れです。しかし、事前の請求がないまま、いきなり訴状が届くこともあります。いずれにしても、訴状が届いたということは、相手方が裁判所の手続を使って本格的に請求を始めたということです。ここからは、期限のある手続が動き始めます。

【重要】受け取りを拒否しても、訴訟は止まりません
受け取りを拒否したり、不在票を放置したりしても、裁判所は書留郵便に付する送達(付郵便送達。民事訴訟法107条)などの方法で送達を完了させることができます。この場合、発送した時点で送達されたものとみなされ、あなたが中身を読んでいなくても手続は進みます。受け取ったうえで、すぐに対応を考えることが大切です。

2. 封筒の中身と、まず確認すること

2. 封筒の中身と、まず確認すること

特別送達の封筒には、通常、次のような書類が入っています。慌てずに、一つずつ確認してください。

書類確認するポイント
訴状誰が、誰に対して、いくら請求しているか(請求の趣旨)、その理由として何を主張しているか(請求の原因)
証拠書類(甲号証)相手方が不貞の根拠として何を提出しているか(写真、LINE、探偵の報告書など)
口頭弁論期日呼出状第1回の期日(日時・法廷)と、どこの裁判所か
答弁書催告状答弁書の提出期限(通常は第1回期日の1週間前程度)
答弁書の書式裁判所が用意した記入用の様式(簡易なもの)

特に重要なのが、第1回期日の日時と、答弁書の提出期限です。この2つは、あなたの都合を聞かずに裁判所が指定しています。手帳やカレンダーに必ず書き込み、そこから逆算して準備を始めてください。

3. 絶対にしてはいけない「無視」――欠席判決の仕組み

3. 絶対にしてはいけない「無視」――欠席判決の仕組み

訴状が届いたときに最もしてはいけないのが、何もせずに放置することです。民事訴訟では、被告が答弁書を提出せず、第1回期日にも出頭しない場合、原告が主張する事実を認めたもの(自白したもの)とみなされます(民事訴訟法159条3項・1項)。その結果、原告の請求どおりの判決、いわゆる「欠席判決」が言い渡される可能性が高くなります。

たとえば、相手方が300万円を請求していれば、本来であれば争えたはずの事情――既婚者と知らなかった、婚姻関係は破綻していた、請求額が相場より高すぎる、時効が完成している――を一切主張できないまま、300万円の支払いを命じる判決が出てしまうおそれがあります。判決が確定すれば、給与や預貯金の差押えといった強制執行を受ける可能性も生じます。

「争っても勝てそうにない」と感じている場合でも、放置は得策ではありません。不倫の事実自体は認めるとしても、慰謝料の金額は、不貞の期間や態様、婚姻関係への影響などによって大きく変わります。答弁書を出して金額を争うだけでも、結果は大きく変わり得るのです。

4. 第1回期日と答弁書――出頭できなくても守る方法

4. 第1回期日と答弁書――出頭できなくても守る方法

第1回期日は、あなたの都合を聞かずに決められています。仕事などでどうしても出頭できないこともあるでしょう。その場合でも、答弁書をきちんと提出しておけば、欠席しても答弁書に書いた内容を陳述したものとみなされます(民事訴訟法158条)。つまり、答弁書さえ出しておけば、第1回期日を欠席しても直ちに不利益な判決が出ることはありません。

◆ 答弁書に書く内容

  • 請求の趣旨に対する答弁――通常は「原告の請求を棄却する」「訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求める。
  • 請求の原因に対する認否――相手方の主張する事実の一つひとつについて、「認める」「否認する」「知らない(不知)」「争う」を明らかにする。
  • 被告の主張――既婚者と知らなかった、婚姻関係が破綻していた、時効が完成しているなど、こちら側の言い分を述べる。

提出期限までに十分な検討ができない場合には、まず請求の趣旨に対する答弁を記載し、請求原因に対する認否や具体的な主張は「追って準備書面で主張する」として、期限内に提出する方法が実務上よく用いられます。期限を守ることが何より優先です。

【注意】答弁書に書いたことは、後に不利になることもあります
答弁書は裁判の記録に残ります。安易に「すべて認めます」「申し訳ありませんでした」などと書くと、後から争うことが難しくなります。事実関係を整理しないまま自己判断で書き込む前に、弁護士に相談することをおすすめします。

5. どこの裁判所で行われるのか――管轄と移送

5. どこの裁判所で行われるのか――管轄と移送

不倫慰謝料の訴訟は、請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超えれば地方裁判所で扱われます。多くの請求は140万円を超えるため、地方裁判所になるのが一般的です。

注意したいのは、訴えられる裁判所が、あなたの住所地とは限らないことです。訴訟は被告の住所地の裁判所に起こすのが原則ですが(民事訴訟法4条)、金銭の支払いを求める訴訟では「義務履行地」の裁判所にも起こすことができ(同法5条1号)、金銭債務は原則として債権者の住所で支払うべきものとされているため(民法484条)、結果として相手方の住所地の裁判所に訴えられることがよくあります。不法行為があった地の裁判所に訴えることも可能です(民事訴訟法5条9号)。

遠方の裁判所に訴えられて出頭の負担が大きい場合には、当事者間の衡平などを理由に、別の裁判所への移送を申し立てる余地もあります(同法17条)。また近年は、争点整理の手続を中心にウェブ会議が広く活用されており、遠方の裁判所であっても、毎回出向かずに手続を進められる場面が増えています。

6. 裁判で争点になること

6. 裁判で争点になること

不倫慰謝料の訴訟では、不貞行為があったこと、あなたに故意または過失があったこと、損害が生じたことは、請求する側(原告)が証拠によって立証しなければなりません。訴えられたからといって、相手方の主張がそのまま認められるわけではないのです。

主な争点請求された側が検討すること
肉体関係の有無相手方の証拠が、肉体関係を推認させるに足りるものか(食事やメッセージのやり取りだけでは足りない場合もある)
故意・過失既婚者と知らなかった、知らなかったことに落ち度がない、婚姻関係が破綻していると信じた相当の理由があった
婚姻関係の破綻関係を持った時点で、相手方夫婦の婚姻関係がすでに破綻していなかったか
消滅時効相手方配偶者が不貞と相手を知った時から3年が経過していないか
慰謝料の額不貞の期間・回数・態様、婚姻期間、離婚に至ったか、既婚者側の主導の有無など

7. 和解という解決――判決まで行かないことも多い

7. 和解という解決――判決まで行かないことも多い

訴訟が始まると、期日はおおむね1か月から2か月に1回程度のペースで開かれ、双方が主張と証拠を出し合って争点が整理されていきます。その途中で、裁判所から和解を勧められることが少なくありません。不倫慰謝料の訴訟では、判決に至る前に和解で解決するケースも多いのが実情です。

和解には、判決にはないメリットがあります。判決は基本的に「いくら支払え」という金額の結論しか示しませんが、和解では、支払方法や付随する条件を柔軟に取り決めることができます。

和解で取り決められることの例請求された側にとっての意味
分割払い一括での支払いが難しい場合でも、無理のない計画で解決できる
求償権の放棄交際相手(既婚者側)への求償をしない代わりに、支払額の減額を図ることがある
口外禁止条項職場や周囲に事実を広めないことを互いに約束できる
清算条項和解で定めたもの以外に、互いに一切の債権債務がないことを確認し、紛争を終わらせる

8. 判決が出たら――控訴と仮執行宣言

8. 判決が出たら――控訴と仮執行宣言

和解が成立せず判決が言い渡された場合、その内容に不服があれば、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴することができます(民事訴訟法285条)。この期間を過ぎると判決は確定します。

また、慰謝料の支払いを命じる判決には「仮執行宣言」が付されることがよくあります。仮執行宣言が付いていると、判決が確定する前、つまり控訴している間であっても、相手方は強制執行の手続をとることができます。控訴するなら、執行を止めるための手続(執行停止の申立て)も併せて検討する必要があります。判決の内容と今後の見通しを踏まえて、控訴すべきかを冷静に判断することが重要です。

9. まとめ――訴状が届いたら、まず期限を確認し、専門家へ

9. まとめ――訴状が届いたら、まず期限を確認し、専門家へ

訴状が届いたときにやってはいけないことは、放置すること、相手方に直接連絡して感情的なやり取りをすること、そして自己判断で不利な内容を書面に書いてしまうことです。当時のLINEやメッセージを削除してしまうのも避けてください。相手方の証拠だけでなく、あなたに有利な事情を示す資料まで失われてしまいます。

訴訟は、決して「負けが決まった手続」ではありません。立証責任は請求する側にあり、慰謝料の金額にも争う余地があります。答弁書の提出期限は待ってくれません。訴状が届いたら、まず第1回期日と提出期限を確認し、できるだけ早く弁護士にご相談ください。同じ弁護士が交渉から訴訟まで一貫して対応することで、あなたの負担を減らしながら、適正な解決を目指すことができます。

グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ
私たちは、開所以来35年以上、地域の皆様の法律問題に一貫して寄り添って参りました。慰謝料を請求されてお困りの方が、冷静に、そして適切に対応できるよう、法的な専門知識と経験を活かして全面的にサポートいたします。あなたの不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

【出典・参照条文】

・民事訴訟法第4条・第5条第1号・第9号・第17条(管轄・移送)、第107条(書留郵便等に付する送達)、第158条(訴状等の陳述の擬制)、第159条(自白の擬制)、第285条(控訴期間)
・民法第484条(弁済の場所)/裁判所法第33条(簡易裁判所の事物管轄)/民法第709条(不法行為)
・(注)本記事は一般的な解説であり、個別の事案における判断は事情により異なります。実際の対応にあたっては専門家にご相談ください。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 時田 剛志

不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成27年12月登録後、不貞行為を原因とする慰謝料請求案件を多数担当。請求する側・される側のいずれの立場からも対応が可能で、証拠収集の方針から示談交渉・調停・訴訟まで一貫してサポート。力強い交渉と柔軟な解決策を武器にしており、離婚問題とも連携した一体的な解決を得意とし、依頼者の精神的負担の軽減にも配慮した対応を心がけている。