【弁護士が解説】解体工・リフォーム業のアスベスト給付金はもらえる?対象者と損害賠償請求について

このコラムでは、解体工やリフォーム業者の方が国から受け取ることができる「建設アスベスト給付金」の支給要件や、それ以外の補償制度、当時の勤務先企業やメーカーに対する損害賠償請求の可能性について、分かりやすく解説します。

1 解体工・リフォーム業は「アスベスト被害」のリスクが極めて高い

1 解体工・リフォーム業は「アスベスト被害」のリスクが極めて高い

アスベストは非常に安価でありながら、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性といった多様で優れた機能を有していたため、昭和から平成にかけて建物などの建材(スレート屋根、天井板、内壁、吹付剤、水道管など)に幅広く使用されていました。

しかし、アスベストは極めて微細な繊維であり、人が一度吸引してしまうと肺の組織に沈殿・滞留し、数十年という長い年月を経てから肺の線維化(石綿肺)、肺がん、悪性中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになっています。

特に、建物を取り壊す解体工やリフォーム業の現場では、既存の建材を破壊・除去する際に大量のアスベスト粉じんが空気中に飛散します。1975年10月1日から2004年9月30日までの期間に、これらのアスベスト建材の解体・除去作業(廃棄物の運搬や処理作業なども含む)を屋内で行っていた方は、気づかないうちに大量のアスベストを吸引してしまっている可能性が極めて高いのです。

2 解体工が対象になる「建設アスベスト給付金」とは?支給要件を弁護士が解説

2 解体工が対象になる「建設アスベスト給付金」とは?支給要件を弁護士が解説

(1)建設アスベスト給付金とは

かつて国は、アスベストの危険性を認識していながら、その有用性を重視して規制を怠っていました。また、建材メーカーも利益を優先し、被害の危険性を知りながら製造・販売を継続していました。

これに対し、多くの被害者が全国で国家賠償請求訴訟(建設アスベスト訴訟)を提起しました。 最高裁判所は2021年5月17日、「国は1975年には危険性を認識していたにもかかわらず、労働者に防じんマスクの着用を義務付けるなどの規制が遅れ、1975年から2004年まで違法な状態が続いていた」として国の責任を認める判決を言い渡しました。この判決後の基本合意に基づき、国から被害者へ給付金を支給するための「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が2021年に成立し、2022年1月19日より建設アスベスト給付金制度が完全施行されました。

解体工やリフォーム業に従事していた方(またはそのご遺族)がこの建設アスベスト給付金を受給するためには、以下の3つの支給要件を満たす必要があります。

(2) 対象期間

屋内作業場で行われた作業については、1975年(昭和50年)10月1日から2004年(平成16年)9月30日までの期間に従事していたことが条件となります]。 (※1972年10月1日〜1975年9月30日の期間については、石綿の吹付け作業に係る業務が対象です。)

(3) 対象となる業務

日本国内において行われた、以下の「特定石綿ばく露建設業務」が対象です。

建築物や工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、または解体・除去の作業(廃棄物の運搬や処理も含みます)

上記作業の準備作業、および付随する業務(現場監督としての作業も含みます)

これらを、外気が入りにくく石綿の粉じんが滞留するおそれがある「屋内作業場」(屋根を有し、側面の面積の半分以上が外壁などに囲まれている場所)で行っていた場合に認められます。

(4) 対象となる病気

アスベストを吸引したことにより、以下の「石綿関連疾病」にかかったことが要件となります。

①中皮腫
②肺がん
③著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
④石綿肺(じん肺管理区分が管理2〜4、またはこれに相当するもの)
⑤良性石綿胸水

アスベストによる病気は潜伏期間が非常に長いことが特徴であり、肺がんでは15年〜40年程度、中皮腫では20年〜50年程度の潜伏期間を経て発症することが知られています。そのため、「かなり大昔に解体工をやっていただけだから関係ない」と思わず、上記のような病気と診断された場合は過去の職歴を確認することが重要です。

※なお、この給付金は、雇用されて働いていた「労働者」だけでなく、下請けの「中小事業主(常時雇用する労働者数に一定の制限あり)」や「一人親方」、「家族従事者」、またこれらの方が亡くなっている場合は「ご遺族」も対象となります。

3 建設アスベスト給付金以外に解体工が利用できる2つの補償制度

3 建設アスベスト給付金以外に解体工が利用できる2つの補償制度

解体工の方がアスベスト被害に遭った場合、建設アスベスト給付金制度のほかにも、以下の2つの公的補償制度を利用できる可能性があります。

(1) 労災保険制度

業務上の原因によって病気にかかったり死亡したりした場合に、被災労働者やそのご遺族の損害を国が補償する制度です 。対象となるのは、会社に雇用されていた「労働者」および労災保険に「特別加入」していた一人親方などです 。 もし過去にこの労災認定を受けていれば、厚生労働省の「労災支給決定等情報提供サービス」を利用することで、建設アスベスト給付金の申請に必要な資料をスムーズに入手することができます。

(2) 石綿健康被害救済制度

労災保険の対象とならない方(例えば、特別加入していなかった一人親方や周辺住民など)や、労災保険の申請をしないまま亡くなり、時効によって労災遺族補償が受けられなくなったご遺族などを幅広く救済するための制度です。

4 【要注意】解体作業「のみ」の場合、建材メーカーへの損害賠償請求は難しい?

4 【要注意】解体作業「のみ」の場合、建材メーカーへの損害賠償請求は難しい?

建設現場におけるアスベスト被害について、国(給付金)や雇用主への請求だけでなく、危険な石綿建材を製造・販売していた「建材メーカー」に対しても損害賠償を請求したいと考える方は少なくありません。

しかし、従事していた業務が解体作業「のみ」であった場合、建材メーカーへの損害賠償請求は認められないという極めて重要な判決(大阪高裁平成30年8月31日判決)が出ています。

建材メーカーが法的責任を負うのは、主に製品に含有するアスベストの危険性を警告しなかった「警告表示義務違反」があったためです。しかし裁判所は、「解体工事を行う作業者は、施工から何十年も経った建材を解体する際、メーカーが施した警告表示を直接視認することはない」「したがって、メーカーが警告表示をしていたとしても吸引被害の結果を回避することはできなかった(結果回避可能性がない)」として、解体作業のみに従事していた労働者に対する建材メーカーの賠償責任を否定しました。

ただし、これはあくまで「解体作業のみ」の場合です。もしあなたが解体作業だけでなく、建材の取り付けや内装などの「解体作業以外の建設業務」も並行して行っていた場合には、建材メーカーに対しても損害賠償を請求できる余地が十分にあります。

5 メーカーが無理でも「当時の会社(解体業者)」への損害賠償は請求できる!

5 メーカーが無理でも「当時の会社(解体業者)」への損害賠償は請求できる!

解体作業のみを行っていたために建材メーカーへの請求が難しい場合でも、諦める必要はありません。国に対する給付金請求に加えて、「当時所属していた会社(解体業者・勤務先)」に対して損害賠償を請求することは十分に可能です。

雇用主(使用者)は、労働者が安全に働けるように必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法第5条)。 もし当時の会社が、アスベストの有害性や危険性を認識していながら、労働者に対して適切な防じんマスクの着用を義務付けなかったり、散水による粉じん抑制や十分な換気措置を講じなかったりしていた場合、安全配慮義務違反として、あなたに生じた健康被害に対する損害賠償責任を負うことになります。

また、現場の状況を監督すべき立場だった現場監督者などに過失があった場合、会社は「使用者責任」(民法第715条第1項)に基づいて損害賠償責任を問われることになります。

6 解体工のアスベスト申請・損害賠償請求は弁護士にお任せください

6 解体工のアスベスト申請・損害賠償請求は弁護士にお任せください

解体工事やリフォームの現場で働き、年月を経てから息切れや咳、呼吸苦などの症状が現れたり、肺がんや中皮腫などの診断を受けたりした方は、アスベストが原因である可能性が極めて高いです。

しかし、個人で「数十年前の就労状況」や「作業現場にアスベストがあったこと」を証明し、国や当時の会社に対して給付金や賠償金を請求するのは、法的な専門知識や膨大な資料収集が必要となり、極めて困難です。

そのため、アスベスト申請や損害賠償請求を検討されている場合は、弁護士にご相談・ご依頼いただくことをご検討ください。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 権田健一郎

労働災害(労災)

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和2年登録後、労災案件を中心に多数の損害賠償請求事件に対応。障害補償給付の申請、会社に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求の示談交渉・訴訟等、多数の案件を解決してきた実績を有する。専門性の高い労災分野において日々知識の更新を行いながら、依頼者の気持ちに寄り添った迅速かつ丁寧な事件処理を心掛けている。