「勤務先が廃業している」「カルテが残っていない」このような場合でもアスベストの救済は受けられる?

アスベスト給付金の申請を検討される方の多くが、最初の壁として直面するのが「証拠の問題」です。「何十年も前に働いていた会社はもう廃業してしまった」「当時の医療記録(カルテ)はとっくに廃棄されているだろう」「病名はアスベストに関係するとは言われていない」─そのような理由から申請を諦めてしまっている方が非常に多いのが現状です。

しかし、そのような状況でも弁護士のサポートにより申請・認定につながるケースは少なくありません。このコラムでは、証拠が乏しい場合の対処法と「諦めない立証」のための実践的なアプローチを解説します。

アスベスト申請における立証の2つの柱

アスベスト申請における立証の2つの柱

立証が必要な2つのこと

アスベスト給付金(特に労災保険)の認定を受けるために立証が必要なことは、大きく2つあります。

第一は「業務によるアスベストばく露の事実」、第二は「アスベスト関連疾患に罹患していること(または罹患を原因として死亡したこと)」です。

第二の立証(疾患の立証)については主治医の診断書や医療記録によって行われますが、問題は第一の立証(ばく露の立証)が困難なケースが多いという点です。

そして、ばく露の立証に必要な証拠として最も直接的なのが勤務先の記録(在職証明・作業日誌・施工記録など)であり、この勤務先が廃業している場合にどうすればよいかが本コラムのテーマです。

勤務先が廃業している場合の対処法

勤務先が廃業している場合の対処法

事業主証明が取れなくても申請できる

労災保険の申請書には「事業主証明」という欄があり、本来は事業主(雇用主)が証明を行うことが求められています。

しかし、勤務先が廃業している場合は事業主証明を取得することができません。このような場合でも、「事業主証明を取得することができない事情を説明する文書」を申請書に添付することで、労働基準監督署に申請を受け付けてもらうことができます。

「事業主証明が取れないから申請できない」というのは誤りです。労基署の担当者から「事業主証明がないと受け付けられない」と言われた場合でも、諦めずに弁護士に相談することをお勧めします。

勤務の事実を立証するための証拠

公的記録による立証

年金記録は、勤務の事実を立証する非常に有力な証拠です。日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を通じて、過去の勤務先と加入期間を確認することができます。また、雇用保険の記録も同様に活用できます。

源泉徴収票・給与明細・住民税の課税証明書なども有力な証拠となります。

会社関連書類による立証

廃業した会社でも、法人の場合は法務局に商業登記が残っています。登記記録から、会社の業種・所在地・代表者などの情報を確認できます。また、廃業した会社の元経営者・元従業員への聴取・陳述書取得も有力な手段です。

写真・工事記録による立証

当時の作業現場の写真、工事関係書類(施工図面・工事日誌)、建設業許可の記録なども証拠として活用できます。建設業の場合、国土交通省や都道府県の建設業許可データベースに記録が残っている場合があります。

同僚・関係者の証言による立証

当時の同僚・上司・元取引先などに証人として協力を求め、当時の作業内容・職場環境・アスベスト使用状況などについての陳述書を作成することも有効です。「当時の同僚が分からない」という場合でも、業界団体・組合などを通じて連絡先を探せることがあります。

元勤務先が証明を拒否する場合

廃業していない場合でも、元勤務先が「事業主証明」の記入を拒否するケースがあります。「我が社ではアスベストは使用していなかった」などの理由で拒否されることがあります。

このような場合も、事業主証明欄が取得できない旨の説明文書を添付して申請できます。また、元勤務先の主張が事実と異なる場合は、上述のような客観的証拠によってその主張を覆すことも可能です。「勤務先が否定している」という事実だけで申請を諦める必要はありません。

医療記録が残っていない場合の対処法

医療記録が残っていない場合の対処法

医療記録の保存期間と現実

医療法では、診療録(カルテ)の保存期間は「診療の完結の日から5年間」とされています。しかし、実際には保存期間を超えても医療記録を保存している医療機関も少なくありません。

また、電子カルテへの移行に際して古い記録がデジタル化されて保存されているケースもあります。まず医療機関に問い合わせることを強くお勧めします。

医療記録に代わる証拠

死亡診断書・解剖所見

死亡している場合、死亡診断書・死体検案書・解剖所見書は非常に重要な証拠です。これらの書類には死亡原因が記載されており、アスベスト関連疾患が死亡原因として記載されていれば疾患の立証に直結します。

病理組織検査結果

中皮腫の確定診断には病理組織検査(生検)の結果が極めて重要です。病理組織検査の結果(パラフィンブロックおよびプレパラート)は、医療記録の保存期間の定めがないケースも多く、医療機関で保存されている場合があります。病理部に直接問い合わせることをお勧めします。

検査画像(レントゲン・CT)

胸部レントゲン・CT画像は、石綿肺・びまん性胸膜肥厚・胸膜プラーク(アスベストばく露の証拠)などの所見を示す重要な証拠です。医療機関に問い合わせることで残存しているケースがあります。

弁護士による医師との連携・意見書の取得

医療記録が不十分な場合でも、主治医や専門医から「アスベストばく露との因果関係がある」旨の意見書を取得することで、立証を補完できる場合があります。弁護士が医師に対して適切な説明を行い、意見書の作成を依頼することで認定につながるケースがあります。

対象疾患と診断されていない場合の対処法

対象疾患と診断されていない場合の対処法

「5大疾患でない」と言われた場合

主治医から「アスベストとは関係ない」と言われたり、診断名が5大疾患に当てはまらないと言われたりするケースがあります。しかし、「間質性肺炎」「肺線維症」「肺気腫」「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」「胸膜炎」などの病名であっても、アスベストとの因果関係が認められてアスベスト関連疾患として認定されるケースがあります。

特に石綿肺は「間質性肺炎の一種」であり、「間質性肺炎」と診断された方がアスベスト関連疾患として認定されるケースは珍しくありません。

専門医への相談・セカンドオピニオン

アスベスト関連疾患の診断・鑑別は専門的な知識を要します。主治医がアスベスト関連疾患の専門家でない場合、誤った判断がなされることもあります。専門的なアスベスト医療機関やじん肺専門の呼吸器科を受診し、セカンドオピニオンを得ることが有益な場合があります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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