
「父がアスベストの病気で亡くなったが、もう10年以上前の話だ」「母が中皮腫で亡くなった時、給付金制度のことを知らなかった」「家族が石綿肺で亡くなったが時効が過ぎてしまったと聞いた」──そのような方に、ぜひ知っていただきたい制度があります。
「特別遺族給付金制度」です。この制度は、アスベスト関連疾患で亡くなった方の遺族が、死亡から5年以上経過した後でも給付金を受け取ることができるよう設けられた救済制度です。
特別遺族給付金制度とはどのような制度か

労災保険の「時効の壁」を乗り越えるための制度
労災保険の遺族補償給付には「死亡の翌日から5年」という消滅時効があります。アスベスト関連疾患は潜伏期間が20〜50年と長く、被害者が亡くなった後に遺族が給付金制度の存在を知ることも珍しくありません。
このような状況を踏まえ、2006年の石綿健康被害救済法の制定に合わせて、「アスベスト関連疾患で亡くなった労働者の遺族が、死亡から5年以上経過して労災保険の時効が完成してしまっていても給付金を受け取れる」特別遺族給付金制度が設けられました。
特別遺族給付金制度の対象者

対象となる遺族の要件
特別遺族給付金制度の対象となるのは以下の要件を満たす方です。
第一に、亡くなった方(被災者)が業務によるアスベストばく露を原因として、中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水のいずれかに罹患したこと。第二に、その疾病を原因として亡くなったこと。第三に、亡くなった日の翌日から5年以上が経過し、労災保険の遺族補償給付の消滅時効が完成してしまっていること。
なお、亡くなった方が生前に労災認定を受けていた場合でも、遺族がその給付金を受け取っていない場合には対象となり得ます。
遺族の範囲
特別遺族給付金を受け取ることができる遺族の範囲は、労災保険の遺族補償給付に準じます。具体的には、配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順序で先順位の遺族のみが受給資格を持ちます。
配偶者は年齢・障害の有無にかかわらず受給できますが、他の遺族については年齢・収入・障害の有無などの要件があります。
特別遺族給付金の給付内容

特別遺族年金
特別遺族年金は、給付基礎日額に基づいて算定されます。遺族が1人の場合は給付基礎日額の153日分が年間で支給されます。遺族の人数が増えるほど日数が増加し、4人以上の場合は245日分が支給されます。
仮に給付基礎日額が1万円(年収約365万円相当)の場合、遺族1人では年間153万円が継続的に支給されます。受給資格が失われるまで支給が続くため、総受給額は非常に大きな金額になります。
特別遺族一時金
特別遺族年金を受給できる遺族がいない場合、または遺族全員が権利を失った場合に、特別遺族一時金1,200万円が支給されます。
「年金を受け取る遺族がいない」「他の受給権者が死亡した」などの事情がある場合でも、一時金として1,200万円を受け取れる可能性があります。
立証の問題 ~「証拠がない」と諦めないために~

何十年も前の話で証拠がない場合
「父が亡くなったのは20年前で、当時の職場の記録など何も残っていない」「勤務先はすでに廃業してしまっている」「当時の同僚の連絡先も分からない」──特別遺族給付金の申請を検討する際に、最も多くの遺族が直面するのが証拠の問題です。
しかし、証拠が乏しい状況でも弁護士のサポートにより申請・認定につながるケースがあります。
職歴の立証方法
勤務の事実は、年金記録(ねんきん定期便・ねんきんネット)・源泉徴収票・社会保険の加入記録・雇用保険の記録などから立証できる場合があります。
また、当時の写真・給与明細・工事関係書類なども有力な証拠となります。
当時の同業者の証言・業界団体の記録・アスベスト使用が多かった建設現場の施工記録なども手がかりになります。
医療記録が残っていない場合
医療記録の保存期間は原則として5年ですが、実際には保存期間を過ぎても医療記録が残っているケースもあります。
まず医療機関に問い合わせることを試みてください。また、死亡診断書・解剖所見・病理組織検査結果(パラフィンブロックおよびプレパラート)などが残っている場合には、これらを有力な証拠として活用できます。
申請手続きの概要

申請先と必要書類
特別遺族給付金の申請先は、亡くなった方の最後の勤務先の所在地を管轄する都道府県労働局です(労働基準監督署経由で提出します)。
申請に必要な主な書類は、特別遺族給付金支給申請書・亡くなった方の死亡診断書または死体検案書・アスベスト関連疾患と死亡の関係を証明する医療記録・職歴に関する書類・業務によるアスベストばく露の事実を示す資料・遺族関係を示す戸籍謄本等です。
申請後は都道府県労働局が審査を行い、結果が通知されます。





