一度作った遺言書は書き直せる?撤回・変更の方法とトラブルを防ぐポイント

​「一度作った遺言書を書き直したい」「心境や家族状況が変わった」という場合には、遺言書を撤回・変更して何度でもやり直しが可能です。本記事では、遺言書の変更・撤回の方法や注意点をわかりやすく解説します。

はじめに

はじめに

昨今は「終活」の一環として遺言書を書くという人も増えています。
そしてその反面、
「数年前に遺言書を作ったけれど、色々と状況が変わってしまったので内容を変更したい」
「以前書いた内容と、今の自分の気持ちが変わってしまった……」
というようなお話をお聞きすることも増えてきました。

特に、
・持っている財産の状況が大きく変わった
・推定相続人に変動があった
・遺産の受け取り手が先に亡くなってしまった
というような場合には、遺言作成時に前提としていた事実が変わってしまっていますから、書き直しの必要性は高いといえるでしょう。

では、遺言のやり直し、遺言書の作り直しはできるのでしょうか。
答えはYESです。
遺言書は生きている間であれば、いつでも・何度でも・理由を問わず自由に書き直すことができます。前の遺言を撤回したり、変更したりすることができるのです。

人の気持ちや置かれた環境が、年月の経過とともに変化していくのはごく自然なことです。
そして、遺言書は、あなたの「最後の意思」を残す(法的にもコミュニケーションとしても)大切な文書ですから、自身の気持ちや環境に合っていないと感じたときに書き直したいと思うのは当然です。
一方で、いつ自分が亡くなるのか、私たちは正確に予知することはできません。
その意味で、遺言書は、自身が亡くなるまで常に書き直しの必要性があると言えます。

​そこで、以下、遺言書を書き直すための具体的な方法や、後々のトラブルを防ぐための注意点について解説していきます。

遺言書を書き直す方法は3つある

遺言書を書き直す方法は3つある

​一度作成した遺言書を変更したり取り消したりしたい場合、主に次のような方法があります。

①以前の遺言書を物理的に破棄する
②以前の遺言書を加筆・修正する
③新しい遺言書を作成して、その中で古い遺言書を撤回する

以下、それぞれ解説します。

①以前の遺言書を物理的に破棄する

​自筆証書遺言(自身の手書きで作成する方式の遺言)の場合、遺言者自身がその遺言書を自身でシュレッダーにかけたり破り捨てたりして物理的に破棄すれば、遺言は撤回されたとみなされます。

※遺言者以外が遺言書を破棄することは許されません。特に相続人が遺言書を破棄した場合は、相続欠格に当たるとして、相続権が認められなくなる可能性があります。

  • 民法1024条
  • 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

​ただし、この方法は自筆証書遺言を手元で管理している場合に限られます。
例えば昨今、作成した自筆証書遺言を法務局に預け、管理・保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」という制度が始まりました。
この制度を利用している場合、遺言書の原本は法務局に預けてしまいますから、破棄することができません。
もしこの制度を利用している場合は、法務局に対して「遺言書の保管の申請の撤回」を行って、遺言書の原本を手元に取り戻してから破棄(撤回)することになります。

また、公正証書遺言の場合は原本(または原本データ)が公証役場に保管されているため、手元にある正本や謄本を破り捨てても撤回したことにはなりません。
この場合は、後述する③のように、新たな遺言書を作成して撤回することになります。

​なお、ひとつ注意しなければならないのは、遺言書を撤回した場合は、新たな遺言を遺さなければ、遺産の帰属先を指定できていない状態になるという点です。
例えば、自宅不動産について、遺言書で子Aに相続させると指定していたものの、この遺言書を破棄して撤回した場合は、その遺言は無かったことになり、自宅不動産も遺産分割の対象(原則どおり法定相続分で分ける)となっていきます。
そのため、遺産の帰属先について希望がある場合は、遺言の撤回(遺言書の破棄)と新しい遺言書の作成はセットで行うことが望ましいと言えます。

②以前の遺言書を加筆・修正する

​以前に作成した自筆証書遺言の原本そのものに対して、直接二重線を引いて訂正したり、追記したりして、遺言の加筆・修正をするという方法もあります。

民法968条3項
自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

​しかし、この方法は上記のように定められた加除訂正ルール(訂正箇所の指示、署名、押印など)を守らなければ効果を発揮しません。訂正したつもりでも実は無効だった、ということもあり得ます。
また、加除訂正部分が多いと、加除訂正自体も大変ですし、遺言の文章が読み取りづらくなるということもあります。

この方法を採るのは、加除訂正したい部分が少ない場合に限った上で、方式の間違いが無いかよく確認された方がよいと思います。

③新しい遺言書を作成して、その中で古い遺言書を撤回する

新しい遺言書を作成する際に、例えば「○年○月○日付自筆証書遺言の全てを撤回し、新しく以下のとおり定める」などと、古い遺言を撤回するとの文言を記載すると、古い遺言を撤回することができます。

民法1022条
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

​この方法の優れている点は、以前の遺言書が撤回されたことが明確であるという点です。

①の物理的に遺言書を破棄する方法は、例えばその破棄した遺言書の存在を相続人等の一部が知っていた場合や、破棄した遺言書のコピーや下書きが残っていた場合に、「遺言書があるはずだ!」といってトラブルになる可能性があります。
つまり、遺言者が遺言を撤回したのか、遺言書が見つかっていないだけなのか、遺された人々が判断しづらいということです。
その点、③は、遺言の形式に従って新しく遺言をする(その中で撤回の意思表示をする)ため、遺言者の意思や遺言の状況が明らかとなります。

そのため、特に遺言の内容が前後で大きく変わる場合には、この③の方法をおすすめいたします。
さらに細かいことを言えば、付言事項(法的効果を持たない、遺言者のメッセージに当たる部分)の中で、なぜ遺言を撤回・変更したかという理由にも触れられると、遺言撤回の意図も伝わりトラブル防止の一助となることもありますので、一案として覚えておいて頂ければと思います。

ちなみに、以前の遺言が公正証書遺言であったとしても、自筆証書遺言で撤回が可能です。
もちろん、その反対も可能です。

ただし、注意点としては、前の遺言を撤回しますという遺言も、遺言の形式に従って行わなければならないということです。
自筆証書遺言であれば自書や日付、署名押印などの形式を守る必要があります。
公証役場に赴き、公正証書遺言を作成して、前の遺言を撤回することもできます。

いずれの方式でも形式が守られていれば良いということになりますが、特に高齢になってから遺言の撤回や書き直しをする場合は、相続開始後に遺言能力の有無を巡って争いになることもありますので、出来る限り、公正証書遺言によって撤回と新たな遺言を作成して頂く方がトラブル防止に役立つように思います。
そのときの状況に応じて、最も適切と思われる方法で撤回して頂ければと思います。

​日付の異なる遺言書が複数出てきたら?

​日付の異なる遺言書が複数出てきたら?

​もし、遺言者が亡くなった後に日付の異なる遺言書が2枚以上見つかり、上記のような「遺言書を撤回します」というような明文が無い場合、法律上はどのように扱われるのでしょうか。

民法では次のように定められています。

民法1023条1項
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

引用元:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

「後の遺言」、つまり日付が新しい遺言が優先され、これとバッティングする「前の遺言」はその部分が撤回されるという仕組みになっています。
そのため、遺言書の日付は(そもそも形式的な要件ではありますが)この意味でもとても重要ということになります。

ここで、ポイントなのは、撤回されるのはあくまで抵触する部分のみであり、以前の遺言の全てが撤回したとみなされるとは限らないという点です。

​​例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
​2025年の遺言書(A):
「自宅の土地建物は甲に、預貯金は乙に相続させる」
​2026年の遺言書(B):
「預貯金は丙に相続させる」

この場合、預貯金の分け方については内容が矛盾している(バッティングしている)ため、日付の新しい(B)が優先され、預貯金は丙が相続することになります。
一方で、自宅の土地建物についての記載は(B)にはありませんから、(A)に書いてある「自宅の土地建物は甲に…相続させる」という指定がそのまま有効として残ることになります。

​このように、内容が矛盾している部分だけが「撤回された」と判断される仕組みになっています。

しかし、法律上はそうなっていたとしても、遺された遺族からすると、どの記載が有効で、どの記載が無効なのか分かりづらく、混乱やトラブルの原因ともなります。
そのため、一部だけを変更したい場合であっても、全体のまとめ直す方向で、「○年○月○日付自筆証書遺言の全てを撤回し、新しく以下のとおり定める」などとして新しい遺言書を作成することをお勧めします。

​まとめ

​まとめ

いかがだったでしょうか。
人生が進むに連れ、大切にしたい想いや家族への配慮のかたちも変わっていくのは自然なことです。
そのため、一度遺言書を作ったあとも、現在の状況に合わせて見直していくことが大切です。
どのように以前の遺言書を撤回するか、そして新しい遺言書ではどのように遺産の帰属先を指定するかなど、遺言書の書き直しについてご不安がある場合は、ぜひ弁護士までご相談下さい。
ご状況に応じた適切なアドバイスをさせて頂くとともに、必要に応じて新たな遺言作成のサポートをいたします。
ご自身の想いを確実に形にするため、まずはお気軽にご相談ください。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 木村綾菜

相続

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和元年登録。遺産分割・遺留分侵害額請求・遺言作成などの相続分野の案件を多数取扱う他、相続財産清算人として相続人不存在となった遺産の整理を行ったり、高齢となった親の財産の処分のために成年後見人の選任の申立てを行ったりするなど、相続周辺分野の案件の実績も有する。