労働時間に該当するか否かの判断

労働者を雇用していると、どこまでが労働時間となり、どこからは労働時間でないのかという判断で迷うことが多々あるかと思います。

労働時間に該当するか否かについては場面場面の状況により判断が異なることになりますが、厚生労働省が労働時間の考え方として基本的な見解を示している部分もありますので、今回は、厚生労働省が示す基本的な見解の紹介を交え労働時間に該当するか否かの判断について解説をしていきます。

労働時間とは?

労働時間とは?

労働時間は、労働者が使用者の指揮命令のもとに置かれている時間のことを指します。

使用者が労働者に対して明示的に指示を出す場合は当然として、使用者が労働者に対して明示的に指示を出すわけではないものの業務遂行上必然的に行うことになる作業などについては使用者が黙示的に労働者に指示をしているものとみなされます。

労働時間に該当するか否かの判断については労働者が使用者の指揮命令下にあるかが基本的な指針となります。

場面ごとの労働時間の判断

厚生労働省が示す基本的な見解

場面ごとの労働時間の判断

厚生労働省は令和8年6月に公表したリーフレットにおいて場面ごとの労働時間の考え方を示していますので、その内容について紹介します。

研修・教育訓練について

研修・教育訓練について、業務として義務付けられていない自由参加のものは労働時間に含まれません。

研修・教育訓練に参加しなかった場合に減給等のペナルティがあるなどして事実上参加が強制されている場合は業務として義務付けられているとの判断となります。

・労働時間に該当する例
休日参加及び後日レポート提出の指示がある会社指定の社外研修に参加した時間
業務内容を見学することが当該業務に従事することの条件となっている業務見学時間

・労働時間に該当しない例
弁当の提供はあるものの自由参加かつ不参加についてペナルティの課されない終業後の勉強会に参加した時間
労働者が自身で申し出て1人または少人数で勤務時間外に行う訓練の時間
業務上必要はないが会社が講師を呼んで開催する任意参加の語学講習に参加する時間

仮眠・待機時間について

仮眠室における仮眠時間について、その間、外部からかかってきた電話等に対応する必要がなく、他の業務も行わないと言うような場合、仮眠時間は労働時間に含まれません。

・労働時間に該当しない例
週1回夜間の緊急対応当番を決めているが、当番となった労働者が社用の携帯電話を持って帰った以降、自由に過ごしてよいとされている場合の当番日の待機時間

労働時間の前後の対応について

服を着替える時間について、制服や作業着の着用が任意である場合、制服や作業着を自宅から着て来てもよいとされている場合、服を着替える時間は労働時間に含まれません。

通勤時道が混むのを避ける目的や会社の駐車場のスペースを確保する等の目的で労働者が自発的に始業時間よりも早く会社に到着し、始業時間までの間、業務に従事することなく、使用者から業務の指示を受けていないという場合、始業時間前の時間は労働時間に含まれません(労働時間判断との関係では始業時間前に到着した労働者については執務室以外の休憩・飲食スペースで過ごしてもらうということがあり得ます)。

直行直帰・出張に伴う移動時間について

直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動時間中に使用者から業務指示を受けず、実際に業務に従事することなく、移動手段に関して使用者から指示を受けず、移動時間を自由に利用することが保障されている場合、移動時間は労働時間に含まれません。

・労働時間に該当しない例
取引先の敷地内に存在する設備の点検のため、自宅から取引先に直行する場合の移動時間
遠方出張のため、業務日の前日の休日に自宅から直接出張先に移動して前泊する場合の休日の移動時間

検討

検討

繰り返しになりますが、ある時間が労働時間に該当するか否かの判断においては、そこに使用者の明示的・黙示的な指示が含まれるか否かが基本的な考え方となります。

ある時間が労働時間に含まれることの立証は基本的には労働者側で行うべきものですが、使用者の側においても当該時間について使用者の管理が及んでおらず、労働者が業務以外のことを自由にすることができたということを積極的に主張していく必要があります。

ある事象について行う労働者もいれば行わない労働者もいるという場合、業務上必ずしも必要でないという事象であれば、当該事象を行う時間に関して労働者から業務上の指示があったという主張がされることを防ぐため、全社的に当該事象は行わないという方向で運用を変更するということもあり得ます。

まとめ

まとめ

今回は、厚生労働省が示す基本的な見解の紹介を交え労働時間に該当するか否かの判断について解説をしてきました。

厚生労働省が提示した場面以外で労働時間に該当するか否かが争いになることは当然ありますが、厚生労働省が公にしている資料であるということを踏まえ労働時間に該当するか否かの判断の一つの基準としていただければ幸いです。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 吉田 竜二

労働問題

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成26年の弁護士登録後、労使双方の立場から多数の労働紛争に対応。
協議、団体交渉、労働審判、訴訟のいずれにおいても豊富な実務経験を有し、事案の性質に応じて依頼者に最適・最善の解決方法を提案、その実現に注力する。