
2024年11月1日からフリーランス法が施行されています。この法律は、本法上のフリーランス、またはフリーランスと取引のある全ての事業者に関連する法律ですので、その理解は必須となります。この記事では、対象となる取引について解説します。
フリーランス法が施行されています

2024年(令和6年)11月1日からフリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されています。
企業の皆様のなかには、「これまで取適法(旧下請法)は意識してきたけれど、フリーランス法施行で何か変わっただろうか」とか、「自社の取引はフリーランス法の適用を受けるのだろうか」といったご不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。
前のコラム(下記)でも紹介しましたが、フリーランス法は、本法上のフリーランスと取引のある全ての事業者に適用がある法律です。
そのため、業種を問わず、多くの事業者の方に関係してくる法律だと思われます。
そこで、今回は、「フリーランス法が適用される3つの委託取引とは?」という点について、解説していきます。
こちらもご覧ください
フリーランス法 3つの委託取引

フリーランス法では、業務の委託を受けるフリーランスを「特定受託事業者」、フリーランスに業務を委託する側を「業務委託事業者」または「特定業務委託事業者」と呼びます。
ここからも分かるように、フリーランス法は、事業者とフリーランスの間に「業務委託」、すなわち取引がある場合に適用があります。
ただし、事業者とフリーランスの間の全ての取引に適用があるわけではありません。
一般に、事業者間の結びつきには、様々な種類の取引が存在します。それは売買契約の場合もありますし、委任契約・準委任契約の場合も、請負契約の場合もあります。内容も、物品の売り買いから、何かの作成、行為の代行、調査、演奏の依頼などあらゆるものが考えられます。
しかし、フリーランス法の場合は、その取引のなかから特に次で解説する3つの類型を取り出して、適用の対象としています(この理由は様々あると思われますが、「契約の自由の原則」とフリーランスの保護のバランスをとった結果だと思っています。)。
それが、⑴物品の製造・加工委託、⑵情報成果物の作成委託、⑶役務の提供委託の3つです。
以下、詳しく解説します。
⑴物品の製造・加工委託
「物品の製造・加工委託」とは、事業者が、その事業のために、フリーランスに対して、物品の製造や加工を委託することです。
ここでいう「物品」とは、動産のことをいい、不動産(家など)は含まれません。
不動産ではない、物・モノ一般を指すとイメージ頂けば良いでしょうか。
また、「製造」とは、原材料である物品に一定の工作を加えて(要するに材料に手を加えて)新たな物品を作り出すことをいうとされています。
それから、「加工」とは、原材料である物品に一定の工作を加えて(手を加えて)、その物品に付加価値をつけることをいうとされています。
両者はグラデーションの関係にあるものと思いますので、これらを区別する実益は乏しく、要するに物品に何らか手を加えるということになります。
そして、フリーランス法上の物品の製造・加工の「委託」というのは、そういった物に手を加える作業について、「仕様や内容等を指定して」依頼することを指します。
そのため、フリーランス側が仕様を決めて製造している既製品を、事業者がフリーランスから購入している、という状況では、事業者側が仕様や内容等を指定して製造や加工を依頼しているわけではないので、「物品の製造・加工委託」に当たらないということになります。
逆に言えば、例えば名入れ(社名入れ)のような細かい仕様の指定だったとしても、一部でも指定し加工を指示しているのであれば、これは「物品の製造・加工委託」に該当し得ることになります。
具体例としては、以下のような取引が挙げられます。
・自社で企画したオリジナル商品の製造を、外部の個人事業主に委託する
・製品の部品加工や仕上げ作業を、個人で請け負う加工職人に委託する
・自社発行の出版物やパンフレットの印刷・製本作業を委託する
ここで、取適法(旧下請法)との対比ですが、取適法の「製造委託(加工を含む)」の場合は、「業として行う販売の目的物たる物品等の製造」を委託すること、などと委託側に要件が課されています。
しかし、フリーランス法の場合は「その事業のため」に委託すること、とされており、制限が少なくより広い範囲が適用対象とされています。
フリーランス法の「その事業のため」に当たらない場合とは、例えば純粋に無償の行為のために行う委託であるとか、事業とは全く関係がない一消費者として委託を行った場合(※フリーランス法では、委託側が企業でなく個人であることがあり得ます。)などが当てはまるとされていますので、違いに注意して頂ければと思います。
⑵情報成果物の作成委託

「情報成果物の作成委託」の「情報成果物」とは、あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、プログラム(ソフトウェアやシステムなど)、映像、デザイン、文章などのことを指します。
そういった「情報成果物」作成を、事業者が、その事業のために、フリーランスに対して委託すると、この「情報成果物の作成委託」に該当します。
具体例としては、以下のような取引が挙げられます。
・システム開発会社が、Webアプリケーションのプログラム作成をフリーランスのエンジニアに委託する
・自社のWebサイト制作やグラフィックデザインをフリーランスのデザイナーに委託する
・記事、広告コピー、マニュアルなどの執筆をフリーランスのライターに委託する
・動画コンテンツの編集や効果音の作成を個人クリエイターに委託する
ここでも取適法(旧下請法)と比較しますが、取適法における「情報成果物作成委託」は、「他者に提供するために情報成果物を作成する場合」や「自社利用の情報成果物を業として作成している場合」などに、その作成を中小受託事業者へ発注するケースに適用が限定されていました。
しかし、フリーランス法では「その事業のため」という限定しかありませんので、例えば単に自社で内部的に利用するだけの資料の作成をフリーランスに頼む場合であっても、幅広く適用の対象となります。
⑶役務の提供委託

「役務の提供委託」における「役務」とは、これも耳慣れない言葉かもしれませんが、平たく言うと「サービス全般」を指す言葉です。
したがって、「役務の提供委託」とは、各種サービスの提供(労働や作業の実施)をフリーランスに委託することを指します。
具体例としては、以下のような取引が該当します。
・自社の社内研修やセミナーの講師業務を外部の専門家に委託する
・自社オフィスの清掃や設備メンテナンスを個人事業主に委託する
・コンサルティング、法務・税務等の個別調査業務をフリーランスに委託する
・イベントの運営スタッフや撮影業務を個人に委託する
この「役務の提供委託」については、取適法(旧下請法)と比べたときの大きな注意点が2つあります。
①「建設工事」が含まれるか否か
まずひとつめの違いは、「建設工事」の取り扱いです。
取適法(旧下請法)においては、建設業法上の「建設工事」は適用対象外とされていました。
そうというのも、建設工事に当たる取引については、建設業法という取適法(旧下請法)によく似た(しかし建設業に特化している)別の法律によって、直接的に下請保護や取引の適正化が図られていたからです。
一方で、フリーランス法には、取適法のような建設工事を除外する規定が存在しません。フリーランス法には業種や業界の限定はないのです。
そのため、一人親方や個人の職人さんなどに大工工事、電気工事、内装工事などの「建設工事」をお願いしている場合、(その他の要件も満たせば)フリーランス法が適用されることになります。
②「自ら用いる役務の提供の委託」が含まれるか否か
ふたつめの違いが、「自ら用いる役務」の扱いです。
「自ら用いる役務」とは、言葉が難しいですが、要するに、自分(=委託者)が利用者・消費者となるサービスという意味です。
取適法(旧下請法)における役務提供委託は、「自分(=委託者)が顧客に提供するサービスを、外部(=受託者)に再委託する場合」に限られていました。
つまり、自社が社内で利用・消費するためのサービスを外部に依頼するケースは、取適法の対象外となっていました。
これに対して、フリーランス法では「その事業のため」との限定しかありませんので、「自ら用いる役務」の提供をフリーランスにも委託した場合も、広く対象に含まれます。
そのため、上記のような具体例についても、この類型に該当するというわけです。
ちなみに、取適法の対象には「修理委託」という類型がありますが、フリーランス法では物品の修理についてはこの「役務提供委託」に含まれるとされています。
適用があるという意味では異なりませんが、分類が違うというところで、これも覚えておいて頂ければと思います。
以上のように、対象となる取引の内容は、取適法とよく似ていますが、違うところもあり、検討の際に一層の注意が必要となります。
まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は、フリーランス法の対象となる「取引」について解説をいたしました。
フリーランス法は、取適法(旧下請法)とよく似ている部分も多いですが、今回見てきたように、対象となる取引についてはより広く規定されています。取適法では対象外だった取引にも注意を払う必要がありますので、ぜひ皆様が当事者となっている取引がどの類型に当てはまるか(あるいは当てはまらないか)、改めて確認してみてください。
フリーランス法は2024年(令和6年)11月に施行された新しい法律で、中にはまだよく知らないという事業者も存在するものと思います。
皆様におかれましては自身の事業を守るために、ぜひフリーランス法の知識を頭の片隅に入れておいて頂ければと思います。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書レビューも特定の弁護士が行います。このような専門性により、企業法務において大きな強みを持っています。企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。
※ 本コラムの内容に関するご質問は、顧問会社様、アネット・Sネット・Jネット・保険ネット・Dネット・介護ネットの各会員様のみ受け付けております。
この記事を書いた弁護士:弁護士 木村綾菜
取適法(下請法)
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和元年登録。取適法(旧下請法)、労働問題(解雇・退職時のトラブル、残業代請求等のトラブル)、契約書のリーガルチェック等の企業法務案件を多数取り扱う。取適法については、弁護士コラムを多数執筆するほか、団体・企業主催の講演実績も有する。




