
2020年4月以降、順次、同一労働同一賃金に係る法整備が進みました。
厚生労働省は同一労働同一賃金の指針としていわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」を作成しましたが、作成以降の裁判例の積み重ね等を踏まえ、2025年11月に同ガイドラインの見直し案を公示するに至りました。
今回は、「同一労働同一賃金ガイドライン」の見直し案の内容について解説をしていきます。
同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金は、同一企業や同一団体における正規雇用労働者(無期雇用のフルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用の労働者、パートタイムの労働者、派遣の労働者)との間における不合理な待遇の格差を解消することを目的とする考え方です。
同一企業等における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇格差がなくなれば、労働者はどのような雇用形態を選択した場合でも納得感のある処遇を受けられるということになり、労働者の多様な働き方を推進することに繋がるとされています。
同一労働同一賃金ガイドラインとは?

同一労働同一賃金ガイドライン(正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」です)は、同一労働同一賃金の在り方をどのように考えるかという点について厚生労働省が作成したものであり、同一企業・団体内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇格差が存在する場合、どのような待遇格差が不合理といえ、また、どのような待遇格差が不合理とまではいえないのかに関する原則的な考え方と具体例を示したものです。
ガイドラインが見直しになった経過

同一労働同一賃金に係る法整備がなされてから数年が経過したことで同一労働同一賃金を企業内でどのように運用し、その中でどのような問題点が生じるかについて一定の蓄積がなされ、また、同一労働同一賃金に関する労使間の紛争に関して注目される最高裁判決が相次ぎました。
従前の同一労働同一賃金ガイドラインは抽象的な内容を多く含み、企業側で明確な判断ができなかった部分について最高裁の判断がなされたことでガイドラインの見直しの必要が生じました。
同一労働同一賃金ガイドライン見直し案の内容

今回、厚生労働省から示された同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案では、従前のガイドラインでは十分に触れられていなかった各種の待遇面について具体的な判断基準が盛り込まれました。
新たに記載された待遇は、退職手当、家族手当、住宅手当、無事故手当、夏季冬季休暇、褒賞であり、以下で各待遇に係る記載内容について確認をしていきます。
退職手当について
これはメトロコマース事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
退職手当は労働の対価の後払い的性格や在職中の功労報償などの複数の要素が含まれるものですが、非正規雇用労働者が同様の状況に該当する場合、正規雇用労働者との間で差異に応じた均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつ、労使交渉を経て同様の状況に該当しない非正規雇用労働者に比して基本給を高く支給している等の事情がない場合、当該非正規雇用労働者に対する退職手当の相違は不合理と判断される可能性があります。
家族手当について
これは日本郵便(大阪)事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
家族手当は労働者の家族構成等に応じて手当を支給するものですが、労働契約の更新を繰り返しているなど継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者については、正規雇用労働者と同一の家族手当を支給する必要があります。
なお、配偶者手当については、女性の短時間労働者の就業調整の要因となっている側面があるため、労使間の協議により働き方に影響を及ぼさない内容となるよう見直しが望まれるとされました。
住宅手当について

これはハマキョウレックス事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
住宅手当であって転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについては、正規雇用労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には正規雇用労働者と同一の住宅手当を支給する必要があります。
住宅手当であって転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給されるものについては、職務の内容等を考慮の上、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で不合理と認められる相違を設けることはできません。
無事故手当について
これはハマキョウレックス事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
無事故手当は事故を起こさずに勤務をした場合に支給されるものですが、正規雇用労働者と業務内容が同一の非正規雇用労働者には正規雇用労働者と同一の無事故手当を支給する必要があります。
夏季冬季休暇について
これは日本郵便(佐賀)事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
非正規雇用労働者に対しても正規雇用労働者と同一の夏季冬季休暇を付与する必要があります。
褒賞について
これはメトロコマース事件最高裁判決をもとに追記がなされました。
褒賞は企業に貢献をした労働者に対して実施されるものですが、褒賞であって一定の期間勤続した正規雇用労働者に付与するものについては正規雇用労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者に正規雇用労働者と同一の褒賞を付与する必要があります。
まとめ

今回は、「同一労働同一賃金ガイドライン」の見直し案の内容について解説をしてきました。
見直し案を踏まえ「同一労働同一賃金ガイドライン」は今後より明確化していくことが想定されます。
新たなガイドラインにおいて不合理な待遇格差と明記された部分については企業側としても適切な対応を求められることになります。
他方で、ガイドラインの見直しによっても同一労働同一賃金の運用について解釈の余地が一切なくなったというわけではないため、引き続き、現場における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇格差が合理的なものであるかどうかの判断は必要となります。
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