【交通事故】眼・耳・口の後遺障害|視力・視野・聴力・そしゃく言語障害の等級を弁護士が解説

交通事故で顔面や頭部を強打すると、骨折や脳の損傷だけでなく、眼・耳・口といった感覚器や機能に重い障害が残ることがあります。

片眼の視力を失った。ものが二重に見える。視野の一部が欠けた。片耳が聞こえなくなり、耳鳴りが続く。顎を骨折して硬いものが噛めない。舌を損傷して言葉がうまく出ない。歯が何本も折れた——。

これらはいずれも後遺障害等級が定められている障害です。しかし、重傷事案では整形外科や脳神経外科が主たる診療科になるため、眼科・耳鼻咽喉科・歯科口腔外科の所見が後遺障害診断書に反映されず、等級が取りこぼされることが少なくありません。

本記事では、眼・耳・口の後遺障害について、等級の体系と立証のポイントを、埼玉県大宮の弁護士が解説します。

眼の障害

眼の障害

視力障害

視力障害は、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズで矯正した視力)を基準に、両眼と片眼のそれぞれについて等級が定められています。

両眼が失明したものは第一級一号、一眼が失明し他眼の視力が〇・〇二以下になったものは第二級一号、両眼の視力が〇・〇二以下になったものは第二級二号です。

一眼が失明し他眼の視力が〇・〇六以下になったものは第三級一号、両眼の視力が〇・〇六以下になったものは第四級一号、一眼が失明し他眼の視力が〇・一以下になったものは第五級一号、両眼の視力が〇・一以下になったものは第六級一号です。

一眼が失明し他眼の視力が〇・六以下になったものは第七級一号、一眼が失明し又は一眼の視力が〇・〇二以下になったものは第八級一号、両眼の視力が〇・六以下になったものは第九級一号、一眼の視力が〇・〇六以下になったものは第九級二号、一眼の視力が〇・一以下になったものは第一〇級一号、一眼の視力が〇・六以下になったものは第一三級一号です。

視力の測定は万国式試視力表によります。眼球そのものの損傷だけでなく、視神経の損傷や後頭葉の損傷によっても視力・視野の障害が生じますので、眼科と脳神経外科の双方の所見が必要になることがあります。

視野障害

両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すものは第九級三号、一眼に残すものは第一三級三号です。

視野の障害は、ゴールドマン型視野計などによる視野検査を受けなければ把握できません。「見えにくい」という自覚症状だけでは等級になりませんので、必ず検査を受けてください。

調節機能障害・運動障害・複視

両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すものは第一一級一号、一眼に残すものは第一二級一号です。

複視については、正面を見た場合に複視の症状を残すものが第一〇級二号、正面以外を見た場合に複視の症状を残すものが第一三級二号です。

複視は、眼窩底骨折や外眼筋の損傷、脳損傷によって生じます。ヘスコロメーター検査などで客観的に確認できますので、「ものが二重に見える」という訴えがあれば、必ず眼科で検査を受けてください。

まぶたの障害

両眼のまぶたに著しい欠損を残すものは第九級四号、一眼のまぶたに著しい欠損を残すものは第一一級三号、両眼のまぶたに著しい運動障害を残すものは第一一級二号、一眼のまぶたに著しい運動障害を残すものは第一二級二号です。

両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すものは第一三級四号、一眼については第一四級一号です。

耳の障害

耳の障害

聴力障害

聴力障害は、純音による聴力レベルと語音による聴力検査結果に基づいて判定されます。両耳と片耳のそれぞれについて等級が定められています。

両耳の聴力を全く失ったものは第四級三号、両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったものは第六級三号、一耳の聴力を全く失い他耳の聴力が四〇センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものは第六級四号です。

両耳の聴力が四〇センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものは第七級二号、一耳の聴力を全く失い他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものは第七級三号です。

両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものは第九級七号、一耳の聴力を全く失ったものは第九級九号、両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったものは第一〇級五号、一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったものは第一〇級六号です。

さらに、両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったものは第一一級五号、一耳の聴力が四〇センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったものは第一一級六号、一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったものは第一四級三号です。

耳鳴り・耳介の欠損

耳鳴りについては、ピッチマッチ検査・ラウドネスバランス検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるものが第一二級相当、難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるものが第一四級相当として扱われます。

また、一耳の耳殻の大部分を欠損したものは第一二級四号です。耳介の欠損は、聴力障害とは別に外貌醜状としても評価される余地があります。

平衡機能障害

内耳の損傷や脳損傷により、めまい・平衡機能障害が残ることがあります。これは「神経系統の機能又は精神の障害」として、第三級、第五級、第七級、第九級、第一二級、第一四級に振り分けられます。

重心動揺検査、カロリックテスト(温度刺激検査)、眼振検査などの結果が判断材料になりますので、耳鼻咽喉科で検査を受けておく必要があります。

口の障害

口の障害

そしゃく機能・言語機能の障害

そしゃく及び言語の機能を廃したものは第一級二号、そしゃく又は言語の機能を廃したものは第三級二号です。

そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すものは第四級二号、そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すものは第六級二号、そしゃく及び言語の機能に障害を残すものは第九級六号、そしゃく又は言語の機能に障害を残すものは第一〇級三号です。

そしゃく機能の判定は、流動食以外は摂取できないか、粥食またはこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないか、ご飯や煮魚・ハム等は摂取できるが、たくあんや硬い煎餅等の固形食物の中に咀嚼が困難なものがあるか、といった基準によります。

言語機能については、口唇音・歯舌音・口蓋音・喉頭音の四種の語音のうちいくつが発音不能かによって判定されます。

歯牙障害

一四歯以上に対し歯科補綴を加えたものは第一〇級四号、一〇歯以上は第一一級四号、七歯以上は第一二級三号、五歯以上は第一三級五号、三歯以上は第一四級二号です。

注意が必要なのは、ここでいう「歯科補綴」は、事故によって喪失または著しく欠損した歯に対する補綴を指すという点です。また、ブリッジを装着する際に支台として削った健全歯も、補綴を加えた歯として数えられる場合があります。

歯牙障害は逸失利益が争われやすい項目ですが、裁判例には、脊柱障害(第一一級)と歯牙障害(第一一級、併合第一〇級)の会社員について、歯牙障害について逸失利益を認められないことを考慮して、傷害分二一五万円、後遺障害分七〇〇万円を認めたものがあります。逸失利益が否定される代わりに、慰謝料で考慮されるのが実務の傾向です。

また、義歯やブリッジには耐用年数がありますので、平均余命までの交換回数を前提とした将来の交換費用を請求できます。赤い本にも義歯・義眼・義手・義足等の交換費用の計算例が掲載されています。

嗅覚・味覚の障害

鼻を欠損しその機能に著しい障害を残すものは第九級五号です。嗅覚の脱失・減退、味覚の脱失・減退は、程度に応じて第一二級相当、第一四級相当として評価されます。

嗅覚についてはT&Tオルファクトメトリー、味覚については濾紙ディスク法による検査が行われます。

裁判例には、脳挫傷痕(第一二級一三号)、嗅覚減退(第一四級相当)、味覚減退(第一四級相当、併合第一二級)の家庭科教育を専攻していた大学生(女・事故時二〇歳)について、味覚障害・嗅覚障害が教員の夢をあきらめさせ、食事や料理の愉しみを喪失させたことを考慮し、逸失利益を二三歳から三一歳まで一四パーセント、以降六七歳まで五パーセントの労働能力喪失率で認めたうえ、傷害分一八〇万円のほか後遺障害分四〇〇万円を認めたものがあります。

等級を取りこぼさないために

等級を取りこぼさないために

慰謝料の目安と提示額との差

赤い本の基準では、後遺障害慰謝料の目安は第一級二八〇〇万円、第三級一九九〇万円、第四級一六七〇万円、第六級一一八〇万円、第七級一〇〇〇万円、第九級六九〇万円、第一〇級五五〇万円、第一二級二九〇万円、第一四級一一〇万円です。

これに対し、保険会社が当初提示してくる金額は自賠責の支払基準や社内基準によるもので、第一〇級であれば二〇〇万円前後、第一二級であれば九〇万円台にとどまることが一般的です。弁護士が介入して裁判基準で交渉するだけで、二倍から三倍になる事案は珍しくありません。

診療科ごとに診断書を取得する

眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科。それぞれの科から後遺障害に関する所見を取得し、整形外科や脳神経外科の診断書と併せて提出します。

一通の後遺障害診断書に全部を書いてもらうことはできません。科ごとに作成を依頼する必要があります。

併合で等級が繰り上がる

感覚器の障害は、単独では第一二級や第一四級にとどまることが多い一方、他の障害と併合すれば等級が繰り上がります。第一三級以上が二つ以上あれば一級繰上げ、第八級以上が二つ以上あれば二級繰上げ、第五級以上が二つ以上あれば三級繰上げです。

裁判例には、高次脳機能障害、複視および右眼の視野欠損等の眼の障害、そしゃく障害、骨盤骨変形、外貌醜状、左下肢の瘢痕により併合第三級とされた主婦(女・症状固定時三二歳)について、二二〇〇万円の後遺障害慰謝料を認めたものがあります。平成一一年に発生した事故であり、当時の等級表による認定です。

症状固定の時期

眼や耳の機能は、受傷直後から数か月かけて変動します。視力や聴力が回復傾向にある段階で症状固定とすると、実際より軽い等級になります。逆に、緑内障や網膜剥離のように遅れて現れる障害もあります。

主治医の見通しを確認したうえで時期を判断すべきであり、保険会社の打切りの都合で決めるものではありません。

当事務所のサポート内容

当事務所のサポート内容

①受診すべき診療科の洗い出し

診療記録と事故態様から、眼科・耳鼻咽喉科・歯科口腔外科のうちどの科の所見が必要かを整理し、受診をご案内します。

②必要な検査の依頼

視野検査、ヘスコロメーター検査、純音・語音聴力検査、ピッチマッチ・ラウドネスバランス検査、重心動揺検査、T&Tオルファクトメトリーなど、認定に必要な検査を主治医に依頼します。

③被害者請求と併合等級の主張

科ごとの診断書を揃え、弁護士名義の意見書を添えて被害者請求を行い、併合等級を主張します。

④逸失利益・将来費用の請求

職業上の支障を立証して逸失利益を主張し、義歯・義眼の将来の交換費用も併せて請求します。折り合えない場合には訴訟を提起します。

おわりに

おわりに

感覚器の障害は、生活の質を根本から変えてしまいます。片耳が聞こえなければ会議で誰が話しているか分からず、複視が残れば車の運転ができず、硬いものが噛めなければ食事の楽しみが失われます。

それでも、賠償の場では「命に別状はなかった」事案として扱われがちです。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の所見が診断書に入っていなければ、等級はつきません。

後遺障害診断書を書いてもらう前に、一度ご相談ください。弁護士費用特約をご利用いただける場合はご自己負担なく、特約がない場合も原則として着手金無料で対応しております。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 遠藤吏恭

交通事故

弁護士登録後、交通事故による後遺障害・慰謝料増額・保険会社との示談交渉など多数の事案を担当。不当要求防止責任者講習の講師として培った毅然とした交渉力を武器に、保険会社との粘り強い折衝を得意とする。交通事故問題について、テレビ朝日「グッド!モーニング」出演歴があり、また中央大学法科大学院・埼玉工業大学講師も務める。