「肉体関係はないのに」慰謝料を請求されたら 不貞行為の立証と、肉体関係がなくても責任を問われる場合――弁護士が解説
【この記事のポイント】
食事に行った、二人で出かけた、親しげなLINEを送り合っていた――それだけで「不倫をした」として慰謝料を請求されることがあります。不倫慰謝料の中心にあるのは肉体関係(性的関係)であり、それを証拠によって立証しなければならないのは、請求する側です。一方で、肉体関係がなくても、婚姻生活の平穏を害するほど親密な交際であれば責任を問われる場合もあります。本記事では、何が肉体関係の証拠と評価されやすいのか、請求された側がやってはいけない対応は何かを、弁護士が解説します。

1. 「一線は越えていない」のに、請求が届いた

1. 「一線は越えていない」のに、請求が届いた

職場の同僚や趣味の仲間と、二人で食事に行ったり、個人的なメッセージをやり取りしたりしていた。好意がなかったとは言わないが、肉体関係はない。それなのに、相手の配偶者から「不倫をしたのだから慰謝料を払え」と請求された――。このようなご相談は少なくありません。

肉体関係がないのであれば、そのことをはっきり伝えれば済むと考えがちです。しかし実際には、相手方は、手元にある写真やメッセージから肉体関係があったと推認できると主張してきます。どのような証拠がどう評価されるのかを知り、冷静に対応することが大切です。

2. 不倫慰謝料の中心は「肉体関係」

2. 不倫慰謝料の中心は「肉体関係」

最高裁判所は、配偶者のある者と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者に対して不法行為責任を負うとし(最高裁昭和54年3月30日判決)、その理由について、肉体関係を持つことが、他方の配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害するからだと説明しています(最高裁平成8年3月26日判決)。

このように、不倫慰謝料が認められる典型は、既婚者と肉体関係(性的関係)を持った場合です。単に一緒に食事をした、好意を伝え合ったというだけで、直ちに高額な慰謝料を支払う責任が生じるわけではありません。

3. 立証しなければならないのは、請求する側

3. 立証しなければならないのは、請求する側

慰謝料を請求する裁判では、肉体関係があったことを証拠によって立証する責任は、請求する側(相手方配偶者)にあります。あなたが「肉体関係がなかったこと」を証明しなければならないわけではありません。

もっとも、肉体関係そのものを直接写した証拠が提出されることはまれです。そのため裁判では、さまざまな間接的な事実から、肉体関係があったと推認できるかどうかが判断されます。どのような事実が、どの程度の推認力を持つのかを知っておくことが重要です。

相手方が提出する証拠の例肉体関係の推認につながりやすいか(一般的な傾向)
ラブホテルへの出入りの写真・映像推認されやすい。「中で話をしていただけ」という説明は通りにくい
一方の自宅での長時間の滞在・宿泊状況によっては推認されやすい
二人きりでの旅行・同室での宿泊状況によっては推認されやすい
肉体関係を前提としたメッセージのやり取り推認されやすい
二人での食事・飲酒・外出それだけでは通常足りない
好意を伝えるメッセージ、親しげなやり取りそれだけでは足りないことが多い
手をつなぐ、キスをする評価が分かれる。肉体関係の推認にはつながらなくても、別の責任が問題になる余地がある

探偵の調査報告書が提出された場合には、出入りの日時、滞在時間、回数などが記載されています。滞在が短時間であった、特定の日だけの出来事であった、ほかに合理的な理由があったといった事情があれば、推認を争う材料になり得ます。報告書の記載を一つひとつ丁寧に検討することが大切です。

4. 肉体関係がなくても責任を問われる場合

4. 肉体関係がなくても責任を問われる場合

ここで注意しておきたいのは、肉体関係が認められなければ一切責任を負わない、とは限らないことです。前述のとおり、不倫が不法行為になるのは、婚姻共同生活の平和を害するからです。そのため、肉体関係には至っていなくても、その平穏を害する程度に親密な交際をしていた場合には、不法行為として慰謝料の支払いを命じられることがあります。

たとえば、配偶者がいることを知りながら、頻繁に二人きりで会い、恋人同士のようなやり取りを続け、相手方の夫婦関係に深刻な影響を与えたような場合です。ただし、こうした場合に認められる慰謝料は、肉体関係がある場合と比べて低額にとどまる傾向があります。肉体関係の有無は、責任が生じるかどうかだけでなく、金額にも大きく影響するのです。

【ポイント】争うべきは「肉体関係の有無」と「金額」の両方
肉体関係がないのであれば、まずその点を争います。そのうえで、仮に何らかの責任が問題になるとしても、肉体関係がない交際についての慰謝料は低額にとどまるのが通常であり、請求額が不倫を前提とした高額なものであれば、大幅な減額を求める余地があります。

◆ 性交渉に至っていない場合でも

なお、性交渉そのものには至っていなくても、それに類する性的な行為があった場合には、肉体関係と同じように評価されることがあります。「最後まではしていない」という事情だけで、責任の有無や金額が大きく変わるとは限らない点には注意が必要です。

◆ メッセージは「文脈」で評価される

相手方が提出するLINEなどのメッセージは、一部だけを切り取ると、肉体関係を思わせるように読めることがあります。しかし、裁判所は、やり取りの前後の流れや、二人の関係性の全体を踏まえて評価します。たとえば「昨日はありがとう、楽しかった」という一文も、食事の後のお礼なのか、宿泊を伴う外出の後なのかによって意味が変わります。相手方が一部だけを示している場合には、前後のやり取りを含めて示すことで、印象が大きく変わることがあります。そのためにも、やり取りは削除せずに残しておくことが重要です。

5. 請求された側が、やってはいけないこと

5. 請求された側が、やってはいけないこと

◆ ① 不用意に「認める」言葉を送らない

相手方配偶者や交際相手から、「正直に話してくれれば許す」「関係があったことだけ認めてほしい」と言われることがあります。その場を収めたい一心で、「申し訳ありませんでした」「一線を越えてしまいました」などと返信すると、それ自体が肉体関係を認めた証拠として扱われかねません。謝罪の言葉であっても、何を認める内容なのかには細心の注意が必要です。

◆ ② 証拠を消さない

不安から、交際相手とのやり取りを削除してしまう方がいます。しかし、そのやり取りの中には、肉体関係がなかったことをうかがわせる文脈――たとえば、相手からの誘いを断っていた記録や、友人としての関係を示す内容――が含まれていることもあります。削除すると、あなたに有利な証拠まで失われてしまいます。

◆ ③ 一人で相手方に説明しようとしない

誤解を解きたいという気持ちから、相手方配偶者に直接会って説明しようとするのは危険です。感情的になった相手と話し合うことで、かえって事態が悪化したり、その場での言葉尻をとらえられたりするおそれがあります。説明は、弁護士を通じて、冷静に行うことが望ましいといえます。

6. 交際相手の言葉にも注意

6. 交際相手の言葉にも注意

肉体関係の有無が争点になる場面では、交際相手(既婚者側)の説明が大きな意味を持ちます。交際相手が、自分の配偶者に責められて、事実と異なる説明をしてしまうこともあります。「あなたから誘われた」「関係があった」と交際相手が認めた場合、それが相手方の主張の根拠として使われることがあります。

交際相手の説明と、あなた自身の認識が食い違う場合には、当時のやり取りや行動の記録を突き合わせ、客観的な事実に基づいて反論することが大切です。交際相手と口裏を合わせようとすることは、発覚したときにかえって信用を失うことになりかねず、避けるべきです。

なお、肉体関係の有無が争点となる事案では、訴訟で白黒をつけるまで争うか、一定の金額で早期に解決するかという判断を迫られることもあります。訴訟が長引けば、時間や費用の負担に加え、精神的な負担も大きくなります。肉体関係は否定しつつも、交際によって相手方に不快な思いをさせたことへの解決金として、低額で合意するという選択肢もあり得ます。どちらが良いかは、相手方の証拠の強さや、あなたの状況によって異なりますので、見通しを踏まえて判断することが大切です。

7. まとめ――「疑わしい」だけで高額な責任を負う必要はない

7. まとめ――「疑わしい」だけで高額な責任を負う必要はない

不倫慰謝料は、肉体関係があったことを請求する側が立証しなければなりません。食事や外出、親しげなメッセージだけでは、通常、肉体関係の立証として十分とはいえません。一方で、肉体関係がなくても、婚姻生活の平穏を害するほど親密な交際であれば、低額ながら責任を問われる場合もあります。

請求を受けたときに大切なのは、不用意に認める言葉を送らないこと、証拠を消さないこと、そして相手方の証拠が何を示しているのかを冷静に見極めることです。「肉体関係はないのに」と納得できない請求を受けたときは、一人で対応せず、まずは弁護士にご相談ください。

グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ
私たちは、開所以来35年以上、地域の皆様の法律問題に一貫して寄り添って参りました。慰謝料を請求されてお困りの方が、冷静に、そして適切に対応できるよう、法的な専門知識と経験を活かして全面的にサポートいたします。あなたの不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

【出典・参照条文】

・最高裁判所昭和54年3月30日第二小法廷判決(民集33巻2号303頁)
・最高裁判所平成8年3月26日第三小法廷判決(民集50巻4号993頁)
・民法第709条・第710条(不法行為)
・(注)本記事は一般的な解説であり、個別の事案における判断は証拠の内容等により異なります。実際の対応にあたっては専門家にご相談ください。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 時田 剛志

不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成27年12月登録後、不貞行為を原因とする慰謝料請求案件を多数担当。請求する側・される側のいずれの立場からも対応が可能で、証拠収集の方針から示談交渉・調停・訴訟まで一貫してサポート。力強い交渉と柔軟な解決策を武器にしており、離婚問題とも連携した一体的な解決を得意とし、依頼者の精神的負担の軽減にも配慮した対応を心がけている。