不貞相手にも配偶者がいる場合の不貞慰謝料に関する問題点について弁護士が解説します

配偶者の不貞行為(不倫)が発覚した際、「相手にしっかりと慰謝料を請求して責任をとらせたい」と考えるのは当然のことです。しかし、調査を進めたり相手と交渉したりする中で、「不貞相手にも配偶者がいる」という事実(いわゆる「W不倫」)が判明するケースは非常に多く存在します。

W不倫の場合、単なる「既婚者×独身者」の不貞トラブルとは異なり、2つの家庭と4人の当事者(自分、配偶者、不貞相手、不貞相手の配偶者)が複雑に絡み合うことになります。

そのため、安易に不貞相手へ高額な慰謝料を請求した結果、「相手の配偶者から自分の配偶者へも同額の請求がなされ、世帯全体で見るとお金がまったく手元に残らない、あるいはマイナスになる」という事態や、後述する「求償権」の問題によって思わぬ落とし穴にハマってしまう危険性があります。

本コラムでは、W不倫(不貞相手にも配偶者がいるケース)における慰謝料請求の仕組み、求償権の注意点、そしてW不倫特有の解決手法である「4者間和解」について、弁護士が分かりやすく解説します。

 W不倫(ダブル不倫)における不貞慰謝料請求の構造

 W不倫(ダブル不倫)における不貞慰謝料請求の構造

まずは、W不倫において「誰が誰に対して、どのような権利を持っているのか」という法的構造を整理しておきましょう。

不貞行為は、法的には民法709条が定める「不法行為」にあたります。配偶者のいる者が第三者と肉体関係を持つことは、他方配偶者の婚姻生活の平和の維持という法的利益を侵害する行為だからです。

W不倫の場合、以下の2つの不法行為が同時に発生していることになります。

  1. 「自分の配偶者」と「不貞相手」による、あなたに対する不法行為 (あなたが受けた精神的苦痛に対する慰謝料請求権が発生)
  2. 「自分の配偶者」と「不貞相手」による、「不貞相手の配偶者」に対する不法行為 (不貞相手の配偶者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料請求権が発生)

つまり、被害者である配偶者が2人存在することになります。

ここに大きな注意点があります。あなたが不貞相手に対して「不倫の慰謝料として200万円を支払ってください」と請求した場合、不貞相手の配偶者もまた、あなたの配偶者に対して「私の夫(妻)と不倫したのだから200万円を支払ってください」と請求する権利を持っているということです。

必ず知っておくべき「求償権」の仕組み

必ず知っておくべき「求償権」の仕組み

W不倫の場合に限らず不貞慰謝料請求をする場合において、避けては通れない非常に重要な概念が「求償権」です。

求償権とは

不貞行為は行った当事者双方に責任があると考えられるため、不貞行為に基づく慰謝料支払義務は、不貞を行った2人(あなたの配偶者と不貞相手)が共同で負うもの(法的には不真正連帯債務と言います)です。

例えば、あなたは、不貞相手に対して200万円全額の支払いを請求するとします。

この200万円は本来、「あなたの配偶者」と「不貞相手」の2人で負担すべきものです(負担割合は事案によりますが、原則として50対50の100万円ずつなど)。

そのため、不貞相手があなたに対して200万円全額を支払った場合、不貞相手は「本来あなたの配偶者が支払うべきだった分(100万円)」を代わりに支払ったことになります。そこで、不貞相手からあなたの配偶者に対し、「私が代わりに払った100万円を返してください」と請求する権利が発生します。これが「求償権」です。

夫婦関係を継続する場合の「お金の循環」

もしあなたが、不貞を起こした配偶者と「離婚せず、やり直す(夫婦関係を継続する)」選択をした場合、求償権の存在が決定的な問題となります。

ステップ1:あなたが不貞相手から200万円の慰謝料を受け取る。(世帯の資産:+200万円)
ステップ2:不貞相手があなたの配偶者に対し、求償権を行使して100万円の返還を請求する。
ステップ3:あなたの配偶者が不貞相手に100万円を支払う。(世帯の資産:-100万円)

同一世帯の中で家計を一緒にしている場合、実質的には「200万円入ってきて、100万円が出て行った」ことになり、手元には100万円しか残らないことになってしまいます。

 W不倫で慰謝料請求をする際のリスクと注意点

 W不倫で慰謝料請求をする際のリスクと注意点

上記を踏まえ、W不倫で不貞相手に請求を起こす際には、以下のリスクを事前によく検討しておく必要があります。

離婚するかどうかによって「意味」が大きく変わる

・離婚する場合

配偶者と離婚して家計を別にするのであれば、不貞相手から受け取った慰謝料(200万円)はすべてあなたの個人の財産になります。後から不貞相手が元配偶者に求償権(100万円)を行使したとしても、それは元配偶者個人の問題であり、あなたの手元にある200万円が減るわけではありません。したがって、離婚する場合は不貞相手へ強気で請求していくメリットが大きく存在します。

・離婚しない(再構築する)場合

夫婦関係を維持する場合、せっかく不貞相手より慰謝料を支払ってもらえたとしても不貞相手による求償権の行使を誘発してしまうリスクがあります。そこで、求償権を放棄させたうえで慰謝料を請求するなどの交渉をする必要があります。

不貞相手の配偶者が不貞の事実を知っているか

不貞相手の配偶者が「自分のパートナーが不倫していること」を知っているかどうかも重要です。不貞相手の配偶者が不貞の事実を知っているのであれば、「不貞相手の配偶者」から「あなたの配偶者」に対し、慰謝料を請求される可能性があります。一方で不貞相手の配偶者がまだ不貞の事実に気づいていない場合、不貞相手の配偶者によるあなたの配偶者に対する慰謝料の請求がなされない場合もあります。

W不倫をスムーズに解決する「4者間和解(ゼロ和解)」とは

W不倫をスムーズに解決する「4者間和解(ゼロ和解)」とは

W不倫において、お互いの家庭が泥沼の請求合戦に陥るのを防ぎ、早期かつ安全にトラブルを解決するための極めて有効な手法が「4者間和解」です。

4者間和解の基本的考え方

4者間和解とは、文字どおり「あなた」「あなたの配偶者」「不貞相手」「不貞相手の配偶者」の4人全員によって一括して合意・清算を行う手続きです。

特に、双方の夫婦がともに「離婚しない」選択をした場合によく用いられるのが、いわゆる「持ち出しゼロ(ゼロ和解)」という合意形態です。

【ゼロ和解のメカニズム】

  • あなたが不貞相手に請求できる慰謝料:仮に200万円
  • 相手の配偶者があなたの配偶者に請求できる慰謝料:仮に200万円
  • 結論: お互いに金銭(慰謝料)の支払いは行わず、相殺(債務免除)とする。

4者間和解に盛り込むべき重要事項

ゼロ和解というと「お金がもらえないなら意味がないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、4者間和解の合意書には、お金以上の大きなメリットとなる以下の条項を厳格に盛り込むことができます。

  1. 不貞行為の事実を認め、謝罪すること 不貞相手およびあなたの配偶者が、不貞事実を明確に認め、書面上で謝罪します。
  2. 接触禁止条項(誓約) 「今後、私生活・仕事上を問わず、直接の面会、電話、メール、SNS等一切の連絡・接触を行わない」という約束を交わします。違反した場合には「1回につき〇〇万円の違約金」を課す条項を設定することで、再発を強力に防止します。
  3. 求償権の放棄 将来にわたって、互いに求償権を行使しないことを明確に合意します。
  4. 清算条項(口外禁止・双方の債権債務の消滅) 本件に関し、当事者間にこれ以上の貸し借りや請求権が存在しないことを確認します。また、SNSへの投稿や第三者への口外を禁止し、周囲に噂が広まるのを防ぎます。

これらの条項を合意書に盛り込むことにより、「お金の無駄な循環や裁判沙汰のリスクを回避しつつ、不貞関係を確実に断ち切らせて、二度と連絡を取らせない」という実質的な解決を勝ち取ることができるのです。

4者間和解を進める際の実務上のステップ

4者間和解を進める際の実務上のステップ

実際に4者間和解を進める場合、当事者同士が感情的になって話し合いが破談するケースが多いため、弁護士を間に挟んで慎重に進めるのが一般的です。

【4者間和解の一般的な進め方】

ステップ1:事実関係の整理と証拠の確保
ステップ2:弁護士への相談し方針を決める
ステップ3:不貞相手への通知と交渉開始
ステップ4:相手方の状況(相手夫婦の関係・認識)の確認
ステップ5:4者間和解書案の作成と条件交渉(接触禁止・求償権放棄など)
ステップ6:4者全員による署名捺印・合意成立

注意点:不貞相手が「配偶者に秘密で解決したい」と望む場合

注意点:不貞相手が「配偶者に秘密で解決したい」と望む場合

W不倫の交渉において、不貞相手が「配偶者には絶対にバレたくないので、自分個人のポケットマネーからまとまった慰謝料を支払うから、配偶者には黙っていてほしい」と打診してくることがあります。

この場合、不貞相手個人から十分な慰謝料の支払いを受けつつ、示談書の中に「不貞相手は本件慰謝料の支払いに関し、あなたの配偶者に対する求償権を永久に放棄する」「本合意の内容を第三者に漏洩しない」という明確な条項を記載して解決を図るという選択肢も考えられます。

ただし、後から不貞相手の配偶者に不倫が発覚した場合、やはりあなたの配偶者へ請求が飛んでくるリスクをゼロにすることはできません。どのスキームを選択するのが最も安全かは、個別具体的な状況に応じた高度な法的判断が必要です。

まとめ

まとめ
  • W不倫(相手にも配偶者がいる場合)では、「2つの不貞慰謝料請求権」と「求償権」が複雑に絡み合う。
  • 自身が「離婚するか・しないか」によって、不貞相手に単独で金銭請求するべきかどうかの戦略が大きく変わる。
  • 離婚しない場合は、無駄な請求合戦を避け、接触禁止や再発防止を徹底する「4者間和解(ゼロ和解)」が極めて有効な解決策となる。

W不倫のトラブルは、当事者が多いうえに複雑な法的権利が交錯するため、ご自身だけで交渉を進めようとすると、意図しない法的リスクを背負い込んだり、事態が泥沼化してしまったりすることが少なくありません。

「相手の配偶者に知られずに解決したい」「これ以上トラブルを大きくせず、相手と確実に縁を切らせたい」とお悩みの方は、お早めに不貞問題・離婚問題に精通した弁護士へご相談いただくことを強くお勧めいたします。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 椎名慧

離婚・不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和7年登録後、離婚案件を中心に多数の家事事件に対応。依頼者の心情に寄り添った丁寧なヒアリングと、迅速な紛争解決の実務に精通している。夫婦間で激しい感情の対立がある状況において、粘り強い交渉力を発揮し、円満な解決に向けた法的支援に注力。若手ならではの機動力と最新の判例知識を武器に、依頼者の最善の利益確保に邁進している。