離婚に近い時期の不貞行為について

従前から夫婦関係は良好ではなく離婚話が出たこともあるが、配偶者の不倫が発覚したことで本格的に離婚に向けて動き出したというケースがあります。

その際、配偶者との間の離婚協議と並行して、不貞相手に対して不貞慰謝料請求を行うということがあり得ますが、従前の夫婦関係の状態が不貞慰謝料請求の帰趨に影響を与えることがあります。

今回は、離婚に近い時期の不貞行為について解説をしていきます。

不貞慰謝料請求の要件

不貞慰謝料請求の要件

不貞行為が慰謝料の発生原因となるのは不貞行為が夫婦の平穏な生活を害するためであり、不貞行為は法的には不法行為というものに分類されます。

不法行為が成立するためには侵害行為の存在及び侵害行為に対する行為者の故意・過失が要求されるため、不貞相手に対して不貞慰謝料請求を行う場合には、①不貞相手と配偶者との間で不貞行為が存在すること、②配偶者が既婚者であることを不貞相手が認識していたこと、もしくは、認識すべき状況にあったこと、③不貞行為当時、配偶者の夫婦関係が破綻していないこと、の各要件を充足する必要があるとされています。

離婚に近い時期の不貞行為に関する直近の最高裁判例(最判令和8年6月5日)

離婚に近い時期の不貞行為に関する直近の最高裁判例(最判令和8年6月5日)

問題となった事案は、別居はしていないものの夫婦ともに離婚を前提とした行動をとっていたという状況において、一方配偶者が不貞関係となったことを理由に他方配偶者が不貞相手に対して慰謝料請求を行ったというものです。

最高裁は上記事案に関して離婚に近い時期の不貞行為事案についてどのような判断過程を経るべきかの判断を示しました(以下、「上告人」=不貞相手、「A」=不貞行為に及んだ配偶者、「被上告人」=不貞行為をされた配偶者と読み替えてください)。

「前記事実関係によれば、上告人は、もともとAが被上告人と婚姻関係にあることを認識していたが、Aと肉体関係を持つまでに、Aから、被上告人と離婚するつもりであることを伝えられ、本件離婚届を見せられてもいたのであるから、Aにおいて被上告人と離婚する強固な意思があったことを認識していたというべきである。

その上、上告人は、Aから、被上告人から家計を別々に管理することを提案されたと伝えられたり、互いのプライバシーに干渉しないことを提案する旨の被上告人とAとの間の電子メールのやり取りを見せられたりもしていたのであるから、Aと肉体関係を持った当時、Aのみならず被上告人も夫婦としての婚姻共同生活を解消する意向を示していることを知り、婚姻共同生活の実体が既に失われていると認識したこともうかがわれる。

以上の事実関係等を前提にすれば、上告人は、Aと被上告人が離婚したと信じたことについては相当の理由があったとはいえないとしても、その婚姻関係が既に破綻していると信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があったとみる余地がある。

そうすると、上告人において、Aが被上告人と離婚したと信ずるについて相当の理由があったとはいえないからといって、それだけで直ちにいわゆる不貞慰謝料の請求を認めるために必要な要素である被上告人の婚姻共同生活の平和の維持に係る権利利益を侵害したことについての過失があるということはできない。

以上によれば、上告人においてAが離婚したと信じたことについて相当の理由があったか否かを検討するにとどまり、上告人において婚姻関係が破綻していたと信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があったか否かを検討することなく直ちに上告人に過失があるとした原審の判断には、過失に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべき」

なお、本件における夫婦の具体的状況は以下のとおり指摘されています。

  • 夫婦間の会話がほとんどなくなり、電子メールで用件を伝え合うようになった
  • 被上告人の離婚を考えている旨の電子メールに対し、Aがその申出を了承する旨の電子メールを返信した
  • Aが上告人に離婚の相談をした
  • 被上告人がAに子らの養育費などについて弁護士に相談に行く旨の電子メールを送信した
  • 被上告人がAに対し、被上告人とAの家計を別々に管理し、互いのプライバシーに干渉しないことを電子メールで提案し、Aがこれに同意した
  • Aがすぐに離婚できるように離婚届の用紙を用意し、自分の記載箇所に記入した
  • Aが上告人に好意を抱き、上告人に本件離婚届を見せ、離婚の意思を伝えた
  • Aが上告人に上記家計別管理の提案に同意したことを伝え、また上記プライバシー不干渉を提案する電子メールも見せた
  • Aが被上告人に本件離婚届を渡して決断を促したところ、程なくして協議離婚が成立した

最高裁判決の検討

最高裁判決の検討

上記最高裁判決を前提とした場合、夫婦の関係性が悪化している状況で一方配偶者に不貞行為が発生した場合、不貞慰謝料請求の要件の一つである、③不貞行為当時、配偶者の夫婦関係が破綻していないことという要件に関連して、不貞相手の側に夫婦関係が破綻しているということについてどの程度の具体的な情報が与えられていたかを慎重に検討する必要があるということになります。

夫婦間で離婚に向けた現実的な動きがあり、その詳細が資料等を添えて不貞相手に伝わっている場合には不貞相手の側には不法行為の成立に関連して過失がないという判断があり得ます。

まとめ

まとめ

今回は、離婚に近い時期の不貞行為について解説をしてきました。

一方配偶者に不貞行為が存在する場合においても裁判所の方で当時の夫婦の状態や不貞相手との連絡状況等について細かい分析をした上で慰謝料請求を認めるか否かの判断をすることになりますので、離婚に近い時期の不貞行為については不貞行為=不貞慰謝料の支払いと安易に結び付けて考えない方がよいかもしれません。

配偶者との離婚協議と並行して不貞相手に対して不貞慰謝料請求を行うという場合には今回の解説内容を踏まえ、どのように対応していくべきかを検討していただければ幸いです。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 吉田 竜二

離婚・不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成26年の弁護士登録後、離婚や男女問題を中心に多数の家事・民事事件に対応。
協議、調停、訴訟事件のいずれにおいても豊富な実務経験を有し、状況に応じて依頼者に最適・最善の解決方法を提案、その実現に注力する。