別居の強行は違法?法的に安全な別居の進め方

夏休みなどの長期帰省を利用した別居は、揉めずに家を出るチャンスに見えますが、やり方を間違えると法的に不利になるリスクがあります。特に、無断での子連れ別居は「連れ去り」と判断される恐れがあり注意が必要です。本コラムでは、無断別居に潜む民法上のリスクや、別居を開始する正当な理由、そして新生活をスムーズに始めるための「安全な別居のステップ」を弁護士が詳しく解説します。

知っておくべき「無断別居」の3つのリスク

知っておくべき「無断別居」の3つのリスク

相手に何も言わず、実家に戻ったまま別居をスタートさせる行為には、主に3つの法的なリスクが潜んでいます。

① 民法上の「悪意の遺棄」に該当するリスク

民法第752条には「夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならない」と定められています。これを「同居・協力・扶助の義務」と言います。

正当な理由や相手の同意がないまま、一方的に家を出て戻らない行為は、この義務に違反する「悪意の遺棄」とみなされる可能性があります。悪意の遺棄と判断されてしまうと、あなたが「離婚原因を作った側」となり、離婚が認められにくくなったり、逆に相手から慰謝料を請求されたりする立場にもなりかねません。

② 「子の連れ去り」問題

婚姻中(離婚前)の夫婦は、当然ながら双方にお子様の親権があります。

相手の同意を得ずにお子様を連れて実家に引きこもる行為は、相手から不法な連れ去り行為と主張される可能性があります。場合によっては、裁判所から「子供を元の自宅に戻しなさい」という審判(子の引き渡しを命じる審判)が下されるケースもあり得ます。

③ 相手の感情の激化による交渉の長期化

「騙された」、「裏切られた」と感じた相手は、強い怒りと不信感を抱きます。

その結果、その後の財産分与や養育費、離婚そのものに対する話し合いにおいて頑なになり、スムーズに進むはずだった離婚協議が泥沼化し、長期化する原因にもなり得ます。

別居を開始する「正当な理由」とは?

別居を開始する「正当な理由」とは?

ただし、どのような場合でも無断別居が違法になるわけではありません。

以下のようなケースでは、事前の同意がなくても家を出ることに「正当な理由」があると認められると考えられます。

・DV(ドメスティック・バイオレンス)や激しいモラハラがある場合

自身やお子様の心身の安全を確保するための緊急避難であり、同居義務違反には当たらないと考えられます。

・既に夫婦関係が完全に破綻している場合

長期間にわたり会話がなく、家庭内別居状態であるなど、実質的に婚姻生活が崩壊している場合です。

「法的に安全な別居」のステップとは

「法的に安全な別居」のステップとは

リスクを回避し、その後の離婚手続きをあなたに有利に進めるためには、計画的なステップを踏む必要があります。

①:別居前に「証拠」と「財産情報」を確保する

一度家を出てしまうと、元いた自宅にある証拠を集めることは困難となります。

相手の不貞(浮気)やモラハラの証拠、財産分与の対象となる預貯金通帳のコピー、不動産の契約書などは、水面下で確実に確保しておくと良いと考えられます。

②:「離婚を前提とした別居の意思」を明確に通知する

無断で消えた「行方不明者」や「悪意の遺棄」にされないために、実家に到着した直後(または移動中)などに、相手へメッセージを送るか、置き手紙を残した方が良いかと考えられます。

このように「離婚を前提とした一時的な避難であること」を明確に記録に残すことで、法的なリスクを大幅に軽減できます。

③:速やかに「婚姻費用(生活費)」を請求する

別居しても、離婚が成立するまでは相手に対して生活費(婚姻費用)を請求する権利がありますので、すぐに婚姻費用分担請求の調停を申し立てましょう。生活費を確保することは、長期戦に備えるための基本となります。

まとめ

まとめ

別居は、物理的に距離を置く手段としては非常に有効ですが、感情に任せて勢いだけで行うのはリスクがあります。

「別居したい」と決意されたなら、荷物をまとめる前に、まずは弁護士へご相談ください。

弁護士が介入することで、家を出る際の最適なメッセージの文面アドバイスから、別居後の相手からの激しい接触の対応、迅速な生活費(婚姻費用)の確保まで、あなたの新しいスタートを支援いたします。一人で抱え込まず、まずは安全な一歩をここから踏み出してみませんか。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 渡邉 千晃

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