中皮腫・石綿肺・肺がん アスベストが引き起こす5つの病気と給付金認定の基準

アスベスト(石綿)が原因となる病気には複数の種類があります。それぞれの疾患の特徴・症状・アスベストとの関係性を正しく理解することは、適切な給付金申請を行う上で非常に重要です。このコラムでは、アスベスト給付金の対象となる5大疾患(中皮腫・石綿肺・原発性肺がん・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水)のそれぞれについて、特徴・症状・給付金認定基準のポイントを詳しく解説します。

アスベスト関連5大疾患の全体像

アスベスト関連5大疾患の全体像

5大疾患とアスベスト給付金制度の関係

アスベスト給付金制度の対象となる主な疾患は、中皮腫・石綿肺・原発性肺がん・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水の5つです。ただし、制度によって対象疾患が若干異なります。石綿健康被害救済制度では良性石綿胸水は対象外です。また各制度の認定基準も制度によって異なり、一般的には「労災保険→建設アスベスト給付金→石綿健康被害救済制度」の順に認定基準が厳しくなる傾向があります。

疾患① 中皮腫

疾患① 中皮腫

中皮腫とはどのような病気か

中皮腫は、肺を取り囲む胸膜・肝臓や胃腸周囲の腹膜・心臓を覆う心膜などの表面を覆う「中皮」と呼ばれる細胞から発生する悪性腫瘍です。アスベストばく露との関連性が非常に高く、アスベスト関連疾患の代表格です。中皮腫の約80〜90%は胸膜(胸膜中皮腫)に発生します。残りは腹膜・心膜などに発生します。発症すると胸水の貯留・胸痛・呼吸困難などの症状が現れることが多く、進行が速く予後が不良であることが多い悪性疾患です。

中皮腫の診断と確定診断の難しさ

中皮腫の確定診断には病理組織学的検査(生検)が必要です。胸水検査・CT画像のみでは確定診断が困難なケースが多く、また中皮腫と肺がんの胸膜転移を鑑別することが難しい場合もあります。「中皮腫の疑い」と診断された段階でもアスベスト給付金の申請を検討することをお勧めします。確定診断がなくても申請が認められるケースがあり、申請準備を進める中で診断が確定することもあります。

中皮腫の労災認定基準のポイント

中皮腫の労災認定基準(平成24年3月29日基発0329第2号)のポイントは以下のとおりです。①胸膜中皮腫・腹膜中皮腫・心膜中皮腫のいずれかと診断されていること。②アスベストにばく露する業務に従事した経歴があること(ばく露量・期間の要件は比較的緩く、「一定の期間」従事したことで足りるとされています)。③アスベストばく露との因果関係が認められること(胸膜プラーク・石綿肺などの所見・石綿小体・石綿繊維の検出が有力な証拠となります)。

疾患② 石綿肺(せきめんはい)

疾患② 石綿肺(せきめんはい)

石綿肺とはどのような病気か

石綿肺は、アスベストを大量に吸入したことで肺が線維化する(硬くなって柔軟性を失う)病気です。じん肺(塵肺)の一種であり、間質性肺炎の一種でもあります。石綿肺では、肺の線維化が進むにつれて呼吸機能が低下します。初期は自覚症状が乏しいことが多いですが、進行すると労作時の息切れ・慢性的な咳・喀痰などの症状が現れます。重症化すると安静時でも息切れが生じ、日常生活に大きな支障をきたします。中皮腫と異なり、石綿肺は大量かつ長期間のアスベスト吸入によって発症するとされています。

「隠れ石綿肺」に注意

注意すべきは、「間質性肺炎」「肺線維症(IPF)」として治療を受けている方の中に実は石綿肺であるケースが含まれている可能性があるという点です。「隠れ石綿肺」とも呼ばれるこの問題は、専門家の間でも指摘されています。石綿肺はじん肺・間質性肺炎の一種ですが、アスベスト関連として治療・診断されていないケースがあります。アスベストにさらされる業務に従事していた経歴がある方が間質性肺炎・肺線維症などと診断されている場合は、一度専門家に相談されることをお勧めします。

疾患③ 原発性肺がん

疾患③ 原発性肺がん

肺がんとアスベストの関係

原発性肺がんはアスベスト以外の多くの原因(喫煙・大気汚染・遺伝的要因など)でも発生しますが、一定量以上のアスベストばく露は肺がん発症リスクを高めることが医学的に認められています。アスベストと喫煙が重複する場合、リスクが相乗的に高まることも知られています。「タバコを吸っていたから肺がんになったのだろう」と思い込んで、アスベストとの関連を疑わないケースが相当数あると指摘されています。アスベストにさらされる業務に従事していた方が肺がんを発症した場合は、一度専門家に相談されることをお勧めします。

肺がんの労災認定基準のポイント

原発性肺がんの労災認定基準は比較的複雑です。主なルートとして、①石綿肺(じん肺管理区分1以上)の所見と肺がんの合併、②アスベストばく露量が一定水準以上の場合(アスベスト小体または石綿繊維の検出数が一定量以上)、③石綿肺の所見がなくても胸膜プラークが存在し一定のばく露量が認められる場合、などがあります。喫煙歴がある場合でも一定のアスベストばく露歴があれば労災認定される場合があります。

疾患④ びまん性胸膜肥厚

疾患④ びまん性胸膜肥厚

びまん性胸膜肥厚とはどのような病気か

びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜(肺を覆う膜)が広範囲にわたって炎症を起こし、慢性的な線維性胸膜炎が生じたものです。石綿肺との合併や、良性石綿胸水(後述)の後遺症として生じることが多いとされています。胸膜肥厚が広範囲に及ぶと肺の膨張が妨げられ、呼吸機能が著しく低下します。症状としては息切れ・呼吸困難・胸痛などが現れます。労災認定においては、胸部レントゲン・CT画像による所見から肥厚の範囲・程度・呼吸機能への影響などが総合的に評価されます。

疾患⑤ 良性石綿胸水

疾患⑤ 良性石綿胸水

良性石綿胸水とはどのような病気か

良性石綿胸水は、アスベスト粉じんを吸引したことが原因で胸膜炎が発生し、胸腔(肺と胸壁の間のスペース)に液体(胸水)が溜まった状態です。「良性」とは「悪性腫瘍(がん)ではない」という意味であり、予後が良好であることを意味するわけではありません。良性石綿胸水は自然に軽快することもありますが、繰り返し発症したり、びまん性胸膜肥厚に移行したりすることがあります。症状としては胸痛・息切れ・発熱などが現れることがあります。

制度による取扱いの違いに注意

良性石綿胸水は、労災保険および建設アスベスト給付金制度では対象疾患ですが、石綿健康被害救済制度では対象外とされている点に注意が必要です。「石綿健康被害救済制度への申請だけを考えていた」という場合に見落とす可能性があります。

5大疾患に診断されていなくても諦めないために

5大疾患に診断されていなくても諦めないために

類似疾患でも申請できるケース

5大疾患と診断されていなくても、以下のような病名の方がアスベスト関連疾患として認定されるケースがあります。間質性肺炎・肺線維症(IPF)は、石綿肺が間質性肺炎の一種であるため、「間質性肺炎」と診断された方が石綿肺として認定される場合があります。胸膜炎・胸水は、アスベストが原因であれば「良性石綿胸水」として認定される場合があります。肺気腫・COPDも、アスベストばく露との関連が認められれば認定の対象となる可能性があります。円形無気肺はアスベストとの関連が比較的高いとされる疾患です。

「自分の病気は関係ない」と自己判断しないことが重要

アスベスト関連疾患の診断・認定は専門的な医学的・法的知識を要します。「自分の病気はアスベストとは関係ない」「担当医にアスベストとは言われなかった」という状況でも、専門家に相談することで思わぬ認定につながるケースがあります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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