退職勧奨にあったらどうするか

会社から「辞めてほしい」と言われたら、パニックになるのは当然です。しかし、退職勧奨はあくまで「お願い」であり、応じる義務はありません。正しい知識を持ち、冷静に対処することで、有利な条件での解決や現職維持が可能になります。

はじめに~それは「命令」ではなく「相談」である

はじめに~それは「命令」ではなく「相談」である

ある日突然、上司や人事担当者に別室へ呼ばれ、「君の席はもうない」「自主退職を考えてくれないか」と告げられる。これが「退職勧奨」です。

まず、絶対に忘れないでいただきたいのは、退職勧奨には法的強制力が一切ないということです。会社側がいかに深刻な顔をして、あるいは威圧的な態度で迫ってきたとしても、それは法的には「会社から労働者への、労働契約解約に向けた合意の申し込み(お願い)」に過ぎません。

あなたが「嫌です」と言えば、その瞬間に話は平行線となります。まずは深呼吸をして、「自分には拒否する権利がある」という事実に立脚しましょう。

「退職勧奨」と「解雇」の決定的な違い

「退職勧奨」と「解雇」の決定的な違い

労働者の方がよく混同されるのが、退職勧奨と「解雇」です。この違いを正しく理解することが、自分を守る第一歩となります。

退職勧奨

会社と労働者が話し合い、双方が納得して(合意して)雇用契約を終了させること。

解雇

会社が労働者の同意なく、一方的に雇用契約を終了させること。

日本では労働契約法により、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。これらは非常にハードルが高く、会社が一方的にクビにするのは容易ではありません。だからこそ、会社はリスクを避けるために、まずはあなたの「同意」を得て、穏便に辞めてもらう「退職勧奨」という手段を選んでいるのです。

ではどうすれば良いのか?

ではどうすれば良いのか?

その場での署名・捺印は「絶対に」しない

退職勧奨の面談で、会社側から「退職合意書」や「退職願」の雛形を提示されることがあります。「今ここでサインすれば退職金を加算する」といった言葉で即断を迫られるケースも少なくありません。

しかし、その場でのサインは厳禁です。

一度サインをしてしまうと、後から「無理やり書かされた」と主張して取り消すことは、法的に極めて困難です。どのような甘い言葉や厳しい言葉をかけられても、以下のフレーズを魔法の呪文のように使ってください。

「重要なことですので、一度持ち帰って家族や専門家(弁護士)と相談し、慎重に検討させていただきます」

こう言って席を立つ権利が、あなたにはあります。

証拠の確保~面談は「録音」が鉄則

退職勧奨がエスカレートすると、次第に「退職強要(パワハラ)」に変貌することがあります。「辞めないなら明日から仕事はない」「追い出し部屋へ行ってもらう」といった発言は、不法行為にあたる可能性があります。

こうした違法な圧力を防ぎ、あるいは後に有利な交渉を行うために、面談の録音は必須です。

「会社に無断で録音していいのか?」と不安になるかもしれませんが、自分が参加している会話の録音(秘密録音)は、裁判実務においても証拠として有効に認められるのが一般的です。スマートフォンの録音機能やICレコーダーをポケットに忍ばせ、最初から最後まで記録を残しましょう。

また、面談の回数、時間、担当者の氏名、発言内容を詳細に日記やメモに残しておくことも、強力な武器になります。

「辞める」か「残る」か、冷静な判断軸を持つ

「辞める」か「残る」か、冷静な判断軸を持つ

退職勧奨を受けた際、選択肢は大きく分けて2つです。

現職に留まる(拒否し続ける)

会社に残り続けたい場合、「退職する意思は全くありません。今後、退職に関する話し合いには応じられません」とはっきり意思表示をしてください。一度明確に拒絶したにもかかわらず、執拗に面談を繰り返すことは、裁判例上も「違法な退職勧奨」とみなされる可能性が高まります。

有利な条件を引き出して退職する(パッケージ交渉)

「こんなことを言う会社にはもう未練がない」と思うのであれば、合意退職を前提とした「条件交渉」に切り替えるのも賢い戦略です。

特別退職金(解決金)

給与の数ヶ月分〜1年分程度の上乗せを要求する。

離職理由

失業保険をすぐに受給できるよう、「会社都合(特定受給資格者)」扱いにさせる。

有給休暇の完全消化

残っている有給をすべて使い切ってから退職日を設定する。

再就職支援

再就職支援サービスの費用を会社に負担させる。

違法な「退職強要」への対処

退職を断った後に、以下のような嫌がらせが始まったら、それは「退職強要」です。

  • 過大な仕事を与えられる、あるいは一切の仕事を取り上げられる。
  • 正当な理由のない配置転換や降格。
  • 他の社員との接触を禁止される。
  • 長時間、多人数で、連日のように退職を迫られる。

これらは明らかに違法であり、慰謝料請求の対象となり得ます。こうした兆候が見られたら、すぐに弁護士に相談してください。弁護士が「受任通知」を送るだけで、会社側の態度が一変し、不当な圧力が止まるケースが多々あります。

おわりに~あなたの価値は会社が決めるものではない

おわりに~あなたの価値は会社が決めるものではない

退職勧奨を受けると、自分のこれまでのキャリアや人間性まで否定されたような気持ちになるかもしれません。しかし、退職勧奨はあくまで会社の経営上の都合や、単なる組織とのミスマッチに過ぎません。あなたの人生とキャリアを守る主導権は、会社ではなく、あなた自身にあります。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣

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