【学校・いじめ】「隠蔽」と言われないために~いじめ「重大事態」調査報告書、作成の鉄則

いじめ重大事態の調査報告書は、再発防止と被害者救済のための重要文書です。ガイドラインに基づき、事実経過、学校対応の検証、再発防止策等の標準項目を網羅する必要があります。客観的事実と評価を峻別し、いじめが被害に与えた影響を(直接の因果関係が不明でも)丁寧に認定することが重要です。また、学校側の対応不備も隠さず検証し、被害者等のプライバシーに配慮しつつも、真実を明らかにする誠実な記述が求められます。

調査報告書のあるべき姿とは

調査報告書のあるべき姿とは

いじめ重大事態調査の最終成果物である「調査報告書」。これは、単なる記録のまとめではありません。被害を受けた児童生徒の尊厳を回復し、学校が二度と同じ過ちを繰り返さないための「道標(みちしるべ)」となるべき重要文書です。

しかし、この報告書の記載が不十分だったり、論理が飛躍していたりすると、被害者側に「事実が歪められた」「隠蔽された」という不信感を抱かせ、再調査に発展するケースも少なくありません。

今回は、文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に基づき、信頼される調査報告書を作成するための法的・実務的なポイントを解説します。

報告書の「標準的な項目」とは

報告書の「標準的な項目」とは

ガイドラインでは、報告書に盛り込むべき「標準的な項目」が示されています。学校や教育委員会が独自の判断で項目を間引くと、必要な検証がなされていないとみなされるリスクがあります。基本的には以下の構成に沿って作成することが求められます。

①重大事態調査の位置づけ

法第28条第1号(生命心身財産)か第2号(不登校)か、認定日など。

②調査の目的・組織

誰が、どのような目的で、いつからいつまで調査したか。第三者が入っている場合はその詳細。

③事案の概要

基礎情報や事案の概略。

④調査の内容

アンケート、聴き取り、資料分析など、具体的な手法と対象。

⑤事実経過

被害者の訴え、関係者からの聴取内容、時系列での事実経過。

⑥認定しうる事実

調査から明らかになったいじめの事実や、被害といじめの関係性。

⑦学校・設置者の対応の検証

法や基本方針に照らして対応は適切だったか。

⑧対処及び再発防止策

被害者支援、加害者指導、組織としての改善策。

「事実」と「評価」を峻別する

「事実」と「評価」を峻別する

報告書作成において最も重要なのは、「客観的な事実」と、それに基づく「評価・推測」を明確に分けることです。

事実関係の整理

「いつ、どこで、誰が、誰に、どのような行為を行ったか」を可能な限り詳細に特定します。この際、複数の証言が食い違う場合は、安易にどちらかを採用せず、両論を併記するか、あるいは証拠に基づきどちらが信用できるかという認定理由を丁寧に記す必要があります。 また、確認できた事実だけでなく、「確認できなかったこと」も明記することで、調査の限界と誠実さを示すことができます。

背景事情(人間関係等)の深掘り

いじめ行為そのものだけでなく、いじめを生んだ背景事情(学級の雰囲気、人間関係のトラブル、発達特性、家庭環境など)についても、可能な限り網羅的に調査し記載することが、再発防止策を検討する上で不可欠です。

因果関係の「壁」をどう乗り越えるか

因果関係の「壁」をどう乗り越えるか

多くの報告書で争点となるのが、いじめと重大な被害(自殺や不登校など)との「因果関係」です。「いじめ以外にも家庭の問題があった」「成績の悩みがあった」として、「いじめが直接の原因ではない(因果関係は認められない)」と結論づける報告書が散見されますが、これは不適切です。

ガイドラインは、「直接的な因果関係等の説明が難しい場合であっても、いじめが重大な被害等に何らかの影響を及ぼしたことの認定を丁寧に行うことが重要」と明記しています。

「いじめが主たる原因ではない」として切り捨てるのではなく、複合的な要因の一つとして、いじめがどの程度の影響を与えたのかを詳細に分析・記載する姿勢が求められます。

「学校の対応」への厳しい検証

「学校の対応」への厳しい検証

調査報告書は、学校や教育委員会の「身内」が作成する場合であっても、自らに対して厳しい検証を行わなければなりません。 「いじめ防止対策推進法」や「学校いじめ防止基本方針」に沿った対応ができていたか、組織的な情報共有は機能していたか、教職員の認識に甘さはなかったか等を客観的に検証します。

ここでの反省や課題の抽出が不十分だと、その後の「再発防止策」が表面的なものになり、被害者側の納得も得られません。「なぜ防げなかったのか」という問いに対し、組織的な構造問題にまで踏み込んで分析することが重要です。

被害者・遺族への配慮とプライバシー

被害者・遺族への配慮とプライバシー

報告書は通常、最終的に被害者や保護者に提供され、説明されます。

また、公表される可能性もあります。

そのため、特定の児童生徒が識別されないよう、氏名を「生徒A」「生徒B」と記号化するなどのプライバシー配慮がなされることが多くあります。

一方で、個人情報保護を過度に重視するあまり、事実関係を黒塗りにしすぎて意味が通じなくなることは避けなければなりません。

被害者側が知りたいのは「真実」であり、いたずらに情報を隠すことは不信感を招くだけです。

おわりに

おわりに

いじめ重大事態の調査報告書は、学校が過去の事実と向き合い、未来の安全を作るための公的な文書です。「学校を守るため」ではなく、「子供の尊厳を守るため」に書かれるべきものです。事実をありのままに記録し、不都合な真実からも目を背けず検証すること。その誠実な姿勢が報告書に表れて初めて、被害者の心の回復と、学校への信頼再構築が可能になるのです。

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

私たちは、開所以来35年以上、いじめ・学校問題にお悩みの方に一貫して寄り添って参りました。

子どもや保護者の方が日常を取り戻していただくために、法的な専門知識と経験を活かして、全面的にサポートいたします。あなたの未来への不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。

お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。

私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。

まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。


■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
弁護士のプロフィールはこちら