退職代行を弁護士に依頼するべき理由は?

退職は労働者の正当な権利ですが、会社側の引き止めや嫌がらせで悩む方は少なくありません。本記事では、民法や労働基準法の条文に基づき、弁護士による退職代行の法的メリットを解説。民間業者との決定的な違いや、有給消化・残業代請求の重要性について、法律の専門家が詳しくお伝えします。

弁護士が解説する退職代行の法的根拠とメリット―民法・労働基準法から守るあなたの権利

退職は「法」で認められた労働者の権利

弁護士が解説する退職代行の法的根拠とメリット―民法・労働基準法から守るあなたの権利

「辞めたいけれど、会社が認めないと言っている」「強引に引き止められて、法的なトラブルが怖い」 こうした悩みを抱える労働者は後を絶ちません。しかし、日本において労働者の「退職の自由」は強力に保護されています。

近年、退職代行サービスが普及していますが、その実態はさまざまです。法律の専門家である弁護士に依頼することで、どのような法的保護を受けられるのか、民法や労働基準法の条文を交えながら、その重要性を詳しく解説します。

そもそも「退職」の法的根拠とは?

そもそも「退職」の法的根拠とは?

退職に関する法的なルールは、主に「民法」によって定められています。雇用形態によって適用される条文が異なります。

期間の定めのない雇用(正社員など)

多くの正社員が該当する「期間の定めのない雇用」の場合、民法第627条第1項が根拠となります。

民法第627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

この条文により、労働者は原則として理由を問わず、退職を申し出てから2週間が経過すれば、会社の承諾がなくとも自動的に雇用契約が終了します。会社の就業規則に「退職は3ヶ月前に申し出ること」と記載があっても、原則としてこの民法の規定が優先されます。

期間の定めのある雇用(契約社員・パートなど)

契約期間が決まっている場合、原則としてその期間満了まで働く必要がありますが、民法第628条により、やむを得ない事由がある場合には直ちに解除できます。

民法第628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

さらに、労働基準法第137条の規定により、契約期間の初日から1年を経過していれば、いつでも退職の申し出が可能とされています。

退職代行における「非弁行為」の法的リスク

退職代行における「非弁行為」の法的リスク

なぜ、民間業者ではなく「弁護士」である必要があるのでしょうか。そこには弁護士法第72条という極めて重要な規定が存在します。

弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で(中略)その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

民間業者が行えるのは、あくまで「退職の意思を伝える」という使者にすぎません。もし会社側が「退職時期をずらせ」「有給は認めない」と反論してきた際に、業者側がこれに対して交渉を行うことは、この第72条に抵触する「非弁行為(違法行為)」となる可能性が高いのです。

違法な業者を介した手続きは、後に会社側から無効を主張されたり、懲戒解雇の口実にされたりするリスクを孕んでいます。

労働基準法に基づいた「正当な権利」の行使

労働基準法に基づいた「正当な権利」の行使

弁護士は退職の手続きだけでなく、労働基準法に基づいた以下の権利行使を強力にバックアップします。

有給休暇の取得(労働基準法第39条)

多くの会社で「辞めるなら有給は認めない」という違法な運用が見受けられます。しかし、有給休暇は労働者の権利であり、会社側がこれを拒否することはできません。

労働基準法第39条

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した有給休暇を与えなければならない。

弁護士は、残有給日数を正確に把握し、退職日までの期間をすべて有給消化に充てるよう交渉します。これにより、実質的な「即日退勤」と「給与の受領」を両立させます。

未払い残業代の請求(労働基準法第37条)

「サービス残業が当たり前だった」という場合、退職時こそが精算のタイミングです。

労働基準法第37条

使用者が(中略)労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又は日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で(中略)割増賃金を支払わなければならない。

弁護士は、タイムカードやPCのログ、業務メール等の証拠から未払い賃金を算定し、会社に対して法的な根拠を持って請求を行います。

賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)

「辞めるなら最後の給料は払わない」「損害が出たから給料から差し引く」といった主張は、労働基準法第24条により禁止されています。

会社側が勝手に賃金を相殺することは許されず、弁護士が介入することで、こうした不当な取り扱いを未然に防ぎます。

会社側からの「損害賠償請求」への対抗

会社側からの「損害賠償請求」への対抗

ブラック企業の常套句として「急に辞められると損害が出る。訴えてやる」という脅しがあります。しかし、前述の民法第627条を守っている限り、通常の労働者が退職によって損害賠償義務を負うことは、裁判例上も極めて稀です。

また、労働基準法第16条では、違約金の禁止が定められています。

労働基準法第16条(賠償予定の禁止)

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

弁護士であれば、会社側の主張がいかに法的に無理があるかを即座に指摘し、あなたに対する不当な圧力を無力化できます。

弁護士に依頼する実務上の流れ

弁護士に依頼する実務上の流れ

法律相談

雇用契約書や就業規則を確認し、最適な退職スケジュールを立案します。

受任通知の送付

弁護士が会社に対し、代理人になった旨と本人への直接連絡禁止を通知します。

退職交渉

有給消化、退職金の支払い、未払い残業代、離職票の発行等を一括して交渉します。

必要書類の受け渡し

離職票や源泉徴収票、社会保険資格喪失証明書の発行も、すべて弁護士を介して完結させます。

終わりに

終わりに

退職は、次の一歩を踏み出すための前向きな選択です。しかし、法律の知識を持たない個人が、組織を相手に一人で戦うのは精神的にも肉体的にも限界があります。

弁護士は、単なる「代行者」ではありません。あなたの権利を守り、法律に基づいた適正な解決を導き出す「代理人」です。 もし、今あなたが苦しんでいるのであれば、法的な盾と矛を持つ私たちにご相談ください。法律に基づいた、確実で安全な退職を実現しましょう。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣

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