
「今働いている会社の未払い残業代は、いくらになるのだろうか」「残業代はどのように計算されているのだろうか」「残業代請求がしたい」このような場面に遭遇した方やそれらについて知りたい方に向けて、残業代の計算方法について解説します。
初めての方にもわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
そもそも残業代とは

そもそも、残業代とはどのようなお金なのでしょうか。
給料とどう異なるのか、疑問に思われる方も多いでしょう。
残業と時間外労働
シンプルに述べますと、残業代とは、法律の制限時間を超えて働いた場合に支払われるべき賃金です。
法律は、法定労働時間(1週間で40時間、1日8時間)を超えて労働をさせてはならないと規定しています。
しかし、法定労働時間内では終わらない仕事もあります。働きたい労働者がより多く働くことについて、禁止すべきでもありません。
また、その頑張りに応じて、通常よりも「よく頑張った」と評価されるでしょうし、通常よりも高い賃金が見合うことも多いでしょう。他にも、皆が働きたがらない深夜の労働や、会社の休日に働く場合も、高い賃金が見合うことが多いはずです。
このように、多くの場合、皆さんが想起される「残業代」とは、定時を過ぎても働き続けた場合のその時間に対する賃金です。
法律上、このような法定労働時間を超えて労働をする場合には、割増賃金を支払うべきことが規定されています(労働基準法37条1項)。また、これを「時間外労働」と呼ぶことがあります。
少し注意すべきなのは、実働労働時間が8時間を超えない場合です。
実働が7時間の方は、定時からさらに1時間働いたとしても、1日の労働時間は8時間です。この場合、上でご説明した法定労働時間を超えてはいません。このような場合、もちろん賃金は支払われますが、これは割増賃金にはなりません。
イメージしづらい方もいることを承知のうえですが、残業代とは、タクシーの深夜料金のようなものとご説明するのが共感を得やすいのではないかと思います。今回は、特に割増賃金を中心に、残業代の計算方法をご説明します。
残業代はどうやって計算するのか

上でご説明したように、使用者は,時間外労働や休日労働、および深夜労働について,通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に,それぞれ一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条)とされています。この割増賃金が一般に「残業代」と言われるものです。
分かりやすさを重視して計算式をお示しすると、
未払い残業代=(賃金単価・時間単価)×(残業時間)×(割増率)
と説明できます。
【注意】非常に単純化したモデルですので、この計算式だけで直ちに皆様の残業代を計算できるわけではありません。個別事情によって算定される残業代は大きく変わりますので、あくまでイメージをしやすくするためのものとご理解ください。
3ステップ

大きく計算のために見るべきものは3つです。
まず、賃金単価・時間単価を算定します。
次に、労働者の残業時間を計測します。
最後に、残業時間ごとに決まる割増率を決定したうえで、上の計算を行います。
「残業代ごとに決まる割増率」とはどういうことか、いまいち理解しづらいかもしれません。下の割増率についての部分で説明します。
賃金単価・時間単価

上の計算式における賃金単価・時間単価とは、その人が普段1時間働くと、いくらもらえるのかの数値です。分かりやすさを重視して、「時給」と単純化できることもあります。
法律では、割増賃金は、「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割五分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算」されるといいます。ここにいう「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額」を、「賃金単価」だとか「時間単価」だとか呼びます。
もっとも、現実の問題ではそう簡単に時給と説明できないことが多いです。
なぜなら、○○手当などといった名目で、基本給以外に複数の手当の支払いを受けている場合には、これらを合算して賃金単価を計算しなければならないからです。
賃金単価は、例えば、月給を受けている労働者の場合、毎月受け取る賃金を月ごとの所定労働時間の合計で割ったものが賃金単価になります、平たく言えば、1カ月間の平均時給といえるものです。
残業時間

残業時間とのべましたが、これは、上でご説明した時間外労働の時間です。この時間を計測して残業代を計算します。
裁判では、タイムカード、会社の労働時間管理ソフト、会社建物の入退館記録、シフト表、日報・週報等、労働者のメモ、パソコンのログイン・ログアウト時間、電子メールの送信時刻、タコグラフ、閉店・開店時刻などの記録を根拠として、労働者がどのくらい残業をしていたのかを計測します。
この際注意が必要なのは、計算をすべき時間が時間外労働の長さであることです。法定労働時間(1週間で40時間、1日8時間)内の労働は、時間外労働ではありませんので、それらを超えて時間外労働となった部分だけを計測する必要があります。
例えば、5日間毎日9時間働いたAさんの時間外労働時間は、5時間となるのです。
仮に残業代を計算する場合、これらの証拠を十分そろえておくことが良いでしょう。上記の記録の多くは会社側が有していますが、労働者側でもこれらを手元に残す工夫が重要です。
割増率

割増率とは、わかりやすさを重視すれば、その残業の大変さを示す数値です。
働き方が多様化している現在では、一概にどの労働が高い割増率に値するかを断定することはできませんが、少なくとも労働基準法は、時間外労働、休日労働、深夜労働は通常の労働時間よりも苦労が多いものと考えています。
そこで、法律上、割増率が残業の時間それぞれについて定められています(まとまった表としてこちらもどうぞ)。
例えば、休日労働にあたる労働時間には3割5分の割増率が定められています。休日に出勤すれば、35%の割増を受けられるのです。
一方、残業が深夜労働にあたるのであれば、25%の割増を受けられるのです。
なお、ここでいくらかの方は「休日労働かつ深夜労働ならどうなるだろう」と想起されるかもしれません。ご興味のある方は、東京労働局の出しているしっかりマスター割増賃金をご覧になるのもよいでしょう。
また、モデルケースの豊富な解説として、こちらの記事もわかりやすく解説しています。
まとめ

以上のように、一定の計算式を用いて、未払いの残業代を計算することが出来るのです。
ただし、前半で述べましたように、事情によって、残業代の算定結果が大きく変わることも多いです。
また、訴訟や交渉などの対応においては、証拠の収集や交渉の仕方、法律にのっとった主張等をする場面が非常に多いです。
このような場面に直面したら、弁護士に相談をすることを非常にお勧めします。弁護士が早期に関わることで、適切な残業代の成功につながる可能性が非常に上がります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。






