ボール盤は、金属などに穴を空ける加工をする際に活用されているものですが、便利な機械である一方で、労災事故もよく発生しています。このコラムでは、ボール盤での労災事故の具体例や、労災給付、会社への損害賠償請求などについて解説します。

1 ボール盤とは?

1 ボール盤とは?

ボール盤とは、金属や木材といった素材に穴を空けるなどの用途で使用される工作機械です。

機械の本体には、回転ドリルなどの工具を装着して上下させる機能や、金属や木材などの素材を固定するための機能が備わっています。

ボール盤を使用することで、手作業で穴を開けるよりも、まっすぐ、安定した力で穴あけ加工をすることができます。また、効率も上がります。

2 ボール盤で多発する事故類型

2 ボール盤で多発する事故類型

ボール盤より発生する事故類型としては、例えば、以下のようなものがあります。

①巻き込まれ型の事故

ボール盤には、穴を空けるためのドリル等を装着します。

そのドリルは、高速で回転します。

衣類や手袋、髪の毛などが回転部分に巻き込まれることで、身体の一部が機械に接触し、裂傷などのケガを負うことがあります。

②飛散物による事故

穴を空ける素材がきちんと固定されていない場合、機械の回転の勢いにより、素材が飛んでしまうことがあります。

軽いものであれば身体に直撃し、また、重い物であれば足の上に落ちてケガをする可能性があります。

さらに、穴を空ける際には、金属の屑が飛散することがあります。

きちんと目を保護していないと、眼球を傷つけてしまう可能性があります。

③工具の不具合、故障による事故

穴をあけるためのドリルを適切に機械に固定していないと、回転しているときに外れて、飛んでしまうことがあります。

高速で回転していたドリルが身体に飛び、刺さってしまうなどの事故が起こる可能性があります。

3 ボール盤で発生する労働災害の現状

3 ボール盤で発生する労働災害の現状

ボール盤は、金属などに穴を空ける際には、非常に有用な機械です。

しかしながら、ドリル等が高速で回転するため、事故の態様によっては、重傷を負ったり、死亡事故が起こることもあります。

4 労働安全衛生法・民法715条(使用者責任)

4 労働安全衛生法・民法715条(使用者責任)

労働安全衛生法とは、労働基準法とともに、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です(同法1条)。

会社側に労働安全衛生法違反が認められるような場合には、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。

また、他の従業員の過失により事故に巻き込まれてしまった場合には、その従業員のみならず、会社に対しても使用者責任(民法715条)に基づいて損害賠償を請求することができます。

この請求権により、事故を起こしてしまった従業員に資力が無い(賠償金を支払う経済的な余力が無い)場合であっても、会社側に賠償してもらうことで、被害の救済を図ることができます。

5 労災保険給付と会社への損害賠償を並行して請求する方法

5 労災保険給付と会社への損害賠償を並行して請求する方法

⑴労災保険で受け取ることができる給付の種類

以下は、労災保険で受け取ることができる給付の一例です。

①療養(補償)給付

労災病院や労災指定病院等を受診・治療する場合には、当該病院に「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」を提出し、請求します。

それ以外の医療機関を利用して受診・治療した場合には、費用を立て替えた上で、労働基準監督署に「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を提出し、請求します。

例えば、治療費や薬代、器具の費用、施術費用などが給付の対象になります。

②休業(補償)給付

労働基準監督署に「休業(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します。

③障害(補償)給付

労働基準監督署に「障害(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します。

④傷病(補償)年金

労働基準監督署が職権で行うため、請求は必要ありません。

⑤介護(補償)給付

労働基準監督署に「介護(補償)給付支給請求書」を提出し、請求します。

⑵会社に対する損害賠償請求

例えば、休業損害の一部や通院慰謝料や後遺障害慰謝料については労災からは支給されないように、労災給付は十分な補償とは言えません。

そのため、労災から給付されない部分については、会社への損害賠償請求を検討することになります。

その際には、前記の「4 労働安全衛生法・民法715条(使用者責任)」の内容などを中心に検討することになります。

6 弁護士に依頼するメリット

6 弁護士に依頼するメリット

労災事故において、特に大きな事故に遭ってしまった場合には、生活が一変します。

一方で、労災給付の額は、非常に大きくなる可能性があります。

また、会社に対しても、多額の損害賠償請求をすることができる可能性もあります。

一方で、たとえば逸失利益や過失割合などの点で、会社側と紛争になることも少なくありません。

そのため、早期に専門家による適切な助言を受けることが重要です。

7 当事務所のサポート内容

7 当事務所のサポート内容

当事務所では、労働災害を多く取り扱っているチームの弁護士が、直接、ご依頼者様のお話を丁寧にお伺いし、また、ご依頼者様にわかりやすくご説明することを心がけています。

ご相談については、初回60分までご相談料は無料です。

2回目以降のご相談料は、30分まで5000円(税別)、以後30分まで5000円(税別)になります。

さらに、事案によっては、着手金無料でお受けしております。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 赤木 誠治

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