解雇予告手当とは

「1か月後に解雇することを告げられた」「急に解雇を告げられた」「会社から解雇予告手当というものが支払われるらしい」このような場面に遭遇した方やそれらについて知りたい方に向けて、解雇予告手当制度やその計算方法、実際に解雇予告に直面した場合の問題点について解説します。

初めての方にもわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

解雇予告手当とは何?

解雇予告手当とは何?

そもそも、本コラムのテーマである「解雇予告手当」とは何でしょうか。これは、わかりやすさを重視していえば、会社が予告なしに従業員を解雇する場合に支払うべき金銭です。

解雇は前もって伝える(解雇予告)

会社は、一定の場合には従業員を解雇することが可能です。しかし、そうは言っても、ある日いつもどおり出勤したら「今日であなたはクビだ」と言われてしまうならば、従業員は翌日以降の生活に困ってしまいます。次の転職先なんて考えてもいないでしょうし、明日からの生活にも困ります。

これでは、たとえ正当な理由のある解雇であるとしても従業員に酷なことになります。

そのため法律は、会社が解雇をする場合には、①解雇の少なくとも30日前には解雇をする旨を予告すること(解雇予告)又は②解雇予告に代わる解雇予告手当を支払うべきことを定めているのです(労働基準法20条)。

労働基準法20条1項のルールには、罰則も置かれています(労働基準法119条)ので、会社はこのルールに厳しく制限されているといえます。

解雇予告を前もって伝えられないときには解雇予告手当

すべてのケースで会社が30日前から解雇予告をするものではありません。30日より短い予告期間で解雇を予告することもあります。

法律上、会社は、従業員に対し、平均賃金をもとに計算される一定の金銭を支払えば、30日より短い予告期間で解雇を予告しても、法律上許されることになります。このような場合に支払われる金銭を、解雇予告手当といいます。

会社が解雇をする場合、上の②のように、解雇予告手当を支払うことでいきなり従業員を解雇してしまうこともあります。また、解雇予告を30日前に行わなくとも、解雇予告から解雇までの予告期間の日数と予告手当の日数を合計して30日以上となるように解雇予告を行うこともあります。

なお、解雇予告とは、会社が「解雇するかもしれない」と伝えるだけではいけません。裁判例では、「頑張ってもらわないと、このままでは30日以内に解雇する」と会社が伝えたケースにおいて、これは解雇予告にあたらないと判断したものもあるようです。

解雇予告手当はいくら?

解雇予告手当はいくら?

計算方法

では、会社が解雇予告を解雇の30日以前に行わなかった場合、解雇予告手当は、どのように計算されるのでしょうか。

これは、以下の計算で算定されます。

解雇予告手当金
= (1日当たりの)平均賃金 × 〔30日-解雇予告日の翌日から解雇日までの日数〕

「平均賃金」をもとに計算する

平均賃金は、解雇された従業員の1日当たりの賃金です。そして、平均賃金の計算方法は、労働基準法12条1項に計算方法が規定されています。解雇予告の前日から遡って3カ月間の間に従業員に支払われた賃金の総額を、3カ月分の日数で割ることで、計算されます。

なお、雇われてから3カ月に満たない従業員の場合には、雇入から解雇予告の前日までの期間の平均賃金を計算します。

解雇予告手当が支払われる場合と支払われない場合

法律上、会社が解雇の日より30日以上前に解雇予告をしている場合には、会社は解雇予告手当を支払う義務を負いません。

また、解雇予告手当には、支払われない(会社が支払わなくてもよい)場合があることには注意をしましょう。このような事態になる原因を除外事由と呼ぶことがあります。

例えば、会社がやむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合も、解雇予告手当を支払わなくてよいことがあります。これは、地震や火災によって会社設備が大きく棄損したりすることで、およそ事業継続が困難であったような場合です。このような場合には除外事由が認められます。

また、従業員自身が会社のお金を横領した等の著しい懲戒事由が認められる場合などにも除外事由があるとされます。

解雇予告手当が不当に支払われないときは

解雇予告手当が不当に支払われないときは

解雇予告手当が不当に支払われないとき、従業員の取りうる手段は、会社に対して解雇予告手当を請求することです。ご自身で請求することも可能ですが、弁護士に相談するなどして、請求することを検討するのが良いでしょう。

もっとも、注意をしていただきたい点があります。

それは、そもそもその解雇は正当なものなのか、ということです。

そもそもその解雇、適法ですか?

そもそもその解雇、適法ですか?

日本の法律上、従業員を解雇することには大きなハードルがあります。解雇権濫用法理と呼ばれるルールをはじめ、簡単に従業員を解雇できないとされています。

そして、解雇予告手当は、適法(正当)な解雇をする場合に支払うべきお金です。しかし、会社が適法でない(不当な)解雇をする場合にも解雇予告手当が支払われることがあります。

仮に、従業員が解雇予告手当を受け取ったとしましょう。これは、従業員が解雇について争わないということを意味してしまいます。そのため、不当解雇を争いたい方は、解雇予告手当を受け取ることが望ましくない場合もあると言えるのです。

解雇が不当であるか否かは、非常に専門的な知識・経験を要します。弁護士に相談をして、解雇が不当であるか否かを相談することが推奨されます。

まとめ

まとめ

以上ご紹介したように、「解雇予告手当」とは、解雇の際に会社が従業員に支払うべきお金です。そして、その金額は、従業員がもらえる平均賃金により算出されます。

もっとも、解雇予告手当は、正当な解雇の場合に会社が支払うべきお金であり、不当解雇の場合には従業員はこれを受け取るべきではないこともあります。

解雇を言い渡された場合の対応には法律上難しい問題が多く隠れています。このような状況に対処するためにも、弁護士へ一度ご相談されることが推奨されます。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小松原 柊
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