飲食業でも残業代は発生します。飲食店の従業員が、残業代請求をするために検討すべきこと。

昨今、飲食店に勤務している、あるいは勤務していた従業員が未払いの残業代を請求するという案件が増えている印象です。飲食業における残業代請求で検討すべきことまとめていきますので、参考になればと思います。

飲食店の残業

飲食店の残業

飲食業は、一般的に残業代の問題が発生しやすい業界の一つです。

それには以下5つの理由があります。

飲食業に残業代が生じやすい理由

飲食業に残業代が生じやすい理由

① 労働時間が長時間になりやすい

飲食店勤務の方は、労働時間が長くなりがちです。

これは、飲食店の営業時間が長い場合もあるためです。

また、従業員の人数や店舗の規模によって、シフトや勤務時間も不規則となる傾向があります。

② 労働時間の客観的な証拠が残りやすい

労働者が未払い残業代を請求する際には、労働時間を証明する客観的な証拠を用意する必要があります。

飲食店では、一般的にはタイムカードを導入している店舗が多く、それにより労働時間が明確になるため、客観的な証拠に基づく残業代請求がしやすいのが特徴です。

残業代請求に必要な証拠について

上記に挙げたタイムカードのほか、残業代請求に役立つ証拠には、以下のようなものが挙げられます。

・業務日報(業務日誌)

・メールの送受信記録、通話記録

・シフト表

・給与明細

・雇用契約書

・就業規則  など

③ 固定残業代制を採用している使用者が多い

飲食業では、残業時間に関わらず一定の残業代を支払う「固定残業代制」を採用している使用者が多くあります。

しかし、雇用契約書や就業規則、給与明細などに適切な形で規定がされていない場合は違法な固定残業代制と判断され、残業代の支払い義務が生じることがあります。

④ 休憩時間がきちんと確保されていない

「作業の合間に適宜休憩してください」というような休憩時間の定め方ですと、休憩時間ではなく、労働時間であるとみなされる可能性が高いです。

裁判例では、すし屋で板前見習い、裏方として勤務していた従業員について、「客が途切れた時などに適宜休憩してもよい」とする約束だった事案において、「現に客が来店した際には即自その業務に従事しなければならなかったことからすると、完全に労働から離れることを保障する旨の休憩時間について約定したものということができない」として、休憩時間を労働時間とみなした例があります。

⑤ 深夜残業が生じやすい

飲食店においては、その性質上、深夜の勤務が発生することがあります。

この場合は深夜割増の手当を求めることができます。

労働基準法では、午後10時から午前5時までが深夜勤務として定められています。

この時間に勤務する場合には25%割増の賃金を受け取ることができます。

また、深夜の時間帯が残業時間と重なる場合は、法定残業であれば時間外勤務分と深夜勤務分の両方の割増を支払ってもらうことが一般的です。

法定残業は25%割増、休日勤務であれば35%割増なのでその分をプラスし、1.5~1.6倍ほど支払う計算となります。

固定残業代制について

一般に、残業代は残業時間に応じて支払われるものです。

それに対し、残業時間にかかわらず一定の残業代を支払うというものが固定残業代制です。

固定残業代制は、労働者のモチベーションを確保させ、残業時間を抑制できるメリットがあるため、使用者側において採用しやすい制度です。

しかしその反面、固定残業代制が有効と判断されるためには、以下の厳しい要件をクリアしている必要があり、その要件をクリアしていないと、無効と判断されます。

ⅰ 労働契約の内容となっていること

ⅱ 固定残業代にあたる部分が固定給と明確に区分されていること

ⅲ 残業時間が固定残業代制で定められた時間を超えた場合は割増賃金を支払っていること

なお、設定された時間が45時間を超える場合や、固定残業代部分が割増時間外手当額や最低賃金を下回っている場合も問題となり得ます。

固定残業代制が無効となれば、当然1円も残業代は支払われていないことになるため、別途残業代を請求することができます。

会社に対して残業代を請求する方法

会社に対し、残業代を請求する方法は以下のとおりです。

①会社と話し合い(交渉)をする

②労働基準監督署に相談(申告)する

③労働審判を申し立てる

④訴訟を提起する

上記方法はいずれも個人だけで対応可能ではありますが、早期解決を目指すのであれば、やはり弁護士に相談したほうがよいでしょう。

①会社との話し合い(交渉)

労働審判や訴訟にまで発展すると、労働者も会社も、費用や時間、労力を要するため、交渉で決着することは双方にメリットがあります。

そのため、話し合い(交渉)で決着するケースも多くあります。

②労働基準監督署への相談(申告)

無料で利用ができますし、具体的なアドバイスを得られるため、自身で残業代請求に関する情報を集める手間が省けます。

もっとも、労働基準監督署は会社に対し、是正するよう指導や勧告してくれることはあり得ますが、あなたの代わりに証拠を集め、残業代を請求してくれるわけではありません。

③労働審判

労働審判は、裁判所を利用する手続きの一種で、通常の裁判に比べて短期間での解決が期待できます。

裁判官1名と労働審判官2名の計3名で構成された労働委員会が、当事者双方の言い分を聞き取り、可能であれば調停 (話し合いによる解決)を勧め、これが難しい場合には審判(裁判所の判断)で決着をつけます。

審判内容に不服があれば2週間以内に異議申立てをすることができます。異議申立てがされると、通常の訴訟に移行します。

④訴訟

話し合いや労働審判、労働基準監督署が介入しても解決できなかった場合の最終手段です。

会社側が徹底的に争うようであれば、確定判決を得られるまで1年以上かかってしまうということもあり得ます。

もっとも、訴訟であっても、判決に至る前に、裁判所から和解を勧められるケースがほとんどで、和解によって決着するケースも多くあります。もちろん、和解による解決であっても、効力は判決と一緒です。

ご相談 ご質問

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飲食業の場合、残業代を請求できる可能性があります。

残業代に関し少しでも疑問があれば、まずは弁護士に相談にいきましょう。

またあわせて、すぐにでも残業代請求が行えるよう(備えあれば憂いなしですので)、早いうちから証拠集めをしておくことをおすすめいたします。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小野塚 直毅

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