交通事故で入院してしまった場合の保険金と損害賠償の金額はいくらか解説します

交通事故に遭ってケガをした場合や入院をした場合に、誰にいくらを請求できるでしょうか。入院している間に手続ができるのかと不安な方も多いでしょう。そこで、この記事では、交通事故で入院してしまった場合の保険金についての解説と、損害賠償の金額はいくらになるか等を解説していきます。

入院中にかかる費用等の賠償について

入院中にかかる費用等の賠償について

入院治療費

交通事故で入院をした場合、入院費用は誰が払うのでしょうか?
原則から言うと、病院で治療を受けるのは患者=被害者であるため、病院から請求を受けるのは被害者自身です。
ただし、加害者が保険に入っている多くの場合は、保険会社が、入院費・治療費を、直接病院に支払うという対応(一括対応と言います)をします。このような「一括対応」は、いわば保険会社のサービスなので、事案によっては、保険会社が一括対応をしてくれない場合がありますし、強制することはできません。そういう場合は、被害者自身が、健康保険を使用する等で、対応する必要があります。

ここまでは、誰が支払うかという問題ですが、保険会社が払うとして、どこまで認められるかという問題があります。
難しい言葉になりますが、「必要かつ相当な範囲」で、治療費が認められます。大概の場合、治療は医師の指示で決まるので、その指示通りの治療であれば、必要かつ相当な範囲と言えるでしょう。
一般的に、治療費のなかには、診察料、リハビリ費、検査料、入院料、投薬料、手術料、処置料等が含まれます。

入院の個室・特別室の使用

入院をした場合、一般的には4人や6人部屋です。個室に入るためには、追加で料金を払わなくてはなりません。では、「個室」に入った場合に、その個室料については、損害賠償として認められるでしょうか。

結論を言うと、相当の理由が認められれば、損害賠償として支払ってもらうことが可能です。
例えば、症状が重篤であったとか、緊急入院したが個室しか空いていなかった場合が想定できます。被害者が「個室じゃないと眠れない」などという理由では、認められません。

交通事故では、必要かつ相当というキーワードが重要です。

入院雑費

入院雑費

入院雑費とは、入院中に生じる様々な費用のことを言います。
例えば、寝具、洗面用具、ティッシュなどの日用雑貨品、テレビカードの購入費等です。

入院雑費は、裁判基準で1日につき1500円が認められます。

※保険会社は、自賠責保険の限度である1100円しか認めてくれません

入院雑費は、何故1500円かと言うと、細かい出費が多いのと、少額であるので、一つ一つ必要性と相当性を判断するのは大変ということで、実務では定額化されています。
したがって、1500円も雑費を使っていないという場合でも、領収書の添付は不要です。

逆に、1500円以上必要だという場合は、それを立証しなくてはなりません。

付添看護費

付添看護費とは、被害者が入院(通院も)した場合に、被害者の家族や、職業付添人(要は、お金を払って付き添ってくれる業者、外部の者)が被害者に付添った場合にでる支出のことです。
例えば、家族であれば、自分の仕事を休んで付添う場合、給料分の損害が発生するでしょう。第三者にお願いする場合は、その費用がかかるでしょう。

これも、同じようなキーワードになりますが、入院付添費は、被害者が治療のために入院した場合、入院中に付添いの必要性があり、実際に付添いがされた場合に、相当な限度で認められるものです。

どういう場合に必要かというと、わかりやすい例は、幼い子です。入院しておけば付添う必要はないとも思えますが、幼い子が一人で身の回りの事をするのは難しいので、親が付添そう必要があると言えます。
他には、高次脳機能障害で寝たきり(いわゆる植物状態)の場合は、介助が必要でしょう。

判例でも、そのような観点で、認められています。

入院付添費の具体的な金額については、近親者付添人の場合には1日6500円が認められます。
また、職業付添人の場合には実費全額とされています。

結局は、ここでも、必要性と相当性というキーワードが重要です。

休業損害

働いている方は、入院をしたら、仕事を休まなくてはなりません。
休業損害とは、このように、事故に遭った被害者が休業した場合の補償です。

金額は、実際に休業により得られなかった金額となります。会社員であれば、収入資料や休業損害証明書を作成してもらい立証します。

主婦の場合は、特別な計算があるので、こちらをご覧ください。

主婦が交通事故でむちうちになった場合に請求できるお金

入通院慰謝料

入院期間に応じて、入院慰謝料を請求できます。
正しい金額は、「赤本別表Ⅰ」という資料を参考にすればわかります。まとめ記事を書きましたので、ご参照ください。

交通事故の慰謝料金額

入院して後遺障害が残ったケースについて

入院して後遺障害が残ったケースについて

入院をして、その後リハビリや経過観察等でしばらく通院するかと思います。
それでも、後遺症が残るケースも多いです。その場合に、どのような補償があるのでしょうか。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料

後遺障害(後遺症)とは治療しても完治せず、「症状固定」(治療してもこれ以上は状態が変わらない段階)の段階で体に不具合が残ることをいいます。
後遺障害には1級から14級まで等級があり、この等級によって損害賠償の額が大きく変わってきます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的苦痛に対する補償です。

認定された後遺障害等級によって、慰謝料額が変わります。

保険会社は、大抵は、【自賠責基準】に近い金額で慰謝料額を提示してきますが、弁護士が入ることにより、【裁判基準】での金額で交渉が可能です。

★慰謝料表

後遺障害等級 自賠責基準 裁判基準 労働能力喪失率
第1級 1,100万円 2,800万円 100/100
第2級 958万円 2,370万円 100/100
第3級 829万円 1,990万円 100/100
第4級 712万円 1,670万円 92/100
第5級 599万円 1,400万円 79/100
第6級 498万円 1,180万円 67/100
第7級 409万円 1,000万円 56/100
第8級 324万円 830万円 45/100
第9級 245万円 690万円 35/100
第10級 187万円 550万円 27/100
第11級 135万円 420万円 20/100
第12級 93万円 290万円 14/100
第13級 57万円 180万円 9/100
第14級 32万円 110万円 5/100

逸失利益

将来得られるはずだったが、後遺障害のために得られなくなってしまった収入のことを「後遺障害逸失利益」といいます。

専門用語で「得べかりし利益(うべかりし利益)」とも言います。

逸失利益は、基本的には1年あたりの基礎収入に、後遺障害によって労働能力を失ってしまうことになってしまうであろう期間(労働能力喪失期間。)と、労働能力喪失率(後遺障害によって労働能力が減った分)を乗じて算定することになります。

ただし、将来もらえる金額を、一括してもらう事になるので、「中間利息」というものを控除する事になります。

中間利息の控除は、一般的にはライプニッツ式という方式で計算されます。

まとめると、後遺障害事故における逸失利益は以下の計算式によって算定されます。

■後遺障害逸失利益

= 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

・基礎収入     ⇒ 事故にあった方の事故時の収入です。
・労働能力喪失率  ⇒ 後遺障害によりどの程度労働ができなくなるかの率です。
            表により大体定型化されています。
・労働能力喪失期間 ⇒ 症状固定の日から67歳までとされています。
・ライプニッツ係数 ⇒ 表にまとまっており、ほぼ定型化されています。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリット

入院した場合も、休業損害、慰謝料、後遺障害等で保険会社と争いになることがほとんどです。
弁護士に依頼をすることによって、これらの交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。
また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。
こうした事がメリットになります。弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用もでますので、まずは相談すると良いでしょう。

ご相談 ご質問
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。入院中でお悩みの方や、被害者のご家族の方に適切なアドバイスもできるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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