弁護士 相川 一ゑ



「権利」として認められるべきものは、日々進化し、移ろいゆくものだということをご存知でしょうか。
実は、「○○権」として法律で明確に書かれているものよりも、「○○権」という名称はなくとも、裁判所で侵害してはいけないとして損害賠償等の対象となるべき権利はたくさんあると思われます。

つい先日、当地の裁判所でも、 インターネット検索サイトの検索結果から、自分の逮捕に関する記事の削除を求めた仮処分申立事件において、「過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」として削除を認める判断された事案がありました。
上記の仮処分申立事件は、削除を求められた側が異議を申し立てているため、確定はしておりませんし、「忘れられる権利」はまだ確立した権利とまでは言えません。
しかし、男性と女性とが平等に扱われるべきという両性の平等権も、戦前の日本はなかったものといえますし、プライバシー権や肖像権といった権利も、近代になるまで確立された権利ではありませんでした。「忘れられる権利」というものは、やはり現代になって初めて想定ができるタイプの権利といえるかもしれません。
先日の「忘れられる権利」を認めた事件のように、これからも権利として保護されるべき対象というものは、今後も複雑化・多様化していくのでしょう。