自宅に押しかけられた、SNSで晒された 不倫慰謝料の相手方による「行き過ぎた制裁」への対処法――弁護士が解説
【この記事のポイント】
不倫の事実が発覚した後、相手方の配偶者が自宅に押しかけてくる、SNSに実名や写真を投稿される、親や近所の人に言いふらされる――。慰謝料を請求される立場にあるからといって、こうした行為まで我慢しなければならないわけではありません。行き過ぎた制裁は、名誉毀損やプライバシー侵害、場合によっては住居侵入や脅迫などに当たり得る違法な行為です。本記事では、どのような行為が問題となり得るのか、被害を受けたときにどう対処すべきか、そして慰謝料の交渉にどう影響するのかを、請求された側の視点から解説します。

1. 請求される立場でも、何をされても我慢すべきではない

1. 請求される立場でも、何をされても我慢すべきではない

不倫をしたことで、相手方の配偶者を深く傷つけてしまった。その負い目から、相手方が何をしてきても「自分が悪いのだから仕方がない」と耐えてしまう方がいます。しかし、法的に見れば、あなたが負う責任は、あくまで不貞行為によって生じた損害を適正な範囲で賠償することです。相手方が私的な制裁として、あなたの生活や名誉を一方的に傷つけることまで許されているわけではありません。

日本の法律は、自分の権利を実現するために、法の手続によらず実力で相手に制裁を加えること(自力救済)を原則として認めていません。慰謝料を求めるのであれば、話し合いや裁判という正当な手続によるべきであり、自宅への押しかけやインターネットでの晒し上げは、その範囲を超えた行為です。

2. 問題となり得る行為と、関係する法律

2. 問題となり得る行為と、関係する法律

相手方の行為が、次のような形で行き過ぎている場合、民事上の不法行為(損害賠償の対象)となるだけでなく、刑事上の犯罪に当たる可能性もあります。

相手方の行為問題となり得る法律
自宅に押しかけて居座る、退去を求めても帰らない住居侵入罪・不退去罪(刑法130条)
SNSや掲示板に、実名や写真とともに不倫の事実を投稿する名誉毀損罪(刑法230条)、名誉毀損・プライバシー侵害・肖像権侵害による不法行為(民法709条・710条)
侮辱的な言葉を公然と書き込む侮辱罪(刑法231条)、不法行為
近所や親族に言いふらす、ビラをまく名誉毀損、プライバシー侵害
「払わなければ家族や職場にばらす」と要求する脅迫罪(刑法222条)・強要罪(刑法223条)・恐喝罪(刑法249条)
職場に何度も電話をかける、押しかける業務妨害罪(刑法233条・234条)、名誉毀損

なお、職場への暴露については、当サイトの別コラムでも詳しく解説しています。本記事では、自宅への押しかけやインターネット上の晒し、家族や近隣への暴露を中心に取り上げます。

3. 「事実」であっても名誉毀損になる

3. 「事実」であっても名誉毀損になる

相手方からは、「本当のことを言っているだけだ」と反論されることがあります。しかし、名誉毀損は、公然と事実を摘示して人の社会的評価を低下させることで成立し、摘示した事実が真実かどうかを問わないのが原則です(刑法230条1項)。

真実であることを理由に責任を免れるのは、その事実が公共の利害に関するもので、目的がもっぱら公益を図ることにあり、かつ真実であることが証明された場合などに限られます(刑法230条の2)。一般の私人の不倫は、通常、公共の利害に関する事実とはいえず、それをSNSなどで不特定多数に向けて公表することは、名誉毀損に当たる可能性が高いといえます。

【重要】インターネットへの投稿は、消えにくい
一度インターネットに投稿された情報は、拡散・保存され、完全に消し去ることが難しくなります。被害に気づいたら、できるだけ早く対応することが大切です。

◆ 家族や親族への暴露はどうか

SNSのような不特定多数への公表ではなく、あなたの親や配偶者、親族など特定の人に不倫の事実を伝えられた場合はどうでしょうか。名誉毀損は「公然と」事実を摘示することが要件とされていますが、判例は、特定の少数の人に伝えた場合でも、そこから不特定多数の人に広まっていく可能性があるときには、公然性が認められ得るという考え方をとっています。また、名誉毀損に当たらない場合でも、私生活上の事実をみだりに明かされない利益(プライバシー)の侵害として問題になる余地があります。どこまでが許され、どこからが違法になるかは、伝えた相手や方法、目的によって変わりますので、具体的な状況を記録したうえで専門家に相談してください。

4. 被害を受けたときに、まずすべきこと

4. 被害を受けたときに、まずすべきこと

◆ ① 記録を残す

インターネット上の投稿は、投稿の内容、URL、投稿日時、アカウント名がわかる形でスクリーンショットを保存してください。自宅への押しかけは、日時や言動を記録し、可能であれば録音や録画、インターホンの映像を保存します。これらは、警察への相談や法的手続の際に不可欠な証拠になります。

◆ ② 身の安全が脅かされるときは警察へ

自宅に押しかけられて帰らない、危害を加えられるおそれがあるといった緊急の場合は、ためらわずに110番通報してください。緊急ではないものの継続的な被害に悩んでいる場合は、警察の相談窓口(#9110)に相談することもできます。

◆ ③ やり返さない

つらい思いをしているときほど、反論の投稿をしたり、相手方に直接抗議したりしたくなるかもしれません。しかし、感情的な応酬は、こちらが加害者として責任を問われる事態を招きかねません。対応は、記録を残したうえで、法的な手続に委ねることが大切です。

5. こちらからとれる法的な手段

5. こちらからとれる法的な手段
手段内容
投稿の削除請求SNSの運営会社や掲示板の管理者に対し、名誉毀損やプライバシー侵害を理由に投稿の削除を求める
発信者情報開示請求匿名で投稿されている場合、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づき、投稿者の特定を求める
損害賠償請求名誉毀損やプライバシー侵害によって受けた精神的苦痛について、慰謝料を請求する。名誉を回復するための措置を求めることもできる(民法723条)
仮処分自宅への押しかけや面談の強要が繰り返される場合、裁判所に対して、接近や面談の強要を禁止する仮処分を申し立てることが考えられる
刑事告訴名誉毀損罪や脅迫罪などに当たる場合、警察に告訴することを検討する

6. 慰謝料の交渉への影響

6. 慰謝料の交渉への影響

相手方の行き過ぎた行為は、慰謝料の交渉にも影響します。あなたは不貞行為について慰謝料を支払う立場にある一方で、相手方の名誉毀損やプライバシー侵害については、逆に損害賠償を求めることができる立場にもなり得るからです。

実際の交渉では、相手方の違法な行為を指摘することで、相手方の請求額を見直させる材料になることがあります。また、示談をまとめる際には、支払額だけでなく、今後の行動についての約束を盛り込むことが重要です。

  • すでに行われた投稿の削除と、今後の投稿・拡散をしないことの約束
  • 自宅や職場への訪問・連絡をしないことの約束(接触禁止を双方向で定める)
  • 不倫の事実を第三者に口外しないことの約束(口外禁止条項)
  • 約束に違反した場合の取り決め

これらを示談書に明記しておくことで、慰謝料を支払った後も制裁が続くという事態を防ぐことができます。支払いだけを先に済ませ、こうした約束を取り付けないまま終わらせてしまうことは避けるべきです。

7. 弁護士を窓口にすることの効果

7. 弁護士を窓口にすることの効果

相手方の行為が過激になっているときほど、当事者同士で直接やり取りすることは危険です。弁護士が代理人となり、相手方に受任通知を送ると、以後の連絡は弁護士を通じて行うよう求めることになります。これにより、自宅や職場に直接連絡が来る状況を止められることが多く、精神的な負担は大きく軽減されます。

また、弁護士が関与することで、相手方の行為のどこが違法なのかを法的に整理し、削除請求や損害賠償請求といった対抗手段と、慰謝料の交渉とを組み合わせて、全体として適正な解決を目指すことができます。

受任通知を送った後も、相手方が本人に直接連絡してきたり、行き過ぎた行為を続けたりする場合には、そのこと自体が交渉や裁判において相手方に不利な事情として評価され得ます。記録を残し続けることが大切です。

8. まとめ――責任を果たすことと、不当な制裁を受けることは別

8. まとめ――責任を果たすことと、不当な制裁を受けることは別

不倫によって相手方を傷つけたことへの責任は、適正な慰謝料の支払いという形で果たすべきものです。しかし、それは、自宅に押しかけられたり、インターネットで晒されたり、家族や近所に言いふらされたりすることまで受け入れなければならない、という意味ではありません。行き過ぎた制裁は違法となり得る行為であり、あなたにも自分の生活と名誉を守る権利があります。記録を残し、やり返さず、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ
私たちは、開所以来35年以上、地域の皆様の法律問題に一貫して寄り添って参りました。慰謝料を請求されてお困りの方が、冷静に、そして適切に対応できるよう、法的な専門知識と経験を活かして全面的にサポートいたします。あなたの不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

【出典・参照条文】

・刑法第130条(住居侵入等)・第222条(脅迫)・第223条(強要)・第230条(名誉毀損)・第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)・第231条(侮辱)・第233条・第234条(業務妨害)・第249条(恐喝)
・民法第709条・第710条(不法行為・財産以外の損害の賠償)・第723条(名誉毀損における原状回復)
・特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法。旧プロバイダ責任制限法)
・(注)本記事は一般的な解説であり、個別の事案における判断は事情により異なります。身の危険を感じる場合は、ためらわず110番通報してください。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 時田 剛志

不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成27年12月登録後、不貞行為を原因とする慰謝料請求案件を多数担当。請求する側・される側のいずれの立場からも対応が可能で、証拠収集の方針から示談交渉・調停・訴訟まで一貫してサポート。力強い交渉と柔軟な解決策を武器にしており、離婚問題とも連携した一体的な解決を得意とし、依頼者の精神的負担の軽減にも配慮した対応を心がけている。