離婚する際に自宅を夫婦の共有名義にしたままにしておくことのリスクや財産分与の方法について弁護士が解説します

夫婦でマイホームを購入する際、お互いに資金を出し合ったり、ペアローンを組んだりして「自宅不動産を夫婦の共有名義」に設定するケースは少なくありません。

しかし、夫婦関係が破綻し離婚を迎えた際、自宅の売却手続きの複雑さや住宅ローンの残債問題、あるいは「子どもの生活環境を変えたくない」といった理由から、名義変更や売却を行わず「とりあえず自宅を共有名義のままにして離婚する」という選択をしてしまう方がいらっしゃいます。

結論から申し上げますと、自宅を共有名義のまま放置して離婚することは、将来的に極めて深刻な法的・金銭的トラブルを引き起こす『非常に危険な選択』です。

本コラムでは、自宅を共有名義のまま離婚することに伴う具体的なリスクをはじめ、将来の紛争を防ぎ安全に共有状態を解消するための方法について、弁護士の視点から分かりやすく徹底解説いたします。

離婚時に自宅を共有名義のままにしてしまう主な原因

離婚時に自宅を共有名義のままにしてしまう主な原因

まず前提として、離婚時に自宅が共有名義のまま放置されてしまう典型的な背景について整理しておきましょう。

売却しても住宅ローンを完済できない(オーバーローン状態)

 不動産の査定額よりも住宅ローンの残債が多い「オーバーローン」の場合、売却時に自己資金で差額を補填しなければ売却できません。その資金が準備できず、売るに売れない状況に陥るケースです。

「子どもを今の学校に通わせ続けたい」という思い

子どもの生活環境を変えないため、妻と子どもがそのまま自宅に住み続け、夫(名義人・ローン主債務者)が家を出て生活費やローンを負担するという形をとるケースです。

名義変更(単独所有への変更)やローンの借り換えが難しい

不動産の名義を共有からどちらか一方の「単独名義」に変更しようとしても、住宅ローンが残っている場合は金融機関の承諾が必要です。収入要件等の問題から金融機関が変更や借り換えを認めず、立ち往生してしまうケースです。

このように「当面の事情」を優先するあまり共有名義のまま離婚してしまうケースが多いのですが、時間の経過とともに事態は想像以上に悪化していきます。

自宅を共有名義のまま離婚する「5つの重大リスク」

自宅を共有名義のまま離婚する「5つの重大リスク」

離婚時には夫婦間で納得して「共有のまま」にしたつもりでも、離婚後に元配偶者との関係性や生活環境が変化することで、以下のような深刻なリスクが発生します。

リスク①:単独で売却・処分・活用が一切できなくなる

民法上、共有不動産全体を売却(処分)したり、大規模な改築を行ったり、賃貸物件として第三者に貸し出したりする等の共有物の「変更」を行うためには、共有者全員の同意が必要となります(民法251条)。

離婚から何年も経った後、「まとまった現金が必要になったので家を売りたい」「高齢になったので住み替えて自宅を売却したい」と考えても、元配偶者が反対すれば家を売却することは一切できません。

リスク②:元配偶者と連絡が途絶えると身動きが取れなくなる

離婚直後は連絡が取れていたとしても、数年〜数十年が経過するうちに元配偶者が転居して音信不通になったり、LINEや電話番号を変更されて連絡が取れなくなったりするリスクが常に付きまといます。

連絡が取れなくなると、建物の修繕手続き、固定資産税の負担割合の協議、売却の交渉など、不動産管理に必要な一切の手続きが停止し、不動産の価値が下落していくのをお手上げ状態で眺めることしかできなくなります。

リスク③:将来「相続」が発生し、見知らぬ再婚相手や子どもと権利が複雑化する

共有名義のまま放置することの最も恐ろしいリスクが「時間の経過による権利関係の複雑化・肥大化」です。

もし元配偶者が亡くなった場合、元配偶者が所有していた共有持分(例:2分の1)は、元配偶者の遺族(再婚相手や、再婚相手との間に生まれた子ども、両親・兄弟等)へと相続されます。

その結果、一度も会ったこともない「元配偶者の再婚相手やその子供」と自宅を共同所有するという異様な状態が発生します。こうなると、面識のない第三者と共有状態の解消交渉を行わねばならず、解決へのハードルは極めて高くなります。

リスク④:住宅ローンの滞納により競売にかかり突然追い出される

共有名義の自宅に住宅ローンが残っており、家を出た元夫がローンの返済を継続する約束をしていたケースで頻発するトラブルです。

離婚後に元夫が再婚して新しい家族ができたり、勤務先の倒産・傷病等で収入が減少したりした場合、ローンの返済が滞るようになります。住宅ローンが滞納されると、金融機関は裁判所を通じて不動産の「競売(強制競売)」手続きを進めます。

その結果、自宅に住み続けていた元妻や子どもは、ある日突然、裁判所や競売落札者から立ち退きを迫られ、家を追い出されてしまうという惨劇が起こり得ます。

リスク⑤:共有物分割請求訴訟を提起される可能性がある

元配偶者から共有状態の解消を求める共有物分割請求訴訟を提起されるおそれがあります。訴訟が提起されると裁判所は以下のいずれかの方法で共有状態を解消するよう判断します。

  • 現物分割

 不動産を物理体に分割する方法です。そのため建物の場合はできません。

  • 代償分割

 一方が他方の持分を買い取る方法です。

  • 換価分割

 不動産を競売しその売却代金を分ける方法です。

離婚時に共有名義をすっきり解消するための2つの解決策

離婚時に共有名義をすっきり解消するための3つの解決策

離婚後に重大なリスクを残さないためには、「離婚手続きと同時に、自宅の共有名義状態を完全に解消しておくこと」が鉄則です。代表的な解決手法は以下の2つです。

解決策①:自宅を第三者に売却し、売却益(または残債)を分与する

最も確実かつ後腐れのない解消法は、自宅不動産を売却して現金化(清算)することです。

  • アンダーローン(売却額 > ローン残債)の場合 自宅を売却してローンを全額完済し、仲介手数料等の経費を差し引いた手元に残る現金(売却益)を、原則2分の1ずつ夫婦で分け合います。金銭関係が完全にクリアになり、将来のトラブルリスクはゼロになります。
  • オーバーローン(売却額 < ローン残債)の場合 売却代金だけではローンを完済できません。この場合、自己資金(他口座の預貯金や手持ち金)を充当してローンを完済するか、金融機関の同意を得て「任意売却」を行い、残った債務の返済計画を立てる必要があります。

解決策②:どちらか一方が自宅を取得し、相手の「持分」を買い取る(単独所有化)

どちらか一方(例:妻)がそのまま自宅に住み続けたい場合、相手(夫)が保有している共有持分を買い取り、名義を自分単独に変更する方法です。

代償金の支払い

自宅の査定評価額から住宅ローン残債を引いた「アンダーローン」の状態であれば、妻は夫の持分相当額(例:共有持分2分の1に相当する金額)を「代償金」として夫に現金で支払うことで、名義を単独所有に変更します。

住宅ローンの単独化・借り換え

妻が自宅とローンを引き継ぐ場合、妻自身の名義で新たに住宅ローンを組み直し(借り換え)、その資金で既存の夫名義のローンを一括返済する必要があります。妻側に一定以上の安定した収入があることが前提条件となります。

既に共有名義のまま離婚してしまった場合の対処法

既に共有名義のまま離婚してしまった場合の対処法

「既に共有名義のまま離婚してしまい、トラブルになりそうで困っている」という方も諦める必要はありません。法的な手続きを通じて共有状態を強制的に解消することが可能です。

弁護士を通じた「共有持分買い取り・売却」の協議・交渉

まずは弁護士が代理人となり、元配偶者に対して共有状態の解消(買い取り、あるいは共同での任意売却)を求める協議を開始します。当事者同士では感情的になって無視されていたケースでも、弁護士からの受任通知が届くことで話し合いのテーブルにつくケースは多々あります。

裁判所へ「共有物分割請求訴訟」を提起する

元配偶者が話し合いに応じない場合、あるいは行方不明で連絡が取れない場合は、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を起こすことができます。

共有物分割請求とは、民法に基づき、裁判所の判決によって不動産の共有状態を強制的に清算する手続きです。裁判所は主に以下のいずれかの方法で共有関係の解消を命じます。

相手がいくら拒否していても、裁判手続き(共有物分割請求訴訟)を進めれば、最終的には「競売による不当な安値売却を避けるため、協議による売却に応じる」といった合理的な和解へ誘導することが可能です。

まとめ:自宅の共有名義トラブルは離婚問題に強い弁護士へご相談ください

まとめ:自宅の共有名義トラブルは離婚問題に強い弁護士へご相談ください

自宅不動産は、家庭の資産の中で最も高額であり、かつ権利関係や住宅ローンが絡むため、離婚時に最もトラブルになりやすい財産です。

「相手と話し合うのが面倒だから」「子どものためにとりあえずそのまま」という理由で共有名義のまま離婚してしまうと、数年後・数十年後にあなたやあなたの子どもが甚大な損害や金銭的被害を受けることになりかねません。

  • 現在の自宅の査定額やローン残債を踏まえ、どのような分与方法が最も得か知りたい
  • 連帯保証人や共有名義から自分を安全に外したい
  • 離婚後、共有名義のまま放置してしまった自宅を売却・清算したい

当事務所では、豊富な実績とノウハウを持つ離婚専門チームの弁護士が、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

離婚前の早期ご相談はもちろん、離婚後の共有名義トラブル等財産分与についてお悩みの方も、取り返しのつかない事態になる前に、まずはお気軽に当事務所までご相談ください

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 椎名慧

離婚・不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和7年登録後、離婚案件を中心に多数の家事事件に対応。依頼者の心情に寄り添った丁寧なヒアリングと、迅速な紛争解決の実務に精通している。夫婦間で激しい感情の対立がある状況において、粘り強い交渉力を発揮し、円満な解決に向けた法的支援に注力。若手ならではの機動力と最新の判例知識を武器に、依頼者の最善の利益確保に邁進している。