交通事故で胸骨を骨折したら?エアバッグ・正面衝突による合併症・後遺障害と慰謝料を弁護士が解説

本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。

正面衝突やエアバッグの展開による強い衝撃を受けた際、胸の中央に激痛が走った――そのような状況で病院を受診し、胸骨(きょうこつ)骨折と診断されたケースがあります。胸骨は肋骨・鎖骨と連結し、心臓や肺を守る「胸郭(きょうかく)」の前壁を形成している重要な骨です。

胸骨骨折は外見からは判断しにくく、初診時に見落とされることもあります。また、骨折そのものだけでなく、心臓挫傷・気胸・血胸など周辺臓器への損傷を伴うリスクがある点が、他の骨折と大きく異なる特徴です。長期にわたる慢性的な胸部痛が残ることも珍しくなく、後遺障害の申請が問題になる場合もあります。

本記事では、胸骨骨折の受傷メカニズム・合併症のリスク・後遺障害等級・慰謝料の考え方まで、交通事故専門の弁護士が解説します。

胸骨骨折とは―受傷のしくみと合併症リスク

胸骨骨折とは―受傷のしくみと合併症リスク

胸骨の構造と役割

胸骨は胸の中央にある縦長の扁平骨(へんぺいこつ)です。上方の「胸骨柄(きょうこつへい)」、中央の「胸骨体(きょうこつたい)」、下方の「剣状突起(けんじょうとっき)」という3つの部分で構成されています。両側に肋骨が連結し、肩の鎖骨とも連結することで、胸郭(肺・心臓を囲む骨の籠)の前壁を形成しています。

この位置関係から、胸骨は心臓・肺・大血管という生命に直結する臓器のすぐ前に位置しています。そのため、胸骨が骨折するほどの外力が加わった場合、これらの臓器への損傷が生じるリスクがあります。

交通事故での受傷メカニズム

  • 正面衝突でハンドルやダッシュボードに胸部を強打した場合
  • エアバッグが展開した際の衝撃で胸部に強い圧力が加わった場合
  • シートベルトによる制動で強い圧迫が胸骨に加わった場合
  • 歩行者が車のボンネットやグリルに胸部を直撃された場合

胸骨骨折はある程度の衝撃力を要するため、高速での衝突や大型車両との事故など、エネルギーの大きな交通事故で発生することが多いです。また、骨がもろくなっている高齢者では相対的に小さな衝撃でも骨折が起きることがあります。

胸骨骨折で注意すべき合併症

胸骨骨折において特に重要なのは、骨折そのものよりも周辺臓器への損傷です。

心臓挫傷(しんぞうざしょう): 胸骨骨折の背面には心臓があるため、同様の外力が心筋に直接打撃を与えることがあります。心電図の変化(不整脈など)が生じる可能性があり、事故直後は心電図モニタリングが必要です。重篤な場合は心タンポナーデ(心嚢への血液貯留)に至ることもあります。

気胸・血胸: 肋骨や胸骨の骨折端が胸腔内に刺さったり、外力により肺・胸腔が損傷すると、肺に空気が漏れる気胸や血液が溜まる血胸が生じることがあります。呼吸困難・胸痛などの症状が現れます。

大血管損傷: 大動脈や肺動脈などの大きな血管が損傷を受けると、大量出血に至る危険があります。高エネルギー外傷の際は必ず確認が必要な合併症です。

肋間神経痛: 骨折部または変形癒合部が肋間神経を圧迫・刺激することで、慢性的な胸部痛・肋間神経痛が残ることがあります。後遺障害の主な原因となります。

治療の流れ

胸骨骨折の多くは保存療法(安静・鎮痛・呼吸管理)で対応されます。骨折部の安定性が保たれていれば、ギプスは使用せず、体の動きを制限しながら自然癒合を待ちます。骨癒合には通常6〜8週間かかりますが、この間は深呼吸や咳・くしゃみが激痛となるため、日常生活に大きな支障をきたします。骨折のずれが大きい場合や合併症が重篤な場合は手術が選択されます。

胸骨骨折で認定されうる後遺障害等級

胸骨骨折で認定されうる後遺障害等級

変形障害

胸骨骨折が変形したまま癒合した場合や、骨折部が変形癒合して胸部に明らかな変形(陥凹・隆起)が残った場合に問題になります。

等級認定基準後遺障害慰謝料(弁護士基準)
12級5号鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの290万円

12級5号の認定には、裸になったときに外見上変形が明らかにわかる状態であることが必要です。レントゲンで確認できる程度では足りない点に注意が必要です。

神経症状(慢性的な胸部痛・肋間神経痛)

等級認定基準後遺障害慰謝料(弁護士基準)
12級13号局部に頑固な神経症状(画像等で原因が証明できる)290万円
14級9号局部に神経症状(医学的に説明できる)110万円

胸骨骨折後に慢性的な胸部痛が残る場合、CT・MRIで骨折部の変形・癒合不全・骨片が確認できれば12級13号の認定が期待できます。画像で確認できない場合でも、治療経過・症状の一貫性・呼吸機能検査などで医学的説明ができれば14級9号が認定されます。

呼吸器機能障害(肺への損傷を伴う場合)

気胸・血胸・肺挫傷など呼吸器への損傷が加わり、治療後も肺機能が低下している場合には、「胸腹部臓器の機能障害」として別途の等級が問題になることがあります。呼吸機能検査(スパイロメトリー)の数値が基準値を下回る程度に応じて7〜13級の等級が設定されています。

慰謝料の3つの算定基準

慰謝料の3つの算定基準

自賠責基準:強制加入保険である自賠責保険の補償限度に基づく、最低ラインの基準です。保険会社や被害者本人による直接請求の際に用いられます。

任意保険基準:相手方が加入する任意保険会社が独自に定める算定基準で、示談交渉では最初にこの水準が提示されることが一般的です。弁護士基準と比較するとかなり低い金額となります。

弁護士基準:「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)に基づく基準で、裁判所が採用する水準です。弁護士が代理して交渉・訴訟を行うことで、この基準での解決を目指すことができます。

入通院慰謝料の計算例

入通院慰謝料の計算例

胸骨骨折は骨折を伴う重傷に分類されるため、弁護士基準では骨折等重傷用の別表Ⅰ(下表参照)が適用されます。

計算例:入院2週間・通院3か月の場合

【自賠責基準】実治療日数50日 → 50×2=100日 < 総治療期間104日のため 100日採用
 4,300円 × 100日 = 430,000円(約43万円)

【弁護士基準・別表Ⅰ】入院半月・通院3か月:約95万円
(差額:95万円 − 43万円 ≒ 約52万円の差)

請求できる損害賠償の項目と逸失利益

請求できる損害賠償の項目と逸失利益
  • 治療関係費:治療費・入院費・通院交通費・ICU費用なども含む。
  • 休業損害:深呼吸が困難な状態では多くの労働が不能になるため、入院期間はもとより自宅療養期間も対象。
  • 入通院慰謝料:入院・通院を強いられた精神的苦痛への補償。
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害が認定された場合の補償。
  • 後遺障害逸失利益:後遺障害によって将来の収入が減少した場合の補償。

逸失利益の計算式

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

計算例:等級12級13号・年収500万円・50歳の場合

基礎収入:500万円
労働能力喪失率:14%(12級)
労働能力喪失期間:67歳-50歳=17年 → ライプニッツ係数 12.166
逸失利益 = 500万円 × 0.14 × 12.166 ≒ 約852万円

弁護士に相談すべき理由

弁護士に相談すべき理由

理由① 合併症の損害評価が複雑

胸骨骨折に心臓挫傷・気胸・血胸・肺挫傷などの合併症が加わる場合、損害の評価は複数の後遺障害が絡む複雑な問題になります。胸骨骨折の変形障害・神経症状と、呼吸器機能障害が併存する場合の等級の組み合わせ・相関関係は、専門的な判断が必要です。

理由② 「変形が外見上わかるか」の判断が重要

12級5号の変形障害は、「裸で見てわかる変形」が要件です。骨折後の変形が軽微で外見上わかりにくい場合でも、CT所見・3D-CT画像と臨床所見を組み合わせることで適切な主張ができることがあります。等級認定を有利に進めるためには、診断書の記載内容が重要です。

理由③ 慢性的な胸部痛の立証

胸骨骨折後の慢性的な胸部痛・肋間神経痛は、「骨が治れば終わり」と誤解されやすく、保険会社から治療の早期終了を促される場合があります。症状の一貫性・日常生活への影響を適切に主張し、症状固定後も正当な後遺障害等級の認定を目指すことが重要です。

理由④ 高エネルギー外傷での過失割合の争い

胸骨骨折が生じるような高エネルギーの交通事故では、事故態様や過失割合についても争いが生じやすいことがあります。事故状況の記録・ドライブレコーダー・実況見分調書などの証拠を早期に確保することも、弁護士のサポートが有用な場面の一つです。

弁護士費用特約の活用

弁護士費用特約の活用

【弁護士費用特約】 ご自身やご家族の加入する自動車保険・火災保険などに「弁護士費用特約」が付いている場合、交通事故での弁護士費用を保険会社が支払ってくれます。経済的な負担なく専門家のサポートを受けられる大切な特約です。

費用の上限は通常300万円で、多くの事案では自己負担ゼロで弁護士に依頼することが可能です。

  • 弁護士費用特約を使っても保険等級(保険料)は上がりません。
  • ご自身に過失がある場合でも利用できます。
  • 依頼する弁護士は被害者ご自身が自由に選べます。
  • ご家族の保険に付帯している場合も利用できることがあります。

まずはご自身・ご家族の保険証券をご確認ください。火災保険に付帯しているケースもあります。

まとめ:胸骨骨折は合併症と後遺症に注意を

まとめ:胸骨骨折は合併症と後遺症に注意を

胸骨骨折は一見地味な骨折に見えますが、心臓・肺に隣接した骨であるため、合併症のリスクと慢性的な後遺症の可能性を持つ骨折です。受傷直後の心電図モニタリング・画像検査による合併症評価と、症状固定後の後遺障害申請の両面で、適切な対応が求められます。

後遺障害等級の申請・保険会社との交渉でお困りの場合は、交通事故専門の弁護士へのご相談をお勧めします。

ご相談・ご質問

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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所(さいたま市大宮区)は、35年以上の歴史と埼玉県内トップクラスの陣容を誇ります。交通事故の専門チームが皆様の正当な賠償実現をサポートします。初回相談は無料、LINEでのご相談も歓迎です。

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また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 申 景秀

交通事故

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属。
獨協大学法科大学院を卒業し、司法試験を70番台という高順位で合格。札幌での司法修習を経て、現在は交通事故案件を中心に多数の損害賠償請求に対応している。後遺障害等級認定や保険会社との示談交渉を含む実務に精通し、緻密な法的思考に基づいた立証に注力。被害者の適正な賠償実現のため、専門知識を活かした迅速な解決を追求している。