アスベスト被害を受けたら受け取れるお金がある ~4つの給付金制度の全体像~

アスベスト(石綿)が原因の病気にかかった方、またはそのご家族が受け取れるお金があることをご存知でしょうか。

日本には、アスベスト被害者を救済するための給付金制度が4種類存在します。しかし、制度の存在を知らないまま申請をしていない方が非常に多いのが現状です。

このコラムでは、4つのアスベスト給付金制度の全体像を分かりやすく解説します。

アスベスト被害に対する4つの給付金制度とは

アスベスト被害に対する4つの給付金制度とは

制度の全体像

アスベスト被害に対する日本の給付金制度は、以下の4つに分類されます。

①労災保険(アスベストを原因とする業務上疾病として認定を受けるもの)

②特別遺族給付金制度(労災保険の時効が完成してしまった遺族のための制度)

③石綿健康被害救済制度(労災保険の対象にならない方向けの制度)

④建設アスベスト給付金制度(建設現場で働いていた方向けの制度)です。

これらの制度は、対象者・対象疾病・給付内容・申請先がそれぞれ異なります。また、複数の制度を同時に申請できる場合もあります。

制度① 労災保険 ~最も充実した給付が受けられる最重要制度~

制度① 労災保険 ~最も充実した給付が受けられる最重要制度~

労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中または通勤中に発生した傷病に対して、国が補償を行う制度です。

アスベストが原因の疾病についても「業務上疾病」として労災認定を受けることができます。

給付内容が最も充実しており、弁護士としては「労災保険を最優先に検討する」ことを強くお勧めしています。

対象者は、アスベストにさらされる業務に従事していた労働者および労災保険の特別加入者です。対象疾病は、中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水の5疾患です。

主な給付内容

療養補償給付(治療費)

アスベスト関連疾患の治療に要する費用が全額支給されます。指定医療機関での診察・検査・入院費用などが対象となります。

休業補償給付(休業中の生活費)

アスベスト関連疾患による療養のために働けなくなった期間について、給付基礎日額の80%(特別支給金20%を含む)が支給されます。

障害補償給付(後遺障害に対する補償)

症状固定後も障害が残存する場合、その程度に応じた年金または一時金が支給されます。障害等級は第1級から第14級まで分かれており、等級が高いほど多額の給付が受けられます。

遺族補償給付(死亡した場合の遺族への補償)

アスベスト関連疾患が原因で死亡した場合、遺族に対して遺族補償年金または遺族補償一時金が支給されます。また、葬祭料も支給されます。

消滅時効に注意

労災保険の遺族補償給付等には消滅時効があります。死亡翌日から5年が経過すると時効が完成してしまい、原則として給付請求ができなくなります。ただし、時効が完成してしまった場合の救済制度として「特別遺族給付金制度」が設けられています。

制度② 特別遺族給付金制度 ~時効が完成した遺族を救う制度~

制度② 特別遺族給付金制度 ~時効が完成した遺族を救う制度~

制度の概要

特別遺族給付金制度は、アスベスト関連疾患(中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水)を原因として死亡した労働者の遺族のうち、死亡の翌日から5年以上が経過したことにより労災保険の遺族補償給付の消滅時効が完成してしまった方を救済するための制度です。

「家族がアスベストの病気で亡くなったが、もう5年以上経ってしまった」という方に、ぜひ知っていただきたい制度です。

給付内容

特別遺族年金(遺族1人の場合には年間240万円)または特別遺族一時金(1,200万円)のいずれかが支給されます。認定基準は労災保険に準じます。

勤務先が廃業している場合、証拠が残っていない場合でも、弁護士のサポートにより申請に成功するケースがあります。

制度③ 石綿健康被害救済制度 ~職業ばく露でない方も対象に~

制度③ 石綿健康被害救済制度 ~職業ばく露でない方も対象に~

制度の概要と特徴

石綿健康被害救済制度は、労働者として職場でアスベストにさらされた方だけでなく、アスベスト工場の周辺住民や、アスベスト製品を製造・使用した家族(家庭内ばく露)など、職業上のばく露でない方も対象とする制度です。

環境省が所管しており、申請先は独立行政法人環境再生保全機構です。

対象疾病は中皮腫・原発性肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚の4疾患です(良性石綿胸水は対象外)。存命中(療養中)の場合、医療費の自己負担分・療養手当(月額103,870円)などが支給されます。

制度④ 建設アスベスト給付金制度 ~建設業従事者のための特別制度~

制度④ 建設アスベスト給付金制度 ~建設業従事者のための特別制度~

制度の概要

建設アスベスト給付金制度は、建設現場でアスベストにさらされた一定の業種の従事者・遺族に対して給付金を支給する制度です。

最高裁判所による国の責任を認める判決を受けて設立された制度であり、1972年(昭和47年)10月から2004年(平成16年)9月までの間に一定の屋内作業場における建設業務に従事していた方が対象となります。

対象業種は非常に幅広く、大工・左官・鉄骨工・溶接工・配管工・電工・内装工・解体工など多くの業種が含まれます。給付金額は病態に応じて最大1,300万円です。

4つの制度の使い分けポイント

4つの制度の使い分けポイント

まず労災保険を検討する

4つの制度のうち、給付内容が最も充実しているのは労災保険です。アスベストにさらされる業務に従事していた労働者であれば、まず労災保険への申請を検討することをお勧めします。

「勤務先が労災保険に加入していなかった」という場合でも、実際には申請できるケースが多々あります。建設現場で働いていた方は労災保険と並行して建設アスベスト給付金制度への申請も検討します。職業ばく露でない場合は石綿健康被害救済制度へ、時効が完成した遺族は特別遺族給付金制度への申請を検討します。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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