
「アスベストが原因かもしれない病気と診断された」「家族がアスベスト関連の病気で亡くなった」──そのような方が最初に悩むのが「どこに何を申請すればいいのか全くわからない」という問題ではないでしょうか。
アスベスト給付金の申請手続きは、制度ごとに申請先・必要書類・手続きの流れが異なり、非常に複雑です。このコラムでは、アスベスト給付金申請の実務的な流れを弁護士の視点から分かりやすく解説します。
申請を始める前に確認すべきこと

まず「どの制度が使えるか」を整理する
アスベスト給付金制度には4種類(①労災保険、②特別遺族給付金制度、③石綿健康被害救済制度、④建設アスベスト給付金制度)があります。申請を始める前に、まず自分(または亡くなった家族)がどの制度の対象になるかを整理することが重要です。
この判断を誤ると、本来受け取れるはずの給付が受けられなかったり、手続きをやり直す必要が生じたりします。弁護士に相談すれば、最初の段階でこの整理を適切に行うことができます。
急いで申請を始めた方がいい理由
「特に急いでいないから、落ち着いてから考えよう」と思われる方もいらっしゃいますが、アスベスト給付金申請は早めに始めることを強くお勧めします。
第一に、申請後の審査だけでも最低6か月はかかります。第二に、治療中であれば、療養補償給付(治療費)や休業補償給付(休業中の生活費)を受けながら治療を継続することができますが、申請が遅れるほど受給できる期間が短くなります。第三に、遺族給付については死亡翌日から5年で時効が完成するという時効の問題があります。
申請の流れ(全体フロー)

ステップ1:弁護士への相談・受任
まず、アスベスト給付金申請に精通した弁護士に相談します。初回相談では、病名または死因(アスベスト関連疾患かどうか)・職歴(アスベストにさらされる業務に従事していたか)・ばく露期間・業種・職種・現在の状況(存命か死亡後か、医療記録の有無など)を確認します。
これらの情報をもとに、弁護士がどの制度が使えるかを判断し、申請の見通しを説明します。ご本人が亡くなっている場合は、ご遺族からこれらの情報をお聞きします。
ステップ2:医療記録の収集・分析
申請の核心は、アスベスト関連疾患であることの医学的立証と、業務によるばく露との因果関係の立証です。
そのために、まず医療記録(カルテ・レントゲン・CT画像・病理組織検査結果など)を収集します。医療記録の開示請求は、患者本人または代理人(弁護士)が医療機関に対して行います。
医療法により、医療機関は原則として診療録等の開示義務を負っています。収集した医療記録を分析し、アスベスト関連疾患の診断・病態・既往症・アスベストばく露との関連性などを確認します。必要に応じて、専門医に意見を求めることもあります。
ステップ3:ばく露状況の立証準備

業務によるアスベストばく露の事実を立証するための証拠を収集します。これが申請において最も重要かつ困難な作業の一つです。
勤務先への照会・証拠収集
元の勤務先が存続している場合は、在職期間・業種・職種・作業内容などに関する証明書の取得を試みます。
勤務先が廃業している場合でも、法務局の登記簿・ハローワークの記録・年金記録などから勤務の事実を立証できることがあります。
事業主証明が取得できない場合の対処
労災保険の申請書には「事業主証明」欄がありますが、勤務先が廃業していたり、事業主が証明を拒否したりする場合もあります。
このような場合も、事業主証明欄が取得できない旨の説明文書を添付して労働基準監督署に提出すれば、申請を受け付けてもらうことができます。「事業主証明が取れないから申請できない」ということはありません。
ご本人の供述・証人の確保
当時の作業内容・使用した材料・職場環境などについて、ご本人の陳述書を作成します。また、当時の同僚・上司などに証人として協力を求めることもあります。
ステップ4:申請書類の作成・提出
収集した証拠をもとに、申請書類を作成します。制度ごとに必要書類が異なります。労災保険の申請先は勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署です。
石綿健康被害救済制度の申請先は独立行政法人環境再生保全機構、建設アスベスト給付金制度の申請先は独立行政法人労働者健康安全機構(建設アスベスト給付金センター)です。
ステップ5:審査・照会への対応

申請書類の提出後、行政機関による審査が行われます。審査期間は制度によって異なりますが、最低でも6か月程度はかかります。場合によっては1年以上かかることもあります。
審査中に追加書類の提出を求められたり、担当者からの照会に対応したりする必要が生じることもあります。弁護士が依頼者に代わって対応することで、適切かつ迅速な対応が可能となります。
ステップ6:認定・不認定の通知と対応
審査の結果、「認定」または「不認定(棄却)」の通知が届きます。認定された場合は、給付金の支給手続きに移ります。不認定(棄却)となった場合でも、諦める必要はありません。不認定通知を受けてから一定期間内に審査請求(不服申立て)を行うことができます。
不認定となった理由を分析し、追加の証拠収集や医学的な反論を行うことで、審査請求が認められるケースもあります。
申請手続きで弁護士に依頼すべき理由

申請を自力で行うことの難しさ
アスベスト給付金の申請は行政への申請手続きですが、どの制度が使えるかの判断が複雑であること、医療記録の解析や医学的な立証には専門的な知識が必要であること、ばく露状況の立証のための証拠収集にも専門的なノウハウを要すること、申請書類の記載内容によって認定・不認定に影響することなど、実際には多くの困難が伴います。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼することで、制度選択・医療記録収集・ばく露立証・申請書作成・審査への対応・不認定時の不服申立てまで、一貫したサポートを受けることができます。「勤務先が廃業している」「医療記録が残っていない」「何十年も前の話で証拠がない」といった困難なケースでも、弁護士が様々な角度から証拠を収集し、認定につながるよう最大限の努力をすることができます。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





