「まさか自分が?」アスベスト被害の概要について

「昔、建設現場で働いていた」「工場でアスベストを扱ったことがある」「家族が昔の製造業に従事していた」──そんな記憶を持つ方やそのご家族の皆様に、ぜひ知っていただきたいことがあります。

アスベスト(石綿)は、吸い込んでからすぐに発症するものではありません。最も恐ろしい特徴は、「20年から50年という長い潜伏期間の後に病気が発症する」という点です。1970年代から1990年代に大量に使用されたアスベストが、今まさに被害者を生み続けており、専門家は2050年代頃まで継続的に被害者が存在すると予想しています。このコラムでは、アスベスト被害の実態と、被害者が受け取れる給付金制度の概要について解説します。

アスベストとは何か ~かつて「奇跡の鉱物」と呼ばれた物質の正体~

アスベストとは何か ~かつて「奇跡の鉱物」と呼ばれた物質の正体~

アスベストの特性と日本での大量使用

アスベスト(石綿)とは、天然に産出する繊維状の鉱物の総称です。耐熱性・耐久性・絶縁性に優れ、加工しやすく安価であることから、かつては「奇跡の鉱物」と称賛されました。

日本では高度経済成長期(昭和30年代)から大量にアスベストが輸入・使用され始め、1970年代から1990年代がピークでした。建設現場での断熱材・防音材・耐火被覆材としての吹き付け作業、工場における保温材・絶縁材、造船所での断熱材利用など、実に幅広い産業で使われてきました。

日本は「アスベスト輸入大国」であり、アスベスト関連死者数が世界第3位の年2万人超とされています。

これは交通事故による死亡者数(近時は3,000人前後)と比較しても実に6倍以上に上る数字です。それほど深刻な被害が今も進行し続けているのです。

「20年から50年」という長すぎる潜伏期間

アスベストが引き起こす病気の最大の特徴は、その長い潜伏期間にあります。アスベストの微細な繊維を肺に吸い込んでも、すぐには発症しません。

吸入から発病まで、短くて15年、長いものでは50年以上かかることもあります。一般的には20年から40年程度といわれています。

これが意味することは非常に重要です。1970年代から1980年代にかけてアスベストを使用していた現場で働いていた方が、現在(2020年代)に病気を発症するのはごく自然なことなのです。

「あの頃の仕事のことなんて忘れていた」「まさか今になって関係があるとは思わなかった」という方が多いのも無理はありません。

代表的なアスベスト関連疾患である中皮腫による死亡者数は、2019年から2022年にかけて年間1,500人前後で推移しており、2030年頃にはピークを迎え3,000人ほどに達すると見込まれています。今まさに被害が拡大しているのです。

「今さら」と思わないでください

アスベスト被害の相談に来られる方の中には、「何十年も前のことだし、証拠もない」「勤務先が廃業してしまっている」「家族はもう亡くなってしまった」と諦めて来られる方が非常に多くいらっしゃいます。

しかし、アスベスト被害に対する給付金制度は、そうした「今さら」という方こそを救うために設計されています。勤務先が廃業していても、ご本人が既に亡くなっていても、適切な手続きによって給付金を受け取れる制度が存在します。重要なのは、「諦めずに専門家に相談すること」です。

アスベスト被害が引き起こす疾患 ~どんな病気が対象になるのか?~

アスベスト被害が引き起こす疾患 ~どんな病気が対象になるのか?~

給付金対象となる5つの主な疾患

アスベスト給付金の対象となる疾患は大きく5つあります。

①中皮腫──肺を取り囲む胸膜・腹膜・心膜などにできる悪性腫瘍で、アスベストとの因果関係が非常に高い疾患です。

②石綿肺──アスベストを大量に吸入したことで肺が線維化する病気で、じん肺の一種です。

③原発性肺がん──喫煙など他の原因でも発生しますが、一定のばく露歴があれば職業性肺がんとして認定されます。

④びまん性胸膜肥厚──胸膜が広範囲にわたって肥厚し、呼吸機能が低下する疾患です。

⑤良性石綿胸水──アスベストが原因で胸腔に液体が溜まる状態で、「良性」とは悪性腫瘍ではないという意味であり予後が良好であることを意味しません。

「この病名ではないから対象外」と思わないでください

5大疾患と診断されていなくても、申請を諦めるべきではありません。

間質性肺炎・肺線維症(IPF)・胸膜炎・円形無気肺・肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・「中皮腫疑い」といった病名であっても、アスベストとの因果関係が立証できれば給付金の対象となりうるケースがあります。

医師から「アスベストとは関係ない」と言われた場合でも、専門的な観点から再評価することで認定につながるケースもあります。「自分の病気は対象外だ」と自己判断する前に、ぜひ弁護士にご相談ください。

なぜ給付金申請件数が少ないのか ~多くの被害者が救済されていない現実~

なぜ給付金申請件数が少ないのか ~多くの被害者が救済されていない現実~

年2万人超の関連死者数に対して申請件数が低調

アスベスト被害者の規模は非常に大きいにもかかわらず、実際の給付金申請件数は驚くほど少ないのが現状です。

令和6年度のアスベスト被害に係る労災保険(特別遺族給付含む)の請求件数は1,978件、石綿健康被害救済制度の請求件数は1,337件にとどまっています。年間2万人超の関連死者数と比較すると、ごく一部の方しか申請に至っていないことが分かります。

なぜこれほど申請件数が少ないのでしょうか。その理由として、①被害者・遺族が給付金制度の存在を知らない、②「自分が対象とは思わなかった」という思い込み、③勤務先の廃業・証拠の散逸による諦め、④申請手続きの複雑さ、⑤身近に専門家がいない、などが挙げられます。

「知っていれば受け取れたのに」という悔しさを残さないためにも、少しでも心当たりがある場合には早期に専門家に相談されることを強くお勧めします。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談するメリット

複雑な4つの制度を整理して最適な申請ルートを選択できる

アスベスト被害に関する給付金制度には、①労災保険、②特別遺族給付金制度、③石綿健康被害救済制度、④建設アスベスト給付金制度の4種類があります。

それぞれ対象者・対象疾病・給付内容が異なり、適切な制度を選択することが極めて重要です。

証拠収集・立証の専門的サポートが受けられる

アスベストばく露の事実を立証するための証拠収集(勤務記録・医療記録など)、ばく露業務の特定、医療記録の解析などについて、専門的なサポートを受けることができます。

勤務先が廃業していたり医療記録が保存期間を過ぎていたりする困難なケースでも、諦めずに対応することが大切です。

申請から認定まで安心してお任せいただける

給付金申請に必要な申請書の作成・提出から、審査中の対応、認定後の手続きまで、一貫してサポートします。審査期間が最低6か月かかることが多いため、早期に申請を始めることが重要です。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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