有休(有給/年休)の買取り

「未消化の有休をどうしたらよいか」「これ以上有休を消化できない」「退職するのだが、有休をとって良いのだろうか」「会社から有休の買取りを強く迫られている」など、お悩みの方へ向け、年次有給休暇について解説いたします。このような事態には、法的にどのような問題があるのか、また、どのような対応をするべきなのかについて解説します。

年次有給休暇

年次有給休暇

有給、年休と呼ばれる、給与の支払がある休暇を年次有給休暇といいます(以下では、統一して「年休」と呼びます。)。これは、法律上、会社は労働者に対して「与えなければならない」とされている休暇です。会社は、年休を与える義務を負っているのです。

法律上、年休は①一定期間の継続勤務をし、かつ②一定の期間における前労働日の8割以上を出勤していること、という条件を満たした従業員がとることができます。雇入れ後最初の年休は、①雇入れから6か月間の継続勤務をし、かつ②6か月間の全労働日のうち8割以上に出勤したことで、取得が可能になります。その後は、1年6カ月で11日、2年6カ月で12日……と取得可能な日数が増えていきます。

そうはいっても、お仕事が忙しいと、年休を消化しきれないという場合があると思います。また、「同僚が忙しくしているのに休んではいられない」「業務量が多すぎて、年休をとっていたら仕事が終わらない」という方もおられることだと思います。

そのようなときに、会社から「年休(有休)を買い取らせてほしい」と持ち掛けられるような場合があります。せっかく使えなかった年次有給休暇にお金を出してくれるならと思うこともあるでしょう。しかし、後から述べますように、年休の買取りには法律上問題のあるケースが多いです。

そこで以下では、問題のあるケースや問題のないケースについてご説明します。

年次有給休暇の買取

年次有給休暇の買取

実は、法律上、会社が年休について対価を支払い買い取ることでは、年休を従業員が取得したと扱うことはできません。

また、年次有給休暇の買い上げを予約して、買い上げた分だけ取得しうる年次有給休暇の日数を減らすようなことも法律に違反すると理解されています。

年次有給休暇の買取が許される場合

年次有給休暇の買取が許される場合

一方で、年休は、会社が買い取ることに問題がない場合もあります。

退職時における未消化の年休の買取り

そもそも、年休を得る権利は、会社が従業員に休みを付与する義務であるとともに、会社に在籍する従業員の権利です。もっとも、会社に今後出勤しないのですから、退職する従業員には、もはや年休を得る権利は不要でしょう。

このような場合に、会社が、未消化の年休について相当対価をもって買い取る場合があります。この場合には、会社が年休を買い取っても問題になりません。

このような未消化年休の手当て精算については、これを認めた裁判例もあります。

また、弁護士が交渉をする事件では、退職に際して未消化の年休の買取りを会社に求める場合もあります。

消滅時効により取得の権利が消滅した年休への対価の支払い

また、年休が消滅してしまった場合も、これを行使することができないのですから、買取りを認めてもよいだろうと考えられています。

会社独自の年次有給休暇制度の買取り

さらに、会社独自の制度として就業規則に法律が定めるよりも広く年休を定めていた場合、その法律の定めた範囲を超えた年休を買い取ることは問題がありません。

なぜ年休を買い取ることが違法なのかといえば、会社が年休を買い取ってしまえば、従業員が実質的に休めない事態が生じてしまうからです。しかし、法律で定めた最低限の年休を保証しているのであれば、それを超えた年休の買取りを認めても、従業員は法律の定めた限度では休むことができます。

そこで、このような場合も買取りに問題はありません。

会社が有給の買取りを迫ってくる場面

会社が有給の買取りを迫ってくる場面

法律は、従業員が年休をとりたいと申し出た場合に正当な理由がないのにその年休取得を拒むことを禁止しています。また、年休取得日に出勤を要求することも禁止しています。さらに、取得した年休に対して賃金を支払わないことも禁止しています。

したがって、基本的に、年休の買取りは違法なものである可能性があります。また、会社が年休の買取りを迫ってきたならば、従業員はこれに応じないで突き返すことができます。

ただし、会社との関係では、年休をとることがはばかられる場面もあるかもしれません。会社の雰囲気が年休取得を許さないことや同僚が年休を取得していないことから自身もその取得を抑えてしまうこともあり得ます。

しかし、年休の取得は法律上の権利です。この権利を行使することは制限されるべきではありません。また、年休の取得について会社ともめてしまった場合でも、会社がこれを理由に従業員を解雇することは不当解雇にあたる可能性があります。

このようなお悩みがある場合には、弁護士に相談することも一手です。弁護士が代理人として交渉すれば、ご自身が負担感を覚えずに交渉を進めることも期待できます。

まとめ

まとめ

年休の買取りは、基本的に違法であると理解されています。一方で、退職までに未消化だった場合の年休などは、買取りをしても問題がないとされています。

また、会社が年休の買取りを強引に迫ることは、法律上問題があることが多いため、弁護士等の専門家に相談をすることが望ましいと考えられます。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小松原 柊
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