
マンションの管理等について定める法律・区分所有法の改正法が、令和8年4月1日から施行されます。そこで今回は、この新たに施行される改正区分所有法について、改正点の中でも特に注目すべき部分の概要、新たな改正法が適用される場面や注意点などを簡単に解説していきます。
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の改正

改正区分所有法について
令和7年5月23日、マンションの管理等について定める「建物の区分所有等に関する法律(通称・区分所有法)」の一部を改正する法律が成立し、同月30日に公布されました。
この法律は、令和8年4月1日から施行されることになっていますが、改正の目的としては、新築から相当期間経過したマンションが増え、建物も居住者も高経年化・高齢化するという「2つの老い」に着目し、マンションの管理及び再生を円滑化するため、これまでの法制度を見直そうという点にあります。
改正区分所有法の改正部分の概要
上記のとおり、今回の改正法は、「マンション」も「人」も老いていく、ということを前提にマンションの管理等を円滑にするためになされたものです。改正点の中でも特に着目すべき変更点は以下のとおりです。
①マンションの総会決議における多数決要件の変更

改正法の下では、特別多数を要する特別決議について、決議要件が変更されています。
特別多数を要する特別決議とは、具体的にいうと「ア 管理規約の変更」や「イ共用部分の変更(軽微でないもの)、「ウ 共同利益違反行為者に対する措置」「エ マンションの建て替え等の再生等に係る決議」ですが、このうち変更となるのは「ア 管理規約の変更」と「イ 共用部分の変更」及び「ウ マンションの建て替え等の再生等にかかる決議」についてです。
どのように変わったかというと、ア及びイについては「定足数」及び「多数決要件」が変更になりました。旧法では、定足数は「議決権総数の半数以上」となっていたところ、改正法では「組合員総数及び議決権総数の、各過半数」が必要となりました。この組合員数、つまり頭数も問題となり、さらに「過半数」となった点は従前の方よりも厳しくなったように見えます。しかし、多数決要件は、アの管理規約の変更に関しては「総会出席者と出席者の議決権の各3/4以上」で可決することになり、イの共用部分の変更も、「出席者と出席者議決権の各2/3以上」で可決することになりました。
したがって、多数決要件としては緩和されているともいえるのです。
また、ウのマンション建て替え等の際正当に係る決議についても、定足数は議決権総数の過半数となり、多数決要件に関し「客観的な事由が認められる場合」は特別に「区分所有者総数・議決権総数・敷地利用権の持分価格の各4/5以上」という要件から、「同要素の各3/4以上」で可能になると認められました。
②マンション総会招集時の通知事項等の変更

また、総会招集時の通知事項も見直しがされました。
旧法では、議案が規約の変更等・建替え等である場合を除き、会議の日時、場所、目的を通知すればよかったところ、改正法では、これらの要素に加え、「議案の要領」も示す必要が生じました。これは、全ての議案について適用されます。
この「議案の要領」がどの程度の内容かが問題となりますが、区分所有者たる組合員が、その議案に対し賛否を判断することが可能な程度に内容を要約したもの、とされています。
また、この総会の招集通知発送については、これまでは原則は総会開催日まで2週間、緊急に総会を招集する場合の通知の発送については、理事会の承認を得て例外的に開催日の「5日前」まで許容されていたところ、この例外の場合が「1週間」までしか許容されなくなり、少し厳格に変更されました。
③所在不明区分所有者の総会決議等からの除外
総会は、区分所有者らの意思決定をする場として重要なものでしたが、残念ながら所在等不明な区分所有者がいることで、この意思決定ができない、管理不全のマンションがありました。
そこで、改正法はこのような所在等が不明の区分所有者がいた場合、裁判所の決定に基づき、当該不明区分所有者を総会決議の母数から除外することができる制度を創設しました。
区分所有法の改正に伴い、標準管理規約も見直されているところ、この新しい標準管理規約においては、理事長が理事会の決議を経た上で、上記制度を使うための裁判を請求できるようになりました。
新しい標準管理規約では、それ以外にもこの制度が具体的に利用された場合のことを想定し、各種規定を設けていますので、法改正だけではなく、標準管理規約の改定にも注目し、現在の管理規約を見直すべき、という管理組合もあるかもしれません。
④国内管理人制度の創設

さらに、グローバリズムが進んでいる現在、区分所有者の中に海外居住の外国の方や、海外赴任中で日本国内にいない邦人がいる、というマンションも少なからずあることでしょう。そのような海外居住中の区分所有者は、総会の開催などに関与できず、管理組合の運用に支障が生じるケースが想定できました。そこで、改正法では、海外に居住する区分所有者らに代わって、専有部分等の管理を担う、「国内管理人」制度が創設されました。
新しい標準管理規約においては、国内管理人を選任した場合、管理組合への届出義務を設けています。
ただし、当該国内管理人といえども、たとえば当該区分所有者の代わりに「訴訟」等の当事者や訴状の受取人になることはできません。あくまでもその権限は、専有部分の保存行為・専有部分の軽微変更・総会招集通知の受領・総会での議決権行使・管理費等の弁済 に限られている点は注意が必要です。
⑤専有部分の保存行為実施の明確化

旧法では、共用部分の管理のために、専有部分に立ち入ることは明記されていましたが、立ち入れるだけで、さらに保存行為まで管理組合ができるのか、ということは明らかではありませんでした。
そこで、改正法では「保存行為の実施」についても明文化し、共用部分にまで影響が生じている場合は管理組合が管理規約の規定に従って原因発声の専有部分の保存行為の実施請求が可能となりました。これに対して専有部分にだけ影響が生じているという場合は、改正法に基づき影響を受けている専有部分の区分所有者が、発生原因となっている他の専有部分の保存行為の実施請求が可能となりました。
例えば、専有部分内にある給排水管などは、専有配管として管理組合の管理外とされてしまうため、上記保存行為実施を請求できるようになったことは、老朽化が進んでいるマンションでは重要といえるでしょう。
⑥共用部分の管理に伴い必要な専有部分の保存行為

給排水管のように共用部分(立て管)と専有部分(枝管)が接続され一体的に機能しているものについては、修繕工事などのメンテナンスについても一体的に実施することが効率的といえます。しかし、あくまでも法的には共用部分の管理は管理組合に、専有部分の管理は各区分所有者の管理、となっていたため、それを一体的に管理できるよう、そのような一体的な修繕が出来るよう「規約の特別な定め」と、「総会決議を経ること」を要件として、共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為の権限を管理組合に認めました。
ここで対象となるのは、一体的に行う修繕工事だけではなく、一体的な清掃、も含まれます。本来的には共用部分の管理に充てられるべき修繕積立金を当該一体的修繕工事・清掃に充当する場合は、管理組合での意思決定が必要になります。
⑦所有者不明専有部分・管理不全専有部分管理制度の創設

所有者が不明な住戸、あるいは所有者に対し適切な管理が期待できない住戸等について、改正法では利害関係人からの請求により、裁判所が必要性を認めた場合に、当該所有者に代わり管理人が選任される、という制度が創設されました。前者のケースに対し出される裁判所の命令が「所有者不明施入部分管理命令」、後者のケースに対し出されるのが「管理不全専有部分命令」です。
改正法に合わせて改訂された新しい標準管理規約では、これらの命令を管理組合が請求しやすいよう、理事長が理事会決議を経て裁判所に管理命令を請求できることや、選任された管理人に対して管理組合へ届出義務を課すこと、当該手続についての費用負担の規定があります。
⑧管理組合役員に関する規程の改定

近年、管理組合の役員のなり手がいないということは大きな問題になりつつあります。なり手不足の一員としてあるのは、理事会への出席義務という負担が重いからであるという意見があり、この問題に対応するため、原則的には理事本人が理事会に出席することはこれまでどおりとしても、理事の配偶者(事実婚も含む)や一親等の親族につき「職務代行者」として定められること、理事本人の出席できない場合に理事会への出席を当該職務代行者に委ねられる、としたのです。
合わせて、これまで理事等役員になれない欠格要件についても、会社法などの制限と足並みを揃え、「精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」という点が削除されました。
⑨その他注意点

各マンションが備えている管理規約は、マンションの内部のルールとして重要ですが、それは区分所有法あってのものであり、強行法規たる区分所有法に反する管理規約は、原則的には無効となります。例外的に、当該規約について区分所有法の中で「規約で別段の定め」を認めている場合や、管理規約の方が区分所有法よりも厳しい要件を定めているという場合は管理規約が優先して有効といえますが、今回の法改正により管理規約が無効となる可能性があることについては注意が必要です。
特に、上記①のとおり、総会における多数決決議の要件は法改正の影響を受け、管理規約の改正を議案とする総会においては、定足数が「組合員総数及び議決権総数の過半数の出席」となっており、決議要件は「集会に出席した組合員及びその議決権の各3/4以上」となっていますので、管理規約改正手続自体が、旧法と変わってくるのです。
旧法・改正法、どちらの手続になるのかの基準日は、「総会の招集手続の開始日」となり、要するに令和8年3月31日までに管理規約改正を議案とする総会の招集手続を開始していれば旧法・現行管理規約に沿って手続を行えばよいということになり、令和8年4月1日以降に同様の総会の招集手続を開始する場合は改正法によって手続をする必要が出てきます。後者において誤って旧法・現行管理規約による手続をした場合、定足数・決議要件が異なり、決議が無効となる可能性があるので、注意が必要です。
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