他社との競争激化や物価高の影響を受けて、エステサロンが破産することも珍しくありません。本稿では、エステサロンの特殊性(特にお客様から前受け金を受領するシステム)を踏まえ、エステサロンが破産手続を取る場合の注意点につき、弁護士が解説します。

増加するエステサロンの倒産

昨今、エステサロン(脱毛サロンを含む)の倒産が相次いでいます。

小規模・零細事業者(負債総額1億円未満)が多数を占めているものの、中には、誰もが名前を耳にしたことのある大手のサロンも混じっており、厳しい経営状況は業界全体に広がっていることが分かります。

エステサロンの倒産が増えている要因としては、次の3つが挙げられます。

①競争の激化とコストの増加
同業他社が増えているだけでなく、最近では大手美容外科の台頭もあり、エステ業界における競争が激化しています。
また、どの業界も悩まされている物価高、人件費の上昇など、経営コストが増加していることも経営を圧迫する要因となっています。

②前受け金モデルの限界
エステ業界では、入会時に顧客から施術何回分かに相当する金額を支払ってもらったり、事前に一定の金額を支払ってもらうと通い放題になったりするシステムを採用していることが多いのが特徴です。
このような、前受け金で運営費を賄うビジネスモデルが、経営悪化で返金不可能になるケースが増えています。

③コロナ関連支援の終了
コロナ禍の際に導入された金融支援策(ゼロゼロ融資など)が終了し、それまで低額に抑えられてきた毎月の返済額が元に戻る(増える)ことで経営が圧迫されます。
これに対して、売上はコロナ禍以前の水準になかなか戻らないことも一つの要因です。

破産申立てを考えているエステサロン経営者の方へ

美しくありたいという顧客の希望を叶え、顧客が笑顔で毎日を送るための手助けになれば―――等の思いで、立ち上げた事業であったと思います。

しかしながら、

「できる限りの手を尽くしたけれど、どうしても赤字を解消することができない」

「このままでは負債が膨らむばかりだ」

という場合は、その事業を閉じる決断をしなければならないかもしれません。

継続して通ってくれている顧客に迷惑はかけられないという気持ちから、資金繰りの悪化を押して経営を続けてしまう方もいらっしゃいます。

しかし、エステサロンの場合、前受け金をいただいている会社が多数であるところ、廃業する際には未消化分を顧客に返金しなければなりません。

返金できるだけの十分な資金がないにもかかわらず、漫然と経営を続けるのは、経営者として無責任であると言わざるを得ません。

また、資金や資産が完全に枯渇してしまってからでは、破産申立てなど適切な倒産処理をするための費用すら工面できず、かえって顧客や債権者などの関係者に迷惑をかけてしまいます。

そこで、限界を迎える前に、破産申立ての費用(弁護士費用や裁判所への予納金)を確保した状態で、事業を停止し、弁護士に破産申立てを依頼します。

その際、エステサロンだからといって他の業種に比べて破産申立てが難しくなるということはありませんが、エステサロンならではの特殊性に注意して進めることが必要です。

エステサロン破産の特殊性

エステサロンの破産は、一般的な企業の破産とは異なり、

■前受け金の返金処理
■債権者となる顧客への対応
■顧客の個人情報の厳重取扱い
■高額な美容機器類の処理

に注意を払って進める必要があります。

以下、詳しく見ていきましょう。

①前受け金の返金処理

エステ業界では、入会時に顧客から施術何回分かに相当する金額を支払ってもらったり、事前に一定の金額を支払ってもらうと通い放題になったりするシステムを採用していることが多いのが特徴です。

エステサロンが破産する場合、このような前受け金のうち、未消化部分に相当する金額は、顧客に返金しなければなりません。

しかしながら、この前受け金(未消化部分)返還請求権は、破産手続きにおいては一般破産債権というカテゴリーの債権になり、未払いの税金や給料があるとそれに劣後する取扱いになります。

エステサロンが破産する場合、大抵のケースでは、未払いの税金や給料がありますから、それらへの支払いが優先されます。

その結果、各顧客への返金は叶わないか、または、優先弁済権のない他の一般債権者と同順位で微々たる配当しかできない、ということになります。

②債権者となる顧客への対応

①のとおり、エステサロンが破産する場合、前受け金を支払ってくれていた顧客は、会社に対して前受け金(未消化部分)返還請求権を有する“債権者”という立場になります。

エステサロン破産の場合、債権者の内訳としては、金融機関や取引業者よりも、返金対象となる顧客の数が圧倒的に多い状況になることが想定されます。

受任通知の発送をはじめ、以後の債権者対応は、基本的に、破産申立てを依頼した弁護士(申立人代理人)が行いますが、債権者となる顧客の数が多いと、複数名の弁護士で対応する必要があります。

なお、前受け金の支払いに、クレジットカードの分割払いやローンを利用している顧客もいるでしょう。

そのような顧客に対しては、代理人弁護士の方から、割賦販売法の「抗弁権の接続」という制度を案内し、今後発生する予定の毎月の支払いを停止することができないか、アドバイスします。

③顧客の個人情報の厳重取扱い

エステサロンには、現在利用中の顧客だけでなく、過去数年分の顧客のデータが保存・保管されていると思います。

これらのデータには、身長・体重・胸囲・腹囲・BМI値などの身体的数値や、これまでの施術の内容や結果などが含まれます。

極めてセンシティブな情報であり、顧客にとっては絶対に外部に漏らされたくない、究極の個人情報と言っても過言ではありません。

そこで、当然ですが、これらの顧客情報の取り扱いに関しては細心の注意を払う必要があります。

紙媒体であってもデータの形であっても慎重に保管し、裁判所への破産申立て後は、速やかに破産管財人に引き継ぎます

かなり昔のデータで、管財人に引き継ぐ必要のないものについては、専門業者に依頼するなどして、確実に廃棄処分しましょう。

④高額な美容機器類の処理

エステサロンには、多数の美容機器類(フェイシャル機器、業務用ボディ機器、業務用痩身機器、業務用エステスチーマー、脱毛器など)があることと思います。

これらのうち、リースしているものや、分割払いで購入し割賦残が残っているものについては、それぞれリース会社やローン会社に引き揚げてもらい、返却します。

現金一括で購入したものや、分割払いで購入したものの支払いが終わっているものついては、エステサロンに所有権がありますので、適正価格での売却を検討します。

この時、「少しでも早く現金化したい」と焦ったり、また、「知り合いの業者で使いたいという人がいるから」といって、市場価格とかけ離れた廉価で売却することのないように注意して下さい。

このような廉価売却をしてしまうと、後ほど、破産手続きの中で管財人弁護士から売買の効力を否認され、売った先にも多大な迷惑をかけてしまう可能性があります。

超音波を使った機器など高額なものもあると思いますが、最低でも2~3社の相見積もりを取り、一番高値をつけた業者に売るように心がけましょう。

エステサロンの破産申立ては是非弁護士に相談を

多くの顧客に愛されてきたエステサロンが、経営難を理由に事業を停止し、破産申立てを決断することは大変つらいことです。

通ってくれた顧客や長年取り引き関係のあった業者に事業停止を告げることは、本当に申し訳なく感じられることでしょう。

しかし、先に述べたとおり、資金や資産が完全に枯渇してしまってからでは、破産申立てのための費用すら工面できず、かえって関係者の方々に迷惑をかけてしまいます。

また、「もう破産するしかない」と分かっているのに、延命のためにキャンペーンを打って高額な回数券を販売することは、詐欺罪に問われる可能性がありますから、絶対にしてはいけません

適時に、適切な判断をすることで、関係者にかける迷惑を最小限に抑えながら、事業を閉じることは可能です。

エステサロンの経営者で、破産申立てをお考えの経営者の方は、一度、我々弁護士に相談して下さい。

当事務所では、これまで多くの法人破産の申立てをお手伝いしてきました。

経験豊富な弁護士がサポート致しますので、一人で悩まずに、是非お声掛けいただければと思います。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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