2023年の飲食店の倒産件数は758件で、前年比1.7倍と急増しています。主な要因は物価高と慢性的な人手不足です。債務超過のため破産申立てをする場合には、飲食店の特殊性も考慮した対応をする必要がありますので、経験豊富な弁護士に相談して下さい。

飲食店の倒産状況

2023年の倒産件数は758件で前年比7割増

株式会社帝国データバンクによる「飲食店 倒産動向調査(2023年)」によると、2023年に発生した飲食店の倒産件数は768件。

過去10年間で最も少なかった昨年の452件から、1.7倍に急増したことになります。

また、768件という件数は、新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出を受け、多くの飲食店が休業や時短営業せざるを得なくなるなど、経営環境が一気に悪化した2020年の780件に次ぐ、過去2番目の高水準だそうです。

(出典:TDB Business View 「飲食店」倒産動向調査2023年)

業態別の倒産状況

2023年に倒産した飲食店を業態別に見てみると、トップは「居酒屋」の204件です。

株式会社帝国データバンクの分析によると、これは、「『家飲み』の拡大で居酒屋需要がコロナ前に戻らず、経営を支えてきた時短協力金など公的支援が打ち切られたことで、資金繰りが行き詰る個人商店の零細居酒屋で多く発生した」ためとのこと。

(出典:TDB Business View 「飲食店」倒産動向調査2023年 業態別内訳)

「居酒屋」の他に増加率で目立ったのは、「バー・キャバレー」(前年比+100%)、「そば・うどん」(前年比+162.5%)です。

また、ラーメン店や焼肉店を含む「中華・東洋料理店」の109件、「カフェ(喫茶店)」の72件は、いずれも過去最多件数を記録しています。

飲食店の倒産が増加した要因

2023年に飲食店の倒産が増加した主な要因としては、

■食材価格や光熱費(電気・ガス)など、経営に必要不可欠な物の「物価高」

■慢性的な「人手不足」

が挙げられます。

特に、「物価高」は飲食店経営にとって痛手となりますが、客離れを恐れて、上昇する仕入価格を適切に販売価格に転嫁することができないというジレンマがあります。

また、他業種に比べて新規参入の障壁が低い飲食店では、もともと過少資本での開店も多く、開店後の事業計画や見通しが甘いケースも少なくないところ、コロナ禍や「人手不足」、「物価高」など、当初の経営計画からすれば想定外の事態に直面し、経営体力が早々に限界に達して破綻したケースが多かったようです(株式会社帝国データバンク「TDB Business View 「飲食店」倒産動向調査2023年」での分析より)。

破産申立てを考えている飲食店経営の方へ

飲食店破産の特殊性

債務超過に陥り、これ以上業績の回復も見込めないという場合は、苦渋の決断として、会社を倒産させる、すなわち、会社の破産申立てを行うことも考えなければなりません。

飲食店だからといって、他の業種に比べて破産申立てが難しくなるということはありませんが、飲食店ならではの特殊性に注意することは必要でしょう。

一般的に、飲食店では、

■多くのリース用品を使用している

■店舗の多くが賃貸物件であり、その明渡しと原状回復が必要である

■在庫の食料品については、早期の処理が必要となる

■フランチャイズの形態で営業していることも多い

といった特殊性があります。

破産を申し立てるには、これらの処理(リース用品の返還、賃貸物件の明渡し、在庫品の処分など)をどうするのか、慎重かつ迅速に進めていかなければなりません。

処理を誤れば、破産申立ての前後で、取引先や賃貸人、フランチャイザーなどの関係者にさらなる迷惑をかけることとなってしまいます。

以下、簡単ではありますが、上記の特殊性に関する注意点を見ていきましょう。

①多くのリース用品を使用している

飲食店では、キッチン用品や店内設備などをリースしていることも多いと思います。

リース用品は“借り物”であり、自社の所有物ではありませんから、破産手続き上、これらを、債権者への配当原資となる会社財産とするわけにはいきません。

破産申立てをする場合には、これらのリース用品を全て本来の所有者であるリース業者に返却する必要があります。

まずは、どれが自社の所有物で、どれがリース用品なのかを、契約書等を手掛かりに仕分けします。

リースだと思っていたら、所有権移転型のファイナンス・リースなどで、自社の所有物になっていることもありますので、注意が必要です。

そのうえで、各リース業者に連絡を取り、当該リース用品を返却(ないし日程調整のうえ引き揚げてもらう)していきます。

②店舗の多くが賃貸物件であり、その明渡しと原状回復が必要である

飲食店の場合、店舗物件は自社所有ではなく、賃貸を利用している(借りている)ことが多いと思います。

営業を停止して破産申立てを行うにあたり、これら借りている店舗は明け渡さなければなりません。

そのため、速やかに賃貸人に連絡を取り、賃貸借契約の解除と物件の明渡し、及び原状回復を進める必要があります。

道路沿いに公告看板を出している場合もあると思いますが、これも上記と同様で、掲示する契約を速やかに解約し、看板の撤去をします。

「大型の業務用冷蔵庫があり、他に適切な保管場所もないので店舗内に置いておくしかない」といった場合は、そのままだといつまで経っても物件の明渡しが完了せず、賃料相当損害金が膨らんでしまいます。

ケースによっては、新たに保管料を支払って別の場所に保管するよりも、複数の専門業者の見積もりを取ったうえで、最も高い金額で買い取ってくれる業者に(適正な価格で)売却することで、早期の明渡しを実現すべきこともあります。

なお、賃貸借契約上、スケルトンの状態に復して返す必要があるにもかかわらず、資金がないためにそのような原状回復工事ができないという場合、預け入れた敷金を引き当てにしてもらうしかありませんが、敷金を充当してもなお不足する場合には、不足額につき、賃貸人に債権届をしてもらうことになります。

③在庫の食料品については、早期の処理が必要となる

営業停止日までのスケジュールを前もって検討していた場合は、仕入れをある程度調節することで、生鮮食品類など、足の早い在庫をたくさん抱えてしまうといった事態は防げると思います。

もっとも、生鮮食品類でなくとも、食料品や飲料など消費期限(ないし賞味期限)のあるものを在庫として保管し続けるのは望ましくありません。

早いうちに売れば相応の金額になったものが、時間が経って品質の劣化が疑われる状態では買い手すらつかない、ということがあるからです。

(ひどい場合は、廃棄処分するしか選択肢がないということもあります)

残された貴重な会社財産を無駄にしないためにも、早期に、専門業者や同業者に声を掛け、適正な価格で売却・換価していきましょう。

④フランチャイズの形態で営業していることも多い

飲食店の場合、フランチャイザー(事業本部)との間でフランチャイズ契約を締結し、加盟店の一つとして、許諾された看板のもとで営業している形態もあります。

このような飲食店が破産申立てを行う場合には、フランチャイズ契約の帰趨にも注意が必要です。

基本的にはフランチャイズ契約を解消することになるのですが、この時、契約の定めによっては、フランチャイザーに対して一定の違約金を支払う義務が生じることがあります。

多くの場合、この段階で違約金を支払うだけの経済的体力は残っていないことがほとんどですので、フランチャイザーを、違約金支払請求権を有する債権者として扱うことになります。

飲食店の破産申立ては是非弁護士に相談を

これまで継続してきた事業を閉じる決断をするのは、本当に勇気のいることと思います。

しかし、明らかに債務超過の状態にあり、業績が回復する見込みもないのに、無理をしてギリギリまで経営を続けてしまうと、いずれ会社資金が枯渇してしまいます。

破産申立てをするには、依頼する弁護士費用の他に、裁判所に管財予納金を納める必要もあり、相応の費用がかかります。

会社財産が完全に底をついてしまった後では、これらの費用を工面することができず、破産申立てすることさえできない・・・という事態にもなりかねません。

資金繰りや経営の行き詰まりに悩んでいる飲食店の方は、限界を迎える前に、是非一度、弁護士に相談して下さい。

早めに相談して悪いということはありません。

また、その際は、飲食業の特殊性を理解し、同種の破産申立てに精通している弁護士を選ぶようにすると良いでしょう。


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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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