
2026年1月1日から取適法(改正下請法)が施行となるのに合わせて、運用基準の改定により、例え書面での合意があったとしても、振込手数料を中小受託事業者(下請事業者)に負担させることは違法となりました。以下、詳しく解説します。
下請法は取適法に変わりました!
グリーンリーフ法律事務所は現在180社ほどの会社様から顧問契約を頂いていますが、今多くの会社様からご質問やご相談を頂いているのが、本年(2026年)1月1日から施行となった改正下請法(取適法)に関するご質問です。
中でもとりわけお問合せが多いのが、「振込手数料の負担」についてです。
「今は取引先に負担してもらっているけど、これは違法になるの?」
「振込手数料の負担を回避できないだろうか?」
といったご質問を受けることが多くあります。
そこで、以下でこの点について詳しく解説したいと思います。
そもそも2025年以前の「振込手数料」の扱いはどうだったのか

変更後の話をする前に、変更前のお話をします。
まず、そもそも下請法では親事業者がしてはならない11の禁止行為が定められていました(取適法下でも禁止行為は11項目ですが、手形交付が禁止となった関係で1つが削除となり、新たに1つ追加となっています。)。
その中のひとつが「下請代金の減額の禁止」です。
下請法は、いかなる名目であっても、下請事業者に責任が無いのに一度決まった下請代金を減額することを禁止しています。
したがって、例えば「協力金」「リベート」「歩引」等々、どんな名称であっても、下請代金から差し引いて支払うと違法ということになります。
それは、「振込手数料」名目であっても同様です。
すなわち、「原則として」振込手数料を下請事業者の負担とすることは違法となります。
しかし、振込手数料を下請事業者の負担とすることは、長年、多くの取引分野で慣習として行われてきたことでした。
そこで、2025年までの下請法のもとでは、一定の条件(※)を満たせば「例外的に」違法との扱いにはしない、という運用がされていました。
※一定の条件について
2025年までの下請法では、振込手数料の負担について、①事前に書面において「下請事業者の負担とする」ことを取り決めておくこと、②実費(実際にかかった振込手数料)と同値以下の金額を差し引くこと の2点を満たす場合には、違法とはしないとの運用基準がありました。
2026年からは違法!例外なし!

この度、2026年1月1日から下請法が改正され取適法(正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律。略称:中小受託取引適正化法)となるのに合わせて、運用基準も見直しがされました。
これによって、振込手数料の差し引きについては、上記のような例外的な取り扱いは無くなることになりました。
すなわち、振込手数料名目であったとしても、また事前に書面で合意を交わしていたとしても、振込手数料分を差引くことは取適法違法(「代金の減額の禁止」に該当する)ということになったのです。
まずは取適法適用の有無の確認から

上記のとおり、取適法では例外的な取り扱いがなくなったといいますが、取引全体を見渡せば、現在も商慣習によって受注側(代金を支払ってもらう側)が振込手数料を負担するということは多いかと思われます。
では、これらはすべて取適法違反となってしまうのでしょうか?
答えはNOです。
取適法には、法が適用されるための条件として、資本金基準・従業員基準や取引の種類などが定められていますので、これらの条件が満たされない場合には、取適法の適用はありません。
したがって、その場合には、受注側に振込手数料を負担させても取適法違反とはなりません(ただし、独禁法等、別の法律違反となる可能性を否定するものではありません。)。
そのため、受注側の振込手数料の負担が取適法違反となるか否かは、まず、これらの条件を満たしているかどうかを検討しなければ判断することができないということになります。
特に今回の下請法改正(取適法の施行)により、新しく従業員基準が追加されたり、対象取引として特定運送委託が追加されたりということがありますので、「今までは下請法の対象外だったのに、2026年1月1日からは取適法の適用対象になってしまった!」ということがあり得る状況です。
その状況で、振込手数料の受注者側負担を行ってしまうと、取適法違反として、(最終的には)勧告の対象となってしまうということもあり得ますから、いずれの企業においても、一度立ち止まって自社の置かれている立場を考えてみる必要があるように思います。
ぜひ、ご一考頂ければ幸いです。
具体的に何をするべきか?

最後に、具体的にどのような対応をしていけば良いかについてお伝えします。
まず、取適法は、各取引ごとに適用の有無を考えますから、2026年1月1日以降に貴社の行う取引が、取適法の対象であるかどうかを考えます。
対象取引は、以下の5つです。
・製造委託(法第2条1項)
・修理委託(2項)
・情報成果物委託(3項)
・役務提供委託(4項)
・特定運送委託(5項)
次に、取引類型ごとに、資本金基準および従業員基準がありますので、その数字を貴社及び取引先の両者が満たすかどうかを考えます。
資本金基準と従業員基準は、いずれかひとつでも満たせば、もう一方を満たさなくとも、取適法の適用対象となります。
「取引先の資本金の額や従業員の数を知らない」ということもあるかもしれませんが、その場合にはシンプルに、取引先に尋ねて下さい。
尋ねもせず、根拠もなく漫然と「知らない」という状態で取適法の禁止行為を行ってしまうことは避けなくてはなりません。
もし尋ねるのが(コストや情報管理の関係上)難しいという場合には、取適法の適用が「ある」ものとして、取引の適正化を目指すことになります(公正取引委員会等にはこういった狙いもあるのかもしれません。)。
最後に、上記により「取適法の適用あり」と判断される場合には、取適法の禁止行為に当たるような取り決めや現場の振る舞いが無いかどうか点検することになります。
例えば、本記事で話題にした振込手数料について、中小受託事業者の負担とする内容になっていないかどうか契約書を確認したり、実際の振込時の状況を確認します。
もし取適法違反となる契約書の内容があれば、覚書等で修正をするなどして対応することになるでしょうし、実際の振込み時に振込手数料を差し引いていないかどうかは、会計の実務の担当者に確認する必要があるかもしれません。
ちなみに、以前から取引が続いている取引先について、今までは下請法の適用があったものの、「取引基本契約書」等で事前の書面による合意があって、振込手数料を下請事業者の負担としていたケースも多くあるものと思います。
しかしながら、そういったケースでも、2026年1月1日以降の取引については、取適法とその運用基準の適用により、振込手数料を差引くことは違法となります。
こういった場合には、取引基本契約書について、覚書等で修正したり、委託事業者から中小受託事業者宛に「2026年1月1日以降の取引については、代金支払時に振込手数料を差し引きません」と通知を打つなどして、振込手数料を差し引かないことを明確にしておくことが推奨されているとのことです(もちろん、その上で、実際の支払時には振込手数料を差し引かない対応が必要です。)。
契約書の巻き直しまでは必ずしも必要ではないものの、一定の行動が求められているところですので、委託事業者に当たる企業はぜひご対応をご検討ください。
まとめ

いかがだったでしょうか。
今回の改正下請法(取適法)の施行は、企業活動の根本である「取引」全般について、一定の見直し・振り返りを求める内容となっています。
世の中には様々な企業、様々な業種がありますが、(適用の有無はともかく)まったく無関係という企業は少ないのではないでしょうか。
今回の改正を機に、取適法の基礎知識と、貴社における現状の確認を、ぜひ行って頂ければと思います。
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