
不幸にして会社を破産せざるを得ない場合、会社経営者・代表者の方が気にされる点の一つに、労働者は保護されるのか、というものがあると思います。
今回は、この点について、さいたま市大宮区で30年以上の実績のある弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説します。
会社の破産とは

法人破産とは、会社が破産法に定める支払不能状態となり、自力での事業継続が不可能になった場合に、裁判所へ申立てをして会社の財産を清算し、法人格を消滅させる法的手続きです。
裁判所が選任する破産管財人が、会社の財産の管理処分権を取得し、破産手続を進めていきます。
会社が保有する財産を調査し、全財産を換金に、債権者の債権についてを調査したうえで、債権者に公平に配当(分配)します。
これにより、会社は消滅します。
なお、代表者個人が会社の債務の保証をしている場合については、その他のコラムをご参照ください。
会社破産時の従業員の法的地位

会社破産時の従業員の法的な地位を検討するにあたっては、大きく二つの観点があります。
①雇用の観点
②賃金の観点
①雇用の観点
通常、会社破産時には事業の継続ができなくなりますので、破産手続の申し立て前(多くは事業停止日)に従業員を解雇することになります。
もちろん、事業継続(特に事業譲渡)も視野に入れた破産事件もありますので、そうした場合には従業員の雇用が継続される場合もありますが、そうした場合は稀で、一般的には従業員は解雇されることが多いと言えます。
解雇される場合、30日前の予告が必要であり、30日前の予告ができない場合には、必要な予告期間分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
この予告手当が支払えない場合、従業員は会社に、解雇予告手当の支払い請求権を有することになります。
②賃金の観点
多くの企業では、勤務を行った後に給与を支払うと思いますので、通常、会社破産時には、従業員の賃金支払い義務が残っていることが一般的です。
会社破産時に、その際に払うべき給与を支払うことができれば望ましいですが、これができない場合には、従業員には、未払の賃金請求権を持つことになります。
従業員は債権者
上記で見た通り、従業員は、会社破産時には債権者の地位を持つことが多いのが実際です。
従業員保護策
財団債権としての給与
破産法は、優先的に支払うべき債権者への債権の種類として、財団債権と優先的破産債権というものを設けています。
給与のうち、破産手続開始前三月間の給与は、この財団債権として、優先度の高い債権とされており、これは保護策の一つと言えます。
(使用人の給料等)
第百四十九条 破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。
労働者健康安全機構による立替払い制度

上記のように、給与は、財団債権として破産手続上優先度が高い債権に分類されますが、これは、破産する会社に資産がある場合にのみ機能し、会社に資産が無ければ、優先度が高くても意味がありません。
そこで、労働者健康安全機構といういわば国が、破産会社の給与を最大80%立て替える制度があり、これが、労働者健康安全機構による立替払い制度です。
※破産の場合だけでなく、事実上の倒産に立て替えてくれる場合もあります。
労働者健康安全機構とは?
労働者健康安全機構HPより引用 https://www.johas.go.jp/kiko/tabid/87/Default.aspx
「独立行政法人労働者健康安全機構法(平成14年法律第171号)に基づいて設立された、厚生労働省が所管する法人です。」
「労働者健康安全機構(JOHAS)は、過労死関連疾患、アスベスト、メンタルヘルス、せき髄損傷、産業中毒など、勤労者の職業生活を脅かす疾病や事業場における災害に関して、働く人の視点に立って被災労働者などが早期に職場復帰し、疾病の治療と職業生活の両立が可能となるような支援を推進し、職業性疾病について臨床で得られた知見を活かしつつ、総合的な調査・研究、その成果の普及を行うことにより、労働者の健康及び安全の確保を図るほか、未払賃金立替払事業などを行い、もって労働者の福祉の増進に努めます。」
失業保険給付
会社破産や事業停止時の解雇は、会社都合解雇ですので、失業保険給付が早期に受給できます。
これは、会社破産時の直接的な従業員保護策ではありませんが、実質的には、会社破産時の従業員の保護機能を有しています。
ただし、失業保険受給のためには必要な書類がありますので、会社破産の際に、適切に社労士に作成を依頼することが必要です。
労働者保護策までフォローできる弁護士に破産手続申立てを依頼すべきこと

以上の労働者保護策は、自動的に実施されるものではありません。
適切な対応を事前に検討し、また、社労士への手配も事前に必要になります。
場合によっては、従業員保護策が受けられなくなったり、保護策が受けられるのが非常に遅くなったりする事態を避けるため、法人破産を検討する際には、こうした従業員保護策についても理解し、手続を進める際にきちんと目配りできる弁護士に依頼することが必要です。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴
開設以来、数多くの法人破産申立・破産管財事件・代表者破産に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、破産手続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、法人破産専門チームも設置しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・法人破産専門チームの弁護士は、破産手続や代表者保証に関する法律相談を日々研究しておりますので、法人破産や代表者の債務整理に関して、自信を持って対応できます。
そして、従業員保護策を最大限考慮した対応を心掛けているほか、会社破産時の従業員対応策をよく知る社労士のご紹介も可能です。
従業員保護策が心配な経営者・代表者の方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





