従業員が何らかの理由で出社拒否をした場合、そのような社員を放置してしまうと業務に支障を来すなど、会社側にとって不利益を被ってしまうリスクがあります。

本ページは、出社拒否をする従業員に対して会社としてすべき対応及び注意点などについて弁護士が解説するページとなっております。

出社拒否とは?

出社拒否とは、何らかの理由で会社に行かない又は会社に行けなくなる状態をいいます。

個々の事情によってその理由は様々でありますが、出社拒否の原因として、次のようなものが考えられます。

・仕事量があまりにも多すぎる
・うつ病などのメンタル問題
・人間関係のトラブル
・ハラスメント被害

など

出社拒否する従業員への対応方法について(ケース別に解説)

出社拒否の理由によって、会社が取るべき対応方法は異なります。

以下では、3つのケースごとに対応方法を解説いたします。

1 うつ病などのメンタル問題を理由とした出社拒否の場合

うつ病などの体調不良を理由に仕事を休みたいとの申し出があった場合、原則として会社はその申出に応じる必要があります。

会社は、社員に対して安全配慮義務を負っております(労働契約法第5条)。

労働契約法第5条

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

社員が体調不良になっているにもかかわらず出社を強制したり、会社都合で休む時期を先延ばしにすることは、安全配慮義務違反に該当する可能性があります。

もっとも、社員から診断書を提出してもらい、体調不良が正しいものであるか確認することは可能です。また、病名に加えて、勤務の可否を書いた診断書の提出を求めることも可能です。

診断書で「長期的な療養が必要である」との診断を受けている場合は、社員へ休職を命じるのがよろしいかと考えられます。

2 復職時のトラブルによる出社拒否の場合

病気等で休職していた社員が復職する際に、復職の条件をめぐって会社と意見が対立し、出社拒否するケースが少なくありません。

先ほど解説しましたとおり、会社は社員に対し安全配慮義務を負っていることから、社員が復職するにあたっては、再び同様の事態にならないよう、会社として病状に応じた配慮を行う必要があります。

まず、社員の主治医や産業医、社員本人の意見を聞き、復職にあたってどのような配慮が求められるか確認することをオススメします。

社員への配慮が必要と判断した場合、その対策を講じた上で社員を復職させることが必要であります。

例えば、以下のような対応をし、徐々に職場復帰させるのが望ましいと考えられます。

・人事異動
・軽作業や定型業務、安全な業務への転換
・短時間勤務
・出張制限、転勤についての配慮
・フレックスタイム制度の制限・適用
・残業や深夜業務の禁止
・試し出勤

3 ハラスメントを理由とする出社拒否の場合

セクハラやパワハラなどのハラスメントを理由とした出社拒否の場合、まず、その出社拒否が正当かどうか判断すべきであります。

ハラスメントの存在が確認できた場合は、正当な出社拒否と判断されるため、速やかにその原因を取り除く必要があります。

会社にはハラスメント防止策を講じる義務があるため、何ら問題を解消しないまま、出社を強制することはできません

会社として事実関係を調査した上で、被害者への配慮、行為者への処分、職場環境の改善、再発防止策などといった適切な対応が求められます。

出社拒否する社員への対応の手順

1 話し合いの機会を設ける

社員としっかり話し合いを行い、出社を拒否する理由がなにか聞く必要があります。

出社拒否に正当な理由があるならば、会社としてもその問題を解消する必要があるからです。

例えば、病気で休職していた社員が復職する際は、復職後は必要な配慮を行うことを約束し、出社するよう説得することが求められます。

また、ハラスメントの被害に遭われて出社をしたくないと主張している場合、会社としては、事実関係の調査、被害者への配慮、加害者への処分など適切な対応をとったうえで、出社に向けて話し合いをするべきと考えられます。

2 出社するよう説得するも説得に応じない場合は、出社命令を出す

口頭ではなく、書面やメールなど記録が残る形で命令を出すことが重要です。

書面等で命令を出すことにより、言った・言わないの争いを避けられるからです。

3 出社命令に従わない場合、懲戒処分を検討する

社員が出社命令に従わないときは、懲戒処分を検討する必要があります。

就業規則に出社拒否(業務命令違反)を懲戒事由として定めていれば、懲戒処分の対象となります。

出社拒否の場合は、まずは戒告やけん責など軽い処分から行い、反省と態度の改善を求めるべきと考えられます。

それにもかかわらず、出社を拒否する場合は、より重い減給処分を行うことを検討の余地に入れることもオススメします。

出社拒否を理由に懲戒処分できる場合は?

出社拒否を理由に懲戒処分ができる場合は、以下のようなケースが挙げられます。

・理由のない出社拒否
・プライベートな用件による出社拒否
・出社拒否の理由が虚偽であった

他方で、懲戒処分ができない場合は、以下のようなケースが挙げられます。

・体調不良
・職場環境に問題がある
・感染症の罹患に不安がある

うつ病など体調不良が原因で出社できない場合は、それを理由に懲戒処分をするのは難しいと考えられます。

先ほど解説したとおり、会社には安全配慮義務があり、体調不良の社員を無理に出社させる命令そのものが不合理と判断されるからであります。

また、長時間労働やパワハラなど職場環境に問題があって出社拒否している場合も、会社側に責任があるため、懲戒を行うのは難しいと考えられます。

まず、会社とすべき対応としては、職場環境の改善など出社拒否の原因を除去する必要があります。

まとめ

以上、従業員が出社拒否した場合に会社としてすべき対応と注意点について解説いたしました。

出社拒否の理由はさまざまであるため、安易に懲戒処分をするのは避けるべきであります。

まずは、社員と話し合いの機会を設け、会社として対応すべきことがなにかを検討することをオススメします。

出社拒否に正当な理由がない場合は、懲戒処分の対象となりますが、懲戒処分の有効性は出社拒否の理由に応じて判断が変わるため慎重な検討をオススメします。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 安田 伸一朗

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