放置された自動車を撤去する責任は誰にあるのでしょうか。撤去の責任者、自動車の名義の確認の仕方、処理の具体的な進め方について考えてみました。

1 放置自動車を撤去する責任者

自動車が自分の敷地に乗り捨てられている、あるいは、アパートの賃借人が自動車を駐車場に放置したままいなくなってしまった、というような場合、この自動車を撤去する責任は誰にあるのでしょうか。

    ※ 公道に乗り捨てられている場合は、違法駐車車両として、警察に連絡して処理してもらうことになります。

  この場合、まず、車の所有名義人を確認してください。

(1) ユーザー(自動車の購入者)が所有者なら、ユーザーに撤去する責任があります。

(2) 自動車がローンによって購入されたものである場合、クレジット会社が自動車の所有名義人になっている場合がありますが(これを所有権留保といいます)、このような場合、クレジット会社に自動車を撤去する責任があるのでしょうか。

この点について、平成21年3月10日に最高裁判所の判決がでました。この判決によると、

① ユーザーがローンの支払いをしている間は、クレジット会社は、車を占有、使用する権限を有しないから、車を撤去する義務はありません。

② しかし、ユーザーがローンの支払いを怠り、一括して残額を支払うことになった場合は、その時点から、クレジット会社は車を占有、使用する権限を持つから、車を撤去する義務がある、となっています。

③ なお、ユーザーがローンの支払いを完了しているのに、車の所有名義がクレジット会社のままになっているという場合は、ローンの支払いが完了したことにより、実質的な所有権はすでにクレジット会社からユーザーに移ってしまっており、クレジット会社には車を占有、使用する権限がありませんから、クレジット会社は車を撤去する責任はありません。

2 車の所有名義人の確認の仕方

  東京都、各県などにある運輸局で、放置自動車の名義を確認します。この確認のためには、原則として、「自動車登録番号」と「車台番号の下7桁」の記載が必要となりますが、放置自動車の場合、「車台番号の下7桁」は通常は分かりません。

   この場合は、「自動車登録番号」と、自動車の放置状況が判る図面、車両の写真、放置日数などを記載した書面を提出することによって、放置自動車の名義を確認することができます。

3 放置自動車処理の具体的な進め方

下記のとおりになります。

(1) 所有名義人の確認

上記2のとおり、放置自動車の所有名義人が誰かを確認します。

(2) 名義がクレジット会社の場合

→ 1(2)①~③のどれにあたるかをクレジット会社に電話をして確認します。

   ア ②の場合なら、クレジット会社に自動車を引き上げてもらいます。

   イ ①、③の場合なら、ユーザーに自動車を撤去する責任がありますから、下記の(4)の流れになります。

(3) 名義がユーザーの場合

ユーザーに自動車を撤去する責任がありますから、この場合も、下記の(4)の流れになります。 

(4) ユーザーに自動車を引き上げてもらう手順

a ユーザーへの連絡

→ 既に引越ししている場合は住民票を請求して引越し先を調べます。

電話、手紙などで連絡を取り、ユーザーから車の解体の了解をもらいます。

    了解が得られた場合は、専門業者に自動車の撤去を依頼します。

b-1 ユーザーに連絡が取れない場合Ⅰ(あるいは連絡が取れても、了解がもらえない場合)

   次のような手順で訴訟を起こします。

  ア 駐車場明渡し訴訟を起こします。

イ 勝訴判決を得ます。

    ・ 相手方が争ってきた場合には、判決まで数か月かかる場合もあります。

    ・ 相手方が所在不明で公示送達申立となった場合には、裁判は1回で終了、訴え提起から約2か月で判決言い渡しとなります。   

ウ 駐車場明渡しの強制執行申立て

    ・ 判決言い渡しから約1か月で申立てます。

    ・ 裁判所に納める執行予納金

     → 車に価値がなく、駐車場からどかしてそのまま廃棄となる場合には6万円程度。

     → 車に価値があり、駐車場からどかした後、どこかに保管しなければならないケースでは、その保管費用もかかるので10万円以上になることもあります。

     → 車に価値があるかどうかは、申立前に業者に査定してもらって判断します。査定書は、申立後に執行官に提出します。

        ※ 強制執行を専門にしている業者がいるので、査定、その後の実際の明渡しなどは、そのような業者に依頼して行うのが通常です。

     → 予納金は、実際に執行を終えて余りが出れば、余った金額が返還されます。   

エ 第1回目の執行(強制執行申立て後1週間くらい)

    ・ 執行官と代理人が現地に赴き、相手方に駐車場を明け渡すよう催告します。

       ※ もともと相手方が所在不明の場合には省略されます。

オ 第2回目の執行(強制執行申立て後1か月以内)

    ・ 執行官、代理人、業者、立会人が現地に赴き、駐車場から実際に車を移動させて(レッカー移動など)終了になります。   

カ 車をどかすのに必要な費用

     車の解錠費、車両運搬費用、処分費用、人件費などを含めて、10万以上になります。

b-2 ユーザーに連絡が取れない場合Ⅱ(あるいは連絡が取れても、了解がもらえない場合)

   次のような条件がすべてそろう場合、実力で自動車を廃棄してしまうということも考えられなくはないですが、もし、自動車の所有者からクレーム、損害賠償などの請求をされた場合、必ず勝訴できるとは限らないので、慎重に行うなら、上記のbの法的な手続を取るほうが安全です。

  ■ 何ヶ月も置きっ放しにされている。

   → その証拠のための写真を、定期的に撮っておく。

  ■ 車を撤去するよう車の所有者に書面で何度も催告をした。

   → 賃借人の転居先が分かる場合は、賃借人に督促の書面を出す。

  ■ 立て看板を立てて催告した。

   → 督促の書面が賃借人につかない場合、賃借人の転居先が不明な場合は、名誉毀損にならない程度の文章で「車を撤去してください。撤去してくれなければ○月○日に撤去します」という程度の立て看板を立てておく。看板が立っているところを写真に撮っておく。

  ■ 連帯保証人にも督促した。

   → 連帯保証人が、賃借人の駐車場使用契約についても連帯保証している場合は、連帯保証人も、車の撤去義務を負っていると考える余地があるから、連帯保証人に対しても、車の撤去を催告する。

  ■ 車の価値はほとんどない。

   → この点については、中古自動車・査定業務実施店で査定してもらう。


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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫

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