私が申立代理人となって、破産申立てをした、とある会社法人は財産はほとんどありませんでしたので、破産手続は、財団不足による異時廃止として、破産手続は終結しました。

また、法人の代表者は、住宅ローン付きの一戸建て住宅を保有しておりましたから、再就職がかなったこともあり、住宅ローン特則付き個人再生手続きを利用し、最長の60カ月の返済計画を立てた再生計画案も認可され、経済的な再出発をしておりました。

そのような状況にありましたところ、破産手続が終結した株式会社を被告として民事訴訟が提起されました。

その被告となった、破産手続が終結した会社の特別代理人に就任した弁護士から、裁判所による選任書の写しの送付を受けるともに、破産した会社の財産状況について問い合わせがありました。

まず、破産手続の開始によって、解散し、その清算が済んだ破産会社に対して訴訟が提起されるという事態が初めての経験でした。

そして、その訴訟の原告となったのは、破産した会社に対して融資をした金融機関の保証会社でありました。

また、その保証会社は、個人再生手続で認可を受けた再生計画案に基づき返済手続中の再生債権者でもありました。

特別代理人に選任された弁護士からの問い合わせは、破産管財人が債権者集会で報告した際の、財産目録及び収支計算書に計上されている「不明」とされるパソコンについて、破産管財人が破産財団から放棄許可申請をし、それを破産裁判所が許可したことに関わり、当該パソコンの所在の有無などの情報を求めているとのことでした。

会社法人の経営者が資金繰りに窮して、結果廃業し、破産申立てをし、その手続きが終結した後のことですが、珍しい事案でしたので、法律論とともにご報告させていただきます。

1 破産手続が終結した会社を被告として訴訟を提起した目的

(1)金融機関からの破産した会社の借入と代表者の連帯保証債務

多くの中小企業に見受けられるように、破産した会社には、同社を主債務とする金融機関からの借入金がありました。

会社の代表者は、その借入金の連帯保証をしていました。

上記のとおり、会社の代表者は、自宅を維持するために、住宅ローン特則付きの個人再生手続きをとりました。

なお、この保証会社が、代表者の個人再生手続で届け出た求償債権は、再生債権のうち、過半数を超えることはありませんでしたが、一番の大口債権者でした。

(2)主債務者が破産した場合に、保証人が主債務の消滅時効の援用の可否

原告保証会社が、破産手続き終結会社を被告として、訴訟提起をしたのは、同社に対する主債務の管理のためでした。

この主債務の消滅時効が完成することを防ぎ、連帯保証人にそれを援用されないようにするためであると推測されました。

① 保証人は主債務者の消滅時効を援用できること

保証人は自らが負う保証債務が時間の経過により消滅時効が完成した場合に、その消滅時効の利益を享受するために、保証債務の消滅時効を援用することができます。

そして、保証人は、保証債務を承認するなどして自身の保証債務の消滅時効の援用ができない場合であっても、主債務者の負う主債務が消滅時効が完成した場合には、その利益を享受することができ、主債務が消滅時効により消滅していること、つまり、消滅時効の援用の利益を有するとされています。

つまり、保証人が、自らの保証債務を支払い続けるなど、時効の中断行為を重ねていても、主債務が時間の経過によって、消滅時効にかかれば、その援用の意思表示をして、自らが負う保証債務を、主債務が消滅したことから、保証債務も消滅するという、保証債務の付従性を根拠に、保証債務の消滅を債権者に主張することができるのです。

② 主債務者が自然人であり、自然人が破産手続をとり、しかも、免責許可の決定を受けた場合に、保証人は主債務の消滅時効を援用できるか。

これについては、平成11年11月9日付けの最高裁判例があります。

次のように述べます。

「免責決定を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求し、その強制的実現を図ることができなくなり、右債権については、もはや法166条1項に定める「権利ヲ行使スルコトヲ得ルトキ」を起算点とする消滅時効の進行を観念できない」というべきであることを理由として、破産者が免責決定を受けた場合は、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできない」としました。

つまり、この場合には、保証人は、破産した自然人が免責許可決定を受けた場合に、その主債務の消滅時効の援用をすることができないとしたものです。

すると、この論理の帰結として、免責許可決定がない場合には、主債務の消滅時効を援用することが可能となります。

③ 主債務者が会社であり、その会社が破産手続をとった場合に、保証人は主債務の消滅時効を援用できるか。

この点について、平成15年3月14日付最高裁判決が次のように述べます。

「会社が破産宣告(破産手続開始決定)を受けた後、終結決定がなされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり、この場合、もはや存在しない債務について時効による消滅を観念する余地はない。この理は、同債務について保証人のある場合においても変わらない。」

「したがって、破産終結決定がされて消滅した会社を主債務とする保証人は、主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張して時効の援用をすることはできないものと解するのが相当である。」

これが、解釈指針となっており、そのために、特に金融機関、そしてその保証会社は債権管理の一環として、破産手続が終結した会社を被告として訴訟提起されたのでした。

改めて、検討してみます。

(3)考え方(学説の状況)

上記最高裁判決が出るまでの学説の状況は下記のとおりです。

① 破産手続が終結しても、保証債務がある場合は一定の範囲で会社の法人格は存続するとする見解

これは、主債務会社の破産手続が終了しても、保証債務がある場合には、一定の範囲で会社の法人格は存在すると考えますので、主債務も存続すると考えます。

これによると、保証人は、破産手続をとり、終結した主債務の保証による消滅時効の援用が可能であるとします。

② 破産手続終了により主債務者である会社は消滅し、主債務も消滅すると解する見解

これは、破産手続が終了すると、主債務者である会社の法人格は消滅します。

これにより、主債務も消滅することになるとします。それ故、保証人は、主債務の消滅時効を援用することができないとするものです。

③ 消滅時効不適用とする見解

これは、主たる債務者である会社の破産手続が終了しても、保証の存する場合には、会社の法人格は存続し、主債務は存続すると考えます。

ただし、主債務の消滅時効については、破産手続が債権の引当となる責任財産の換価を経て終了した場合(配当を経て終結した場合のほか、換価を経た異時廃止の場合)には、破産債権の責任財産に対して及ぶ摑取力(債権の内容を実行するにあたって、債権の差押えをできることを意味します)を欠くことになり、この意味で、消滅時効制度によって保証人を保護する根拠が失われ、消滅時効制度の適用がなくなるとする見解です。

(4)最高裁判決の立場

上記の平成15年3月14日付最高裁判決は、上記②の立場を採用しました。

この立場に立つことにより、上記①の立場によるときには、保証人によって主債務の消滅時効の援用がなさることによる、主債務についての時効中断をして、債権の管理(維持保全)に努める必要性が大幅に減ります。

これは、主債務の債権者が金融機関である債権者以外でも、多くの事業会社における債権管理の問題でもあります。

また、これにより、だれを相手とするかという面倒な問題や、費用負担の問題なども回避されます。

この最高裁判決は、特に金融機関の債権管理実務に大きな影響を及ぼしました。

2 破産手続が終結しても、残余財産がある場合も同じか。

(1)破産手続が終結した会社に財産がある場合

破産手続が終了しても残余財産がある場合には破産した会社の法人格は消滅しないというのが、多くの裁判例です。

この場合には、法人格が存続する以上、主債務は消滅しません。

この場合主債務は消滅しないから、本最高裁の法理に従って、理解する限り、保証人が主債務の消滅時効を援用することは否定されないものと解されます。

(2)今回の事例

① 決算書に記載されていた「パソコン」

私が代理人としても申立てをした会社は、賃借した工場を明渡し、原状回復する際にすべての什器備品を廃棄処分したと聞き及んでいました。

また、直近2年の決算書に計上されている備品についての存否などを聞き取り、報告書にまとめ、申立て時の財産目録には何も計上しませんでした。

管財人との面談においても、代表者も決算書記載の当該動産(パソコン)について、不調になり、買い替えに伴い、廃棄処分した。つまり、すでに存在しないものでありましたが、決算書に計上されたままであったことを説明しました。

② 管財人の処理

管財人は、決算書に記載されたままであったパソコンについては、管財人作成の財産目録に計上し、債権者集会において、当破産財団からの放棄許可申請を行い、同集会において、破産裁判所にその申請が許可されました。

③ 本パソコンの所在

本パソコンは、破産手続き上は、破産財団帰属の財産(動産)として認識計上されましたが、法人代表者の説明では、廃棄処分済みですが、管財人は現物の所在(存在)が不明であるから、当然に管財人による換価や廃棄処分がなされていません。

そして、債権者集会において、そのパソコンを破産財団から放棄許可申請し、破産裁判所は許可したのです。

④ 破産手続き終結後、本パソコンは存在しているのか。

破産手続が終了しても残余財産がある場合には破産した会社の法人格は消滅しないという裁判上の扱いを前提とすると、このパソコンが破産手続き終結後、財団からは放擲されましたが、いまだ存在している(と誤解されかねない)という法律的な可能性があります。

すると、そのパソコンが残余財産としてあるとすれば、会社の法人格は消滅しないということなり、法人格が存続する以上、主債務は消滅しません。

⑤ 破産手続が終結した会社に対する訴訟の意味

原告である金融機関は、この会社を被告として、訴訟を提起しました。

破産手続の開始決定により、同社の代表取締役との委任関係は終結し、同決定と同時に選任された破産管財人も、法人の破産手続の終結により任務を終えました。

そこで、この法人を代表して訴訟追行する機関が存しないため、特別代理人を選任する申立てを行い、訴訟進行をはかったのです。

残余財産があるとの認定であれば、会社の法人格は消滅せず、主債務の時効を中断するため、判決を得ます。

他方、残余財産はないとの事実認定がなされ、それに基づく場合には、被告となった本法人の法人格は消滅したとして、消滅した法人を被告とする訴えとして扱われたのでしょう。

3 配当による破産手続終了後に残余財産がある場合の、残余財産の処理

(1)配当による破産手続き終結後も残余財産がある場合

当事務所が申し立てた法人破産は、代表者の急逝により、事業廃止を選択し、債務超過であったことから破産手続開始を申し立てた件において、工場倉庫として利用していた不動産が、管財人の尽力により、思いのほか高額で売却され、潤沢は配当財団が形成された弟子売却され事案がありました。

財団債権、破産債権、そして劣後的破産債権にも配当してもなお、余剰が数百万円あるという事案です。

(2)破産手続の終結した株式会社の清算手続

これについては、管財人は、破産裁判所と協議の上、破産会社の元代表者が株主総会の特別決議に基づき清算人と選任され、破産手続が終結した株式会社の清算人となって、管財人から余剰の残余財産を引き継ぐことになりました。

これも上記で検討したように、残余財産がある以上、破産手続が終結したとしても、その限りで法人格が残存し、当該法人の清算手続きをとることになったものと理解することが可能です。


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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 榎本 誉

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