景品表示法上問題となる不当表示として、有利誤認表示と優良誤認表示があります。
一般の方にはあまり馴染みのないものですが、広告を行う上では正しく理解しておくことが重要です。
このコラムではそれぞれの違いや実務上の運用について解説します。

1 景品表示法における表示とは?

(1)景品表示法の目的

景品表示法は、主に、事業者が主体となって行う「表示」について規制を定めています。
「表示」とは、景品表示法第2条第4項において、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものをいう。」とされています。

これは、商品の容器や包装における広告やポスター、チラシ、テレビ放送、インターネット広告など、およそ全ての広告を含みます。

このように、景品表示法は、規制を広く行うことにより、一般消費者が適切な選択を行うことを保護しているのです。

(2)景品表示法が規制する表示

景品表示法は、大きく分けて「有利誤認表示」、「優良誤認表示」というふたつのタイプの表示について規制を設けています。
これらは、「表示」であることは同じですが、細かい点で違いがあります。
以下では、それぞれの定義や実務上の運用について解説します。

2 有利誤認表示

(1)有利誤認表示とは

有利誤認表示とは、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される」表示のことをいいます。
つまり、商品やサービスの内容ではなく、価格等の商品・サービスの取引条件に関する表示のことです。

(2)実務上の運用

実務上特に問題となるのが、二重価格表示です。
これは、商品・サービスの安さを強調するために、事業者が自己の販売価格にその販売価格よりも高い他の価格を併せて記載することです。
実際、二つの価格を表示するということは多く行われています。
景品表示法上の不当表示となるのは、以下の要件を満たしたものになります。
① 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合
例:新品と中古品を比較する場合

② 比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合
例:比較対照価格が虚偽である場合

過去の販売価格を比較対照価格とする場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と認められれば、比較対照価格に根拠があるとされます。
具体的な判断基準としては、以下のものになります。
① セール期間を通して、直近8週間(8週間未満の場合はその期間)のうち、その価格で販売されていた期間が過半を占めていること(ただし、セール開始時点でセール期間を明示すれば要件を満たさなくなっても可)。
② その価格で販売していた期間が2週間以上であること。
③ セール開始時点で、その価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと。

3 優良誤認表示

(1)優良誤認表示とは

優良誤認表示とは、商品又は役務の内容に関する不当な表示のことを言います。
具体的には、商品や役務の品質に関する不当な表示のことであり、実務上問題となるのは、実際のものよりも優良であるとする表示です。

(2)実務上の運用

消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています。
これを「不実証広告規制」といいます。
この消費者庁の求めがあったにもかかわらず、期間までに資料が提出されない場合及び資料が合理的なものとは認められない場合は、不当表示とみなされます。

詳しく見ますと、資料の提出期限としては、消費者庁長官が資料の提出を求める文書を交付した日から15日を経過するまでの期間(正当な事由があると認められる場合を除く)とされています。

資料が合理的といえるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
次のいずれかに該当するもの
a 試験・調査によって得られた結果
b 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

実務では、消費者庁から事業者に対して合理的な根拠資料の提出を求めることは多く行われており、資料を提出しない・提出された資料が合理的なものでなければ、不当表示とみなされる運用がとられています。

4 まとめ

以上見てきたように、有利誤認表示と優良誤認表示はそれぞれ異なる規制であり、不当表示とならないためには、それぞれ注意が必要です。
有利誤認表示と優良誤認表示の詳細な解説については当事務所の他のコラムに掲載していますので、そちらも併せてご覧ください。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎
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