【交通事故】後遺障害等級認定の手続|後遺障害診断書・被害者請求・異議申立てを弁護士が解説

重傷を負った交通事故で、賠償額を決める最大の要素は後遺障害の等級です。等級がひとつ違えば、慰謝料と逸失利益を合わせて数百万円から数千万円の差が生じます。

その等級を決めるのは、裁判所でも保険会社でもなく、まずは損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所です。そして調査事務所が見るのは、ご本人ではなく、提出された書面と画像だけです。

つまり、等級認定は「書面の勝負」です。どれほど重い症状があっても、書面に表れていなければ評価されません。本記事では、等級認定の手続と、結果を左右するポイントについて、埼玉県大宮の弁護士が解説します。

等級認定の全体像

等級認定の全体像

症状固定から認定までの流れ

治療を続けても症状の改善が見込めなくなった時点を「症状固定」といいます。症状固定に至ったら、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、これを自賠責保険に提出して等級の認定を求めます。

提出方法には、相手方の任意保険会社に手続を任せる「事前認定」と、被害者自身が相手方の自賠責保険会社に直接請求する「被害者請求」の二つがあります。

申請後、自賠責損害調査事務所が書面と画像を審査し、通常は一か月から三か月程度で結果が通知されます。高次脳機能障害や脊髄損傷といった重度の事案では、専門部会での審査となるため、半年近くかかることもあります。

事前認定と被害者請求の違い

事前認定は、相手方保険会社が資料を集めて手続をしてくれるため、手間がかかりません。しかし、どの資料が提出されたのかを被害者側が把握できず、意見書を添えることもできません。相手方に有利な資料の出し方をされても分かりません。

被害者請求は、自分で資料を揃える必要がありますが、提出する資料を自分で選び、医師の意見書や弁護士の意見書を添付できます。また、認定されればその時点で自賠責保険金を先に受け取れるという利点もあります。

重傷事案では、被害者請求を選ぶべきです。当事務所でも、原則として被害者請求により手続を進めています。

併合・準用・加重の仕組み

複数の後遺障害が残った場合、等級は「併合」によって繰り上げられます。第一三級以上が二つ以上あれば一級繰上げ、第八級以上が二つ以上あれば二級繰上げ、第五級以上が二つ以上あれば三級繰上げです。第一四級が複数ある場合は繰上げがなく、第一四級のままです。

等級表に明記されていない後遺障害であっても、各等級に相当するものについては、その等級に準じて認定されます。これを「準用」といいます。動揺関節や骨盤骨の変形はその典型です。

また、事故前から同一部位に障害があった場合には、加重障害として、加重後の等級に対応する保険金額から既存障害に対応する金額を差し引いた額が支払われます。

これらの仕組みを理解していないと、本来認定されるべき等級を取りこぼすことになります。個々の症状を一つひとつ丁寧に拾い上げ、それぞれについて等級を主張していくことが重要です。

重度事案は専門部会で審査される

高次脳機能障害、脊髄損傷、非器質性精神障害、RSD(CRPS)といった判断の難しい事案は、自賠責損害調査事務所の上部機関である地区本部や本部の専門部会で審査されます。

専門部会では、医師である顧問医の意見を踏まえて判断されます。そのため、提出する資料も、医学的な議論に耐えるものでなければなりません。画像の所見、神経学的所見、検査数値、経過の一貫性。これらが揃って初めて、重い等級が認定されます。

後遺障害診断書がすべてを決める

後遺障害診断書がすべてを決める

医師は賠償の専門家ではない

後遺障害診断書は、主治医が作成します。しかし医師は治療の専門家であって、賠償実務の専門家ではありません。どの項目をどう書けば等級が認定されるのかを知らないまま、簡潔に書かれてしまうことがよくあります。

「症状は軽快傾向」「日常生活に大きな支障なし」といった記載がひとつあるだけで、非該当となることもあります。書き直しを頼むのは容易ではありませんから、作成前の準備が決定的に重要です。

記載が漏れやすい項目

関節の可動域については、主要運動と参考運動の双方について、自動値と他動値の両方を角度計で測定した数値が必要です。片方しか書かれていないケースが多くみられます。

神経学的所見については、腱反射、病的反射、徒手筋力テスト、知覚障害の範囲を具体的に記載してもらいます。「しびれあり」だけでは足りません。

画像所見については、どの検査のどの部位にどのような所見があるのかを明記してもらいます。「MRI上異常なし」と書かれてしまうと、それだけで神経症状の立証が困難になります。

そのほか、脊柱の可動域、下肢の短縮の有無、動揺関節の有無、装具の使用状況、膀胱直腸障害の有無なども、漏れやすい項目です。

自覚症状は具体的に

自覚症状欄は、被害者が伝えた内容がそのまま書かれます。「腰が痛い」ではなく、「起床時から腰部に持続する鈍痛があり、三〇分以上立っていられない。長時間の座位で右下肢外側にしびれが走る」というように、部位・性質・頻度・程度・生活への支障を具体的に伝えてください。

診察の前にメモを作って渡す方法が有効です。

一貫性のある通院記録

症状の一貫性・連続性も審査されます。通院間隔が空いていたり、途中で症状の訴えが消えていたりすると、症状の存在自体を疑われます。

保険会社から治療費を打ち切られても、健康保険に切り替えて通院を継続してください。治療の中断は、等級認定において不利にしか働きません。

自賠責保険金を先に受け取る意味

被害者請求により等級が認定されると、その時点で自賠責保険金が支払われます。別表第一の第一級であれば四〇〇〇万円、第二級であれば三〇〇〇万円、別表第二の第一級であれば三〇〇〇万円、第三級であれば二二一九万円といった金額です。

重傷事案では、示談成立までに一年以上かかることも珍しくありません。その間、収入が途絶え、介護費用がかさみます。先に自賠責保険金を受け取っておくことで、生活を維持しながら、腰を据えて交渉に臨むことができます。

これは事前認定にはない、被害者請求の大きな利点です。

日常生活状況報告書とご家族の記録

高次脳機能障害や脊髄損傷の事案では、後遺障害診断書に加えて「日常生活状況報告表」の提出が求められます。これはご家族が記入する書面で、事故前と事故後で何がどう変わったのかを記載するものです。

ここで遠慮して「だいたいできています」と書いてしまうと、実態より軽く評価されます。ガスの火を消し忘れた、同じ商品を何度も買ってきた、道に迷って帰れなくなった、着替えに三〇分かかる、トイレに一人で行けない——こうした具体的なエピソードを、日付とともに記録しておいてください。

就労中の方であれば、勤務先に作成してもらう職場での状況報告も有力な資料になります。ミスの内容、配置転換の経緯、周囲の支援の程度を書面化しておきましょう。

ご家族が毎日つけた記録は、数年後の交渉や訴訟で、最も説得力のある証拠になります。

認定に納得できない場合

認定に納得できない場合

異議申立て

認定結果に不服がある場合には、回数の制限なく異議申立てができます。ただし、同じ資料を再提出しても結論は変わりません。前回の認定理由を分析し、何が足りなかったのかを特定したうえで、不足していた立証を補う必要があります。

具体的には、追加の画像検査、神経心理学的検査、電気生理学的検査(筋電図、神経伝導速度検査)の実施、主治医への医療照会、医師面談による意見書の取得、日常生活状況報告書の作成といった作業です。

認定結果の理由を読み解く

認定結果の通知書には、認定された等級とその理由が記載されています。重要なのは、この理由の部分です。

「画像上、明らかな異常所見が認められない」「他覚的所見に乏しい」「症状の一貫性が認められない」といった記載があれば、何を補えばよいかが分かります。逆に、この分析をせずに同じ資料で異議申立てをしても、結果は変わりません。

異議申立てに期限はありませんが、自賠責保険金の請求権には、症状固定の翌日から三年という時効があります。時効の完成が迫る場合には、時効中断(更新)の申請書を提出しておく必要があります。

紛争処理機構への申請

一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構に調停を申し立てる方法もあります。弁護士、医師、学識経験者で構成される紛争処理委員が審査します。

ただし、原則として一回限りの手続であり、申請後は異議申立てができなくなりますので、順序を誤らないよう注意が必要です。

訴訟で争う

最終的には、訴訟において裁判所に後遺障害の程度を判断してもらう方法があります。裁判所は自賠責の認定に拘束されませんので、自賠責より高い等級や喪失率が認められることがあります。

裁判例には、自賠責保険より高い等級や労働能力喪失率が認定された事案が、高次脳機能障害、上下肢の機能障害、外貌醜状、胸腹部臓器の障害など、各分野について多数集積されています。「自賠責が非該当だったから諦める」必要はありません。

症状固定の時期を誤らない

症状固定の時期を誤らない

早すぎる症状固定は低い等級につながる

保険会社は、受傷から六か月程度を目安に「そろそろ症状固定ではないか」と打診してきます。むち打ち症であればともかく、重傷事案でこれに応じる理由はありません。

脊髄損傷や高次脳機能障害では、一年から二年のリハビリを経て、ようやく障害の全体像が見えてきます。特に小児や学生の場合、進学の段階で初めて学習上の困難が顕在化することがあります。

打切り後も治療を続ける方法

治療費を打ち切られても、健康保険(業務中・通勤中の事故であれば労災保険)に切り替えれば治療を継続できます。健康保険を使う場合には、「第三者行為による傷病届」を保険者に提出する必要があります。

打ち切り後に自己負担した治療費も、必要性・相当性が認められれば、後から損害として請求できます。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリット

診断書の作成前から関与できる

後遺障害診断書は、提出してしまうと修正が困難です。作成前の段階で、必要な検査と記載事項を整理し、主治医あての依頼書としてお渡しすることで、不備を未然に防ぎます。

被害者請求を代行できる

被害者請求には、後遺障害診断書のほか、交通事故証明書、事故発生状況報告書、診断書・診療報酬明細書、印鑑証明書など多数の書類が必要です。これらの収集と作成を代行します。

意見書を添付できる

自賠責の審査は書面審査です。医学的所見と等級認定基準を結びつけ、なぜこの等級に該当するのかを論理的に説明した意見書を添付することで、審査の質が変わります。

当事務所のサポート内容

当事務所のサポート内容

①現状の整理と不足資料の特定

まず診療記録と画像を取り付け、現時点で認定が見込まれる等級と、認定のために不足している資料を整理します。

②症状固定時期の助言

症状固定の時期について、医学的な見通しを踏まえて助言します。保険会社からの打切りに対しては、健康保険や労災保険への切替えをご案内します。

③後遺障害診断書の作成支援

記載すべき検査項目と内容をまとめた依頼書を主治医にお渡しし、記載漏れを未然に防ぎます。

④被害者請求・異議申立て・訴訟

申請は被害者請求により行い、必要に応じて弁護士名義の意見書を添付します。認定結果に不服があるときは、不足していた立証を補ったうえで異議申立てを行い、それでも覆らない場合には訴訟での主張を検討します。

おわりに

おわりに

等級認定は、書面で決まります。そして書面を作るのは、賠償実務を知らない医師と、被害者ご本人です。ここに、適正な等級が得られない最大の原因があります。

症状固定を打診された、後遺障害診断書を書いてもらうことになった、あるいは認定結果に納得がいかない。そのいずれの段階でも、まだできることがあります。

示談書に署名をする前に、一度ご相談ください。弁護士費用特約をご利用いただける場合はご自己負担なく、特約がない場合も原則として着手金無料で対応しております。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 遠藤吏恭

交通事故

弁護士登録後、交通事故による後遺障害・慰謝料増額・保険会社との示談交渉など多数の事案を担当。不当要求防止責任者講習の講師として培った毅然とした交渉力を武器に、保険会社との粘り強い折衝を得意とする。交通事故問題について、テレビ朝日「グッド!モーニング」出演歴があり、また中央大学法科大学院・埼玉工業大学講師も務める。