
本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。
| 【シリーズ】交通事故の死亡慰謝料 前編(本記事):基準額の解説・一家の支柱・配偶者・母親の裁判例 後編:独身・子供・高齢者・内縁・胎児の裁判例と賠償請求の実務 |
交通事故で大切な家族を突然失ったご遺族にとって、加害者側の保険会社から提示される「死亡慰謝料」の金額が適正かどうか判断することは容易ではありません。「この金額で本当によいのか」「もっと受け取れるのではないか」という疑問を抱えながら、深い悲しみの中で示談交渉を迫られるケースが少なくありません。
死亡慰謝料には、自賠責保険の基準・任意保険会社の基準・弁護士基準(裁判基準)の3種類があり、どの基準を用いるかによって金額が大きく異なります。遺族が弁護士に依頼せず保険会社と直接交渉した場合、本来受け取れる金額を大きく下回る形で示談してしまうことがあります。
本記事(前編)では、死亡慰謝料の法的性質・3つの算定基準の比較・弁護士基準の具体的な金額、そして「一家の支柱」「母親・配偶者」区分の裁判例を解説します。独身・子供・高齢者・内縁・胎児に関する裁判例は後編で取り上げます。なお、本記事が引用する判例は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称・赤い本)」に掲載されたものです。
死亡慰謝料とは

死亡慰謝料とは、交通事故による死亡という最も重大な結果に対して支払われる精神的損害への補償です。法律上、死亡慰謝料には次の2種類が含まれています。
被害者本人の慰謝料
被害者自身が死亡によって被った精神的苦痛に対する慰謝料です。被害者は死亡と同時に損害賠償請求権を取得し、その権利を相続人が引き継ぎます(相続構成)。
近親者固有の慰謝料
民法711条は、被害者の父母・配偶者・子が、被害者の死亡によって固有の慰謝料請求権を持つことを定めています。これは相続とは別に、遺族が自ら取得する権利です。同条に準ずる者(内縁配偶者・養親など)も請求できる場合があります。
赤い本の基準では、被害者本人分と近親者固有分を合算した「総額」として死亡慰謝料の目安を示しています。遺族間の内部的な配分については基準化されていません。
死亡慰謝料の3つの算定基準と金額の違い

死亡慰謝料には3つの算定基準があり、どの基準が適用されるかによって受取額が大きく変わります。
① 自賠責基準
自動車損害賠償保障法に基づく最低補償の基準です。死亡慰謝料は被害者本人分350万円+遺族固有分(請求権者数に応じて550万円・650万円・750万円)で、合計上限1,100万円となっています。保険会社がこの基準で示談を提案してくることがあります。
② 任意保険基準
各保険会社が独自に設定している内部基準です。自賠責基準を上回るものの、弁護士基準には及ばないのが通常です。
③ 弁護士基準(裁判基準)
裁判所が採用する基準で、赤い本等に基づいて算定します。保険会社提示額と比較して大きく異なる金額になることがあります。
| 区分 | 自賠責基準(上限) | 弁護士基準(目安) |
| 一家の支柱 | 1,100万円 | 2,800万円 |
| 母親・配偶者 | 1,100万円 | 2,500万円 |
| その他(独身等) | 1,100万円 | 2,000〜2,500万円 |
上記のとおり、弁護士基準は自賠責基準の2〜2.5倍程度になります。弁護士に依頼することでこの差額を追求できる可能性があります。
弁護士基準(赤い本)の基準額と注意事項

赤い本2026年版では、死亡慰謝料の目安を次の3区分で示しています。
| 一家の支柱 2,800万円 母親、配偶者 2,500万円 その他(独身男女・子供・幼児等) 2,000万円〜2,500万円 ※本基準は具体的な斟酌事由により増減されるべき一応の目安を示したものである。 ※「その他」とは独身の男女、子供、幼児等をいう(注1)。 ※本基準は死亡慰謝料の総額であり、民法711条所定の者とそれに準ずる者の分も含まれる(注2)。 ※死亡慰謝料の配分については、遺族間の内部の事情を斟酌して決められるが、基準化はしない(注3)。 |
「一応の目安」とある通り、被害者の年齢・職業・家族構成・加害者の態度などの具体的事情によって増減されます。以下の裁判例でも、各事案の特殊事情を反映した金額認定がなされています。
「一家の支柱」の裁判例

一家の支柱とは、家族の生計を主として支えていた被害者のことです。会社員・自営業者のほか、専業主婦(主夫)が一家の支柱として認められたケースも含まれます。
裁判例① 高齢の親を扶養していた大学教授(男・58歳・独身)
| 本人分2,400万円、母・妹と2人の弟に各150万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平10.12.16 大阪地判平12.9.21 交民33・5・1550) |
裁判例② 相続放棄がされた被害者(男・57歳)
| 相続放棄した妻300万円、子2人各150万円を認めたほか、相続財産管理人の請求に係る本人分として2,500万円、合計3,100万円を認めた。 (事故日平8.10.20 神戸地判平13.2.28 自保ジ1416・2) |
裁判例③ 離婚後も扶養を続けた兼業主婦(49歳)
| 娘が9歳のときに離婚し、以降娘が17歳になるまで扶養してきた兼業主婦につき、本人分2,600万円、娘400万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平15.12.5 東京地判平17.7.12 交民38・4・938) |
裁判例④ 大手監査法人勤務職員(男・34歳)
| 本人分3,000万円、妻200万円、父母各100万円、合計3,400万円を認めた。 (事故日平17.7.11 東京地判平20.8.26 交民41・4・1015) |
裁判例⑤ 1つの事故で生後11か月の長男とともに死亡した被害者(男・21歳)
| 本人分2,800万円、妻400万円、両親に各100万円、合計3,400万円を認めた。 (事故日平19.2.1 秋田地判平19.2.1 自保ジ1861・105) |
裁判例⑥ 無報酬の取締役(男・66歳、年金・配当収入あり)
| 本人分2,500万円、妻300万円、子2人各100万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平22.7.3 神戸地判平25.3.11 自保ジ1903・138) |
裁判例⑦ 会社員(男・46歳)
| 本人分2,800万円、妻250万円、子2人各100万円、合計3,250万円を認めた。 (事故日平25.6.9 千葉地松戸支判平27.7.30 自保ジ1955・99) |
裁判例⑧ 研究職会社員(男・39歳)
| 3人の子(7歳・後に自閉症と診断される発達課題のある5歳・8か月)を1人で養育することとなり、育児休業を1年延長した小学校教員の妻400万円、子3人各200万円、合計3,100万円を認めた。 (事故日平30.12.15 大阪地判令4.2.18 交民55・1・188) |
裁判例⑨ 母子家庭で大学生の娘がいる有職主婦(41歳)
| 本人分2,300万円、子400万円、両親各150万円、合計3,250万円を認めた。 (事故日令2.2.14 仙台地判令5.8.17 自保ジ2182・111) |
「母親・配偶者」の裁判例

母親・配偶者の区分は基準額2,500万円です。有職・専業・兼業を問わず、家庭内における役割の大きさが評価されます。
裁判例① 有職(公務員)主婦(30歳)
| 横断歩道上を歩行中の事故で、事故後帝王切開により分娩した後死亡。夫1,500万円、子2人各750万円、父母各100万円、合計3,200万円を認めた。 (事故日平8.1.19 横浜地判平9.4.1.30 自保ジ980・2) |
裁判例② 有職主婦(53歳)
| 運転者及び会社のほか、運転者の極度の疲労状態を認識しながら乗車を止めさせなかった会社の運行管理者及びその代務者、適切な是正措置を行わなかった労務管理者にも不法行為責任を認め、死に至る態様が極めて凄惨で残酷なこと、居眠運転で追突したことなどから本人分2,700万円、子2人各200万円、母100万円、合計3,200万円を認めた。 (事故日平14.8.10 名古屋地判平19.7.31 交民40・4・1064) |
裁判例③ 主婦(39歳)
| 本人分2,200万円、夫250万円、子2人各150万円、両親各150万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平18.7.13 京都地判平21.11.18 自保ジ1827・104) |
裁判例④ 主婦(55歳)
| 本人分2,400万円、夫及び子各200万円、父母各100万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平20.5.22 岡山地判平22.2.25 交民43・1・250) |
裁判例⑤ 専業主婦(42歳)、2歳の子(次男)もほぼ同時期に死亡
| 1つの事故で2歳の子(次男)もほぼ同時期に死亡したことを考慮し、母親本人分2,400万円、次男本人分2,000万円、長男400万円、合計5,200万円を認めた。 (事故日平20.8.29 東京地判平23.10.4 交民44・5・1257) |
裁判例⑥ 家業を手伝う主婦(59歳)
| 本人分2,400万円、夫200万円、子3人各100万円、両親各50万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平22.4.13 さいたま地判平24.1.31 自保ジ1876・135) |
裁判例⑦ 専業主婦(34歳)
| 本人分2,200万円、夫200万円、子2人各200万円、実父母と義父母各20万円、合計2,880万円を認めた。 (事故日平22.4.6 さいたま地判平24.10.26 自保ジ1886・81) |
裁判例⑧ 有職主婦(32歳)、加害者が謝罪しなかったケース
| 加害者が公判廷で謝罪したいと述べながら結局謝罪せず、さらに裁判所から示唆を受けたにもかかわらず謝罪しなかったことなどから、本人分2,400万円、夫200万円、両親各150万円、合計2,900万円を認めた。 (事故日平22.1.9 さいたま地判平24.10.22 交民45・5・1284) |
裁判例⑨ 保育士(女・31歳)
| 本人分2,500万円、夫200万円、子200万円、父母各100万円、合計3,100万円を認めた。 (事故日平23.8.4 千葉地判平26.9.25 交民47・5・1224) |
裁判例⑩ 主婦(70歳)
| 本人分2,400万円、夫200万円、子2人各100万円、合計2,800万円を認めた。 (事故日平25.1.21 名古屋地判平26.10.31 交民47・5・1368) |
裁判例⑪ 居眠り運転車両に追突されて死亡した主婦(68歳)
| 居眠り運転は飲酒運転や無免許運転ではなくとも、過失の程度としては重いこと、被害者は追突後も生存し車両内で焼死するという悲惨な経過をたどったこと、夫と子2名は葬儀等のための休業損害と交通費、弟は交通費の各損害があったことを慰謝料算定事由として考慮し、本人分2,500万円、夫150万円、子2人に各100万円、母・姉・弟各50万円、合計3,000万円を認めた。 (事故日平30.2.5 京都地判令2.2.19 交民53・1・205) |
裁判例⑫ 事故の7日後から病院臨時職員に採用内定していた家事専従者(女・32歳、死亡33歳)
| 傷害分17万円のほか、本人分2,400万円、子2人各200万円、合計2,800万円を認めた。 (事故日平27.3.25 東京地判令2.3.3 交民53・2・323) |
裁判例⑬ 加害者同一の第1事故直後の第2事故で死亡した専業主婦(64歳)
| 小雨が降っていたとはいえ白昼明るい橙色のレインウエアを着て、第1事故で転倒していた被害者を看過し標識したことは重大過失とし、本人分2,800万円、夫240万円、子3名各120万円、合計3,400万円を認めた。 (事故日令2.3.10 東京地判令4.1.21 交民55・1・30) |
裁判例⑭ 専業主婦(71歳)
| 被害者ら夫婦が実子のように育て養子となった孫3名各175万円、幼少の孫らを置いて家を出た後、刑務所から金銭等を送って欲しいとの書面を送る程度の交流があったにすぎない実娘50万円、合計2,700万円を認めた。 (事故日令1.7.11 京都地判令4.2.21 交民55・1・199) |
裁判例⑮ 女児(3歳)と共に死亡した専業主婦(31歳)
| 加害者がブレーキと間違えてアクセルを踏み続け、制限速度を時速46km超過する速度で交差点に進入した事故。加害者が事故前から医師より医療上の運転忌避指導を受けていながら運転が必須であるとは認めがたい事情で安易に運転したこと等から、主婦の本人分2,600万円、夫300万円、父200万円の合計3,100万円、女児の本人分2,600万円、同じビルに居住する祖父母各75万円、居住しない祖父50万円の合計3,100万円を認めた。 (事故日平31.4.19 東京地判令5.10.27 判タ1522・167) |
死亡慰謝料が増額・減額される主な事由

増額が認められる主な事由
- 加害者が飲酒運転・無免許運転・居眠り運転をしていた
- 事故後も加害者が誠実な謝罪をしなかった・不合理な弁解を続けた
- 死亡に至る態様が特に凄惨・残酷だった
- 子供や複数の家族が同一事故で死亡した
- 加害者が事後的に証拠隠滅・逃亡などを行った
減額が考慮される主な事由
- 被害者自身に過失があった(過失相殺)
- 被害者に既往症・素因があった(素因減額)
- 被害者が高齢で就労可能年数が短い(逸失利益の文脈で)
慰謝料の計算例(自賠責基準 vs 弁護士基準)

| 【設例】一家の支柱(男・45歳)・妻・子2人の家族構成の場合 ●自賠責基準 被害者本人分:350万円 遺族固有分:請求権者3名以上 → 750万円 合計:1,100万円 ●弁護士基準(赤い本・一家の支柱) 死亡慰謝料総額の目安:2,800万円 → 差額:1,700万円(弁護士基準が約2.5倍) ※死亡慰謝料のほかに、逸失利益・葬儀費用・弁護士費用等も請求できます。 |
逸失利益の計算式
| 【計算式】 逸失利益 = 基礎収入 × (1 − 生活費控除率) × ライプニッツ係数(就労可能年数対応) 【設例】男・45歳・年収600万円・生活費控除率30%の場合 就労可能年数:67歳 − 45歳 = 22年 → ライプニッツ係数:15.167(3%) 逸失利益:600万円 × 0.7 × 15.167 ≒ 6,370万円 ※生活費控除率は被扶養者の人数等によって異なります(一般的に30〜50%)。 |
弁護士に相談すべき理由

保険会社提示額との差額を取り戻す
保険会社は自賠責基準・任意保険基準で示談を提案してくることが多く、弁護士基準との差額は数百万円〜1,000万円以上に及ぶことがあります。弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準での賠償額算定を求めることができます。
増額事由の適切な主張
飲酒運転・無謀運転・事故後の不誠実な対応など、慰謝料増額につながる事情を法的に適切に主張することは、専門知識なしには困難です。弁護士は裁判例を踏まえた増額交渉を行います。
逸失利益・葬儀費用等のトータル交渉
死亡事故の賠償請求は、慰謝料だけでなく、逸失利益・葬儀関連費用・近親者の慰謝料等を含む複合的な交渉になります。弁護士はすべての項目を漏れなく請求します。
精神的な負担の軽減
深い悲しみの中で保険会社と交渉することは、遺族にとって大きな精神的負担です。弁護士に依頼することで、遺族が直接交渉する必要がなくなります。
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まとめ

死亡慰謝料についての重要なポイントをまとめます。
- 死亡慰謝料には被害者本人分と近親者固有分が含まれる
- 弁護士基準(赤い本)の目安:一家の支柱2,800万円・母親配偶者2,500万円・その他2,000〜2,500万円
- 自賠責基準(上限1,100万円)と弁護士基準の差額は1,400〜1,700万円以上になることもある
- 飲酒運転・不誠実な対応等で増額が認められた判例が多数ある
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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所について

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、さいたま市大宮区に拠点を置く、設立35年以上の歴史を持つ法律事務所です。埼玉県内トップクラスの実績を誇り、交通事故専門チームを擁して多くの被害者・遺族の方をサポートしてきました。
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