
本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。
交通事故でバイクや自転車に乗っているとき、あるいは車に追突されて転倒したとき、足(下腿)に強い衝撃を受けて腓骨(ひこつ)を骨折してしまうケースがあります。腓骨は脛骨(けいこつ)の外側にある細い骨で、一見「補助的な骨」に見えることもありますが、足首を安定させ、体重を分散させる重要な役割を担っています。
腓骨骨折は、脛骨骨折と同時に起きることも多く、骨折部位によっては足首の関節機能に影響が残ったり、偽関節(骨が正常につながらない状態)が生じたりすることがあります。また、腓骨は脛骨に比べて「軽視されがち」な骨であるため、後遺障害の申請が不十分になり、本来受け取れるはずの補償を逃してしまうケースも少なくありません。
本記事では、交通事故による腓骨骨折の受傷メカニズム、治療の流れ、後遺障害等級と認定のポイント、そして慰謝料・賠償金の考え方まで、交通事故チームの弁護士が分かりやすく解説します。
腓骨骨折とは―解剖の基本と交通事故における受傷メカニズム

腓骨はどんな骨か
私たちの膝から足首にかけての「すね」の部分は、2本の骨で構成されています。内側(親指側)の太い骨が脛骨(けいこつ)、外側(小指側)の細い骨が腓骨(ひこつ)です。腓骨は脛骨と並走する長管骨(ちょうかんこつ)で、体重の約6分の1を支える役割を持っています。
腓骨の上端(膝に近い側)は「腓骨頭(ひこつとう)」と呼ばれ、膝の外側に出っ張りとして触れることができます。下端は足の外くるぶし(外果)を形成しており、足首関節の安定に欠かせない構造になっています。脛骨・腓骨・距骨(きょこつ)の3つの骨が合わさって足首(足関節)を形成しているため、腓骨が骨折すると足首の安定性が大きく損なわれることがあります。
また、腓骨の近位端(腓骨頭付近)には、腓骨神経(ひこつしんけい)が巻き付くように走っています。この神経が傷つくと、足首を上に持ち上げる動きができなくなる「下垂足(かすいそく)」という症状が生じることがあります。
交通事故における骨折メカニズム―部位別
腓骨骨折は、骨折した位置によって「近位端骨折(きんいたんこっせつ)」「骨幹部骨折(こつかんぶこっせつ)」「遠位端骨折(えんいたんこっせつ)」の3種類に分類されます。それぞれ受傷のしかたや起きやすい後遺症が異なります。
① 近位端骨折(腓骨頭・膝に近い側)
膝の外側に直接強い力が加わったときに起きやすい骨折です。バイクや自転車に乗っているときに対向車や側面から衝突された場合、あるいは転倒して膝を強打した場合に発生します。この部位には腓骨神経が密接しているため、骨折と同時に腓骨神経麻痺(下垂足)を合併するリスクがあります。
② 骨幹部骨折(すねの中間部位)
下腿(すね)の中央部に強い外力が直接加わることで発生します。脛骨骨折と同時に起きることが多く、この場合は開放骨折(皮膚を突き破る骨折)になりやすいのが特徴です。骨幹部中・下1/3部は血流が乏しい部位であるため、骨がうまくつながらず偽関節が残りやすいとされています。
③ 遠位端骨折(外くるぶし・足首に近い側)
足首をひねる力(内反・外反)が加わったときに外くるぶしの付近で骨折するパターンです。「足関節外果骨折(そくかんせつがいかこっせつ)」とも呼ばれます。転倒の際に足首に無理な力がかかることで生じやすく、周囲の靱帯損傷を合併することも多い骨折です。程度の重いものはウェーバー分類のC型骨折に相当し、手術が必要になることがあります。
治療の流れと治療期間の目安
腓骨骨折の治療は、骨折の転位(ずれ)の程度と骨折部位によって大きく異なります。
- 保存療法(ギプス固定): 転位が小さく、骨折が安定している場合に選択されます。ギプス固定を5〜7週間程度行い、骨癒合を待ちます。腓骨単独骨折の場合は歩行が可能なケースもあります。
- 手術療法(プレート・スクリュー固定): 転位が大きい場合や、足首関節への影響が大きい場合に行われます。金属製のプレートやスクリューで骨を固定し、安定した状態で骨癒合を促します。術後は段階的なリハビリが必要で、骨癒合が完成するまで3〜4か月程度かかることがあります。
治療終了後も痛みや関節の動きにくさが残る場合は、「症状固定」と判断され、後遺障害の申請を検討することになります。
腓骨骨折で認定されうる後遺障害等級

治療を続けても改善が見込めなくなった時点で「症状固定」と診断されます。症状固定後に残った症状は「後遺障害」として認定申請をすることができます。腓骨骨折の後遺障害は、骨折部位と残存症状の種類によって異なる等級が認定される可能性があります。
機能障害(関節の可動域制限)
最も多く問題になるのは、膝関節(近位端骨折)または足首関節(遠位端骨折)の可動域制限です。健側(怪我のない側)の関節可動域と比較して、障害が残った側の可動域がどの程度制限されているかによって以下の等級が認定されます。
| 等級 | 認定基準(足関節または膝関節) | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
| 8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(強直など) | 830万円 |
| 10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(健側の1/2以下) | 550万円 |
| 12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(健側の3/4以下) | 290万円 |
可動域の測定は、日本整形外科学会の基準に従い角度計で5度刻みで行います。測定値が不正確だと正当な等級が認定されない場合があるため、測定時に自身の症状をしっかり伝えることが重要です。
変形障害(骨の変形・偽関節)
骨折が癒合しても変形したまま固まってしまった場合、または骨がうまくつながらず偽関節(骨折部が関節のようにぐらぐらする状態)が残った場合に問題になります。
| 等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
| 7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの(常に硬性補装具が必要) | 1,000万円 |
| 8級10号 | 1下肢に偽関節を残すもの(常に補装具は不要だが偽関節が残る) | 830万円 |
| 12級8号 | 長管骨(腓骨)に変形を残すもの(外部から視認できる程度の変形) | 290万円 |
12級8号の認定には、レントゲン上で変形が確認できるだけでは不十分で、外見から見ても変形が明らかにわかる状態(15度以上の屈曲変形など)であることが必要です。なお、腓骨「単独」の変形の場合、脛骨骨折を伴う場合に比べて認定がより厳しく判断される傾向があります。
また、骨幹部の骨折では、斜骨折のケースではレントゲンだけでは骨癒合の有無の判断が難しいことがあります。この場合、CT検査が偽関節の立証に有用です。
神経症状(痛み・しびれ)
| 等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの(画像等で原因が医学的に証明できる) | 290万円 |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの(画像証明はできないが医学的に説明できる) | 110万円 |
痛みの原因が画像で「証明」できれば12級13号、画像では確認できないが症状の一貫性・事故との因果関係が説明できれば14級9号となります。骨折の態様、治療の継続状況、神経学的検査結果などが総合的に判断されます。
短縮障害・腓骨神経麻痺
骨折の影響で下肢が短縮してしまった場合、以下の等級が問題になります。
- 13級8号:1下肢を1cm以上短縮したもの(慰謝料:180万円)
- 10級8号:1下肢を3cm以上短縮したもの(慰謝料:550万円)
- 8級5号:1下肢を5cm以上短縮したもの(慰謝料:830万円)
また、腓骨近位端骨折に特有の合併症である腓骨神経麻痺(下垂足)が残った場合は、下肢の機能障害として高い等級が認定される可能性があり、専門的な評価が重要です。
慰謝料の3つの算定基準
交通事故の慰謝料には、3つの算定基準があります。どの基準を用いるかによって受け取れる金額が大きく変わります。
自賠責基準:自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)から支払われる最低限の補償です。3つの基準のなかで最も低く設定されています。1日あたり4,300円を基本として治療日数に応じて計算します。
任意保険基準:加害者が加入する任意保険会社が社内規定に基づいて提示する金額です。自賠責基準よりは高いですが、次に述べる弁護士基準には及びません。保険会社が最初に提示してくる金額は、通常この基準またはそれに近い水準です。
弁護士基準(裁判基準):過去の裁判例をもとに策定された基準で、「赤い本」と呼ばれる書籍に示された金額が目安となります。3つの基準のなかで最も高額であり、法的に認められる正当な賠償水準です。弁護士が介入して交渉または訴訟を行った場合に実現しやすい水準です。
入通院慰謝料の計算例―自賠責基準vs弁護士基準

腓骨骨折は骨折を伴う重傷ですので、弁護士基準では「骨折等重傷用の別表Ⅰ(下表参照)」が適用されます。むちうちに適用される別表Ⅱより高い金額が設定されています。
計算例:入院1か月・通院5か月の場合
【自賠責基準での計算】
自賠責基準:1日4,300円 × min(治療日数×2, 総治療期間)
例:実治療日数80日 → 80×2=160日 < 総治療期間180日のため 160日を採用
4,300円 × 160日 = 688,000円(約69万円)
【弁護士基準での計算】(別表Ⅰ適用)
入院1か月・通院5か月のケース:別表Ⅰ基準額 → 約149万円
(保険会社提示との差額:149万円 − 69万円 ≒ 約80万円の差)
このように、同じ治療期間であっても、算定基準の違いにより慰謝料の金額は大きく異なります。また入院期間や通院期間が長い場合、その差はさらに広がります。
腓骨骨折で請求できる損害賠償の項目

後遺障害が残った場合に請求できる主な賠償項目は以下のとおりです。
- 治療関係費:治療費・入院費・通院交通費・装具代(松葉杖・サポーターなど)・リハビリ費用。
- 休業損害:骨折により仕事を休んだ期間の収入減。会社員はもちろん、主婦・パートタイム・自営業者にも認められます。
- 入通院慰謝料:入院・通院を強いられたことによる精神的苦痛への補償。
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことによる将来にわたる精神的苦痛への補償。
- 後遺障害逸失利益:後遺障害により将来の労働能力が低下し、得られなくなる収入への補償。
逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は以下の計算式で求めます。
| 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
- 基礎収入:事故時の年収(給与所得者は源泉徴収票などで確認)。
- 労働能力喪失率:認定等級に応じて定められた割合(例:12級=14%、10級=27%、8級=45%)。
- 労働能力喪失期間:症状固定時から67歳までの年数が基本。
- ライプニッツ係数:将来の収入を現在の価値に換算するための係数(年数に対応した定型値)。
計算例:等級12級7号・年収500万円・35歳の場合
基礎収入:500万円
労働能力喪失率:14%(12級)
労働能力喪失期間:67歳-35歳=32年 → ライプニッツ係数 19.806
逸失利益 = 500万円 × 0.14 × 19.806 ≒ 約1,386万円
腓骨骨折で弁護士に相談すべき理由

理由① 腓骨は「軽視されがち」な骨
腓骨は体重の6分の1しか支えていないため、「脛骨に比べてたいした骨ではない」と見られがちです。その結果、腓骨骨折を伴っていても後遺障害申請の際に腓骨の症状が十分に評価されず、本来認定されるべき等級が取れないケースがあります。特に脛骨骨折と同時発生した場合、脛骨の後遺障害が主軸になりやすく、腓骨の症状が見落とされることがあります。
理由② 偽関節の見落とし
腓骨骨幹部の斜骨折では、骨が完全にはつながっていない(偽関節)状態であっても、通常のレントゲン撮影だけでは判断が難しいことがあります。CT検査を実施することで初めて偽関節が確認できるケースもあり、適切な立証を行わなければ等級が認定されないリスクがあります。弁護士が関与することで、必要な検査や診断書の記載内容についてアドバイスを受けながら申請準備を進めることができます。
理由③ 可動域測定の正確さが等級を左右する
足首や膝の機能障害については、可動域の測定値が等級認定の基準になります。健側との比較で3/4以下かどうか(12級)、1/2以下かどうか(10級)が分かれ目であり、測定のタイミングや条件によって数値が変わることがあります。測定方法が適切でない場合、実態よりも低い等級にとどまる可能性があります。弁護士は測定結果や診断書の内容を確認し、必要に応じて異議申立を行うことができます。
理由④ 保険会社の賠償提示は低い
後遺障害等級が認定された後でも、保険会社が提示してくる示談金額は、任意保険基準で計算されていることが多く、弁護士基準(裁判基準)よりも大幅に低いのが実情です。特に逸失利益については、保険会社側から「腓骨だから仕事への影響は軽微だ」という主張がなされることがあり、十分な補償が得られないケースもあります。弁護士が交渉することで、弁護士基準に近い金額での解決が期待できます。
理由⑤ 治療中からのサポート
後遺障害の認定に向けては、治療中から適切な検査(CT・MRI・神経学的検査)を受けておくことが重要です。また、保険会社から「そろそろ治療を終わりにしませんか」という治療費打ち切りの打診がくることがあります。症状固定の判断はあくまで主治医が行うものであり、弁護士を通じて対応することで、治療の継続を主張しやすくなります。
弁護士費用特約の活用

【弁護士費用特約】とは、ご自身が加入している自動車保険・火災保険・個人賠償責任保険などに付帯している特約です。交通事故について保険会社との交渉や損害賠償のために弁護士を依頼する費用が、加入保険会社から支払われるものです。
弁護士費用特約の費用の上限は通常300万円です。多くのケースでは300万円の範囲内に収まり、自己負担なしで弁護士に依頼することが可能です。
- 弁護士費用特約を使っても、等級(保険等級)は下がりません。
- ご自身に過失がある場合でも利用できます(過失割合10:0のケースを含む)。
- ご自身だけでなく、一定の範囲のご家族が加入する保険も使える場合があります。
- どの弁護士に依頼するかは、被害に遭われた方が自由に選べます(保険会社の指定は不要です)。
まずはご自身やご家族の保険証券を確認し、弁護士費用特約が付いているかどうかをご確認ください。火災保険に付帯しているケースもあります。
まとめ:腓骨骨折は弁護士への早期相談が大切です

腓骨骨折は、骨折部位によって後遺症の出かたが大きく異なり、足首や膝の機能障害・偽関節・神経症状など、さまざまな後遺障害が生じる可能性があります。また「脛骨ほど重要ではない」と誤解されがちな骨であるため、正当な後遺障害等級が認定されなかったり、示談金が低く抑えられたりするリスクがあります。
治療中から適切な検査・記録を残すこと、症状固定後に正確な可動域測定を受けること、そして弁護士基準での賠償交渉を進めることが、適正な補償を受けるための重要なポイントです。
お怪我の状況や今後の見通しについて不安をお感じでしたら、諦めてしまう前に、ぜひ一度、交通事故に精通した弁護士にご相談ください。
ご相談・ご質問

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。交通事故においても専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は専門チームの弁護士が担当します。
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