建設現場での墜落・転落事故に遭われた方へ~後遺障害と損害賠償を弁護士が解説

本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士が執筆しています。

建設現場は、全業種の中で最も労災死亡事故が多い業種です。厚生労働省の統計によれば、令和6年の建設業における死亡者数は232人で業種別トップとなっています。そして、事故類型で最も多いのが「墜落・転落」です。これは、全体の約32.5%を占めています。

また、50歳以上の中高齢労働者の死傷者が5割を超え、熟練労働者の事故が多い状況です。

足場からの転落、屋根からの墜落、はしご・脚立からの落下など、高所からの落下事故は、頭部外傷、脊髄損傷、骨盤骨折、多発骨折といった極めて重篤なケガにつながります。命を取り留めたとしても、重い後遺障害が残るケースが少なくありません。

本コラムでは、建設現場での墜落・転落事故の発生状況から、後遺障害等級の認定、元請け・下請けの責任関係、会社への損害賠償請求まで、弁護士が詳しく解説いたします。

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建設現場での墜落・転落事故の発生メカニズム

建設現場での墜落・転落事故の発生メカニズム

足場からの墜落

足場の手すりの不備、床板の隙間、墜落防止ネットの不設置、安全帯(フルハーネス型墜落制止用器具)の未着用・不適切な使用が主な原因です。足場の組立・解体作業中の墜落も多発しています。

なお、令和元年2月から、高さ6.75メートルを超える箇所での作業ではフルハーネス型墜落制止用器具の着用が義務化されています。旧来の胴ベルト型安全帯では、墜落時に腰部に荷重が集中して内臓損傷のリスクがあるため、より安全なフルハーネス型への移行が進められています。

屋根からの墜落

スレート屋根の踏み抜きによる墜落は、建設業の重大災害として繰り返し発生しています。スレートは薄く割れやすい素材であり、見た目以上にもろいため、足を乗せた瞬間に踏み抜いて墜落するケースが後を絶ちません。

勾配屋根での滑落や、天窓(トップライト)からの墜落も報告されています。

はしご・脚立からの転落

脚立の不安定な設置、天板に乗っての作業(本来禁止されている行為)、はしごの角度不良やすべりによる転落があります。脚立は身近な道具であるため危険を軽視しがちですが、打ちどころによっては頭部外傷や脊椎骨折など重篤なケガにつながります。

開口部・吹き抜けからの墜落

建設中の建物の床に設けられた開口部に養生蓋が設置されていなかった場合や、エレベーターシャフト・階段の吹き抜けからの墜落があります。

建設業の労災認定

建設業の労災認定

建設現場での墜落・転落事故は、業務遂行中に業務に起因して発生するケースがほとんどであり、労災認定は比較的スムーズに行われます。

一人親方の場合

一人親方(個人事業主として建設工事に従事する方)は、通常の労災保険の対象外です。ただし、「労災保険の特別加入制度」に加入していれば、労災保険の給付を受けることができます。特別加入していない場合は、労災保険が使えないため、元請け等への損害賠償請求が補償を得る主要な手段となります。

下請け労働者の場合

下請け労働者が被災した場合、労災保険は下請け(被災者の雇用主)の保険関係が適用されます。損害賠償については、状況に応じて、下請けだけでなく元請けに対しても請求が可能です。

墜落・転落事故で認定される可能性がある後遺障害等級

墜落・転落事故で認定される可能性がある後遺障害等級

頭部外傷による高次脳機能障害

高所からの墜落で頭部を打った場合、高次脳機能障害が残ることがあります。等級は1級(常時介護が必要)から14級(軽微な認知障害)まで幅広く認定されます。

脊椎の圧迫骨折による変形障害・運動障害

等級認定基準
6級5号脊柱に著しい変形を残すもの(椎体前方高が後方の1/2以下等)
8級2号脊柱に運動障害を残すもの(可動域が健常値の1/2以下)
11級7号脊柱に変形を残すもの(レントゲン等で圧迫骨折が確認できるもの)

脊椎圧迫骨折は受傷直後のレントゲンやCTで見落とされることがあります。墜落・転落事故の後に腰や背中に痛みが続く場合は、MRI検査で圧迫骨折の有無を確認することが重要です。

脊髄損傷による麻痺

高所からの墜落では脊髄損傷のリスクがあり、四肢麻痺(1級)、対麻痺(2級)から不完全麻痺(3級~12級)まで、損傷の程度に応じた等級が認定されます。

骨盤骨折

骨盤骨折後の股関節機能障害(8級~12級)や、骨盤の変形障害(12級5号:裸体で明らかにわかる程度の変形)が認定されることがあります。

下肢の骨折による障害

大腿骨骨折や脛骨骨折後の膝・足関節の可動域制限(8級~12級)、下肢の短縮障害(8級:5cm以上、10級:3cm以上、13級:1cm以上)が認定されることがあります。

等級認定のポイント

墜落・転落事故は多発外傷になりやすく、複数の後遺障害が残った場合は「併合」により上位の等級が認定されます。頭部を打った場合は高次脳機能障害の見落としに注意が必要です。

労災保険から受けられる給付の種類

労災保険から受けられる給付の種類

療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、介護補償給付、遺族補償給付、特別支給金が支給されます。

一人親方の特別加入者の場合、給付基礎日額は加入時に自分で選択した金額に基づきます。実収入よりも低い日額を選択していた場合、給付額が不十分となる可能性があります。

労災保険給付と会社への損害賠償請求の関係

労災保険からは慰謝料は支給されません。会社に安全配慮義務違反がある場合、労災保険でカバーされない損害について損害賠償を請求できます。

安全配慮義務違反の具体例

・足場に手すり・中さん・幅木を設置していなかった(労働安全衛生規則第563条)
・墜落防止ネットを張っていなかった
・フルハーネス型墜落制止用器具を支給・着用させていなかった
・足場の組立等作業の特別教育を実施していなかった
・作業主任者を配置していなかった
・開口部に囲い・覆い・手すりを設けていなかった

元請けの責任

元請けは特定元方事業者として、関係請負人の労働者の安全を統括管理する義務を負います(労働安全衛生法第30条)。安全衛生協議会の開催、作業間の連絡調整、合図の統一、巡視など、具体的な措置が法定されています。これらを怠った結果として下請け労働者が被災した場合、元請けに損害賠償責任が生じます。

慰謝料の算定基準と計算例

慰謝料の算定基準と計算例

入通院慰謝料

骨折の場合は、裁判基準(赤い本の別表Ⅰ)に基づいて算定されます(下表参照)。

例えば、骨折で3ヶ月通院した場合、弁護士基準では73万円程度が相場となります。

後遺障害慰謝料

認定された等級に応じた金額の目安は以下のとおりです(下表参照)。

後遺障害等級裁判基準の後遺障害慰謝料
1級2,800万円
3級1,990万円
6級1,180万円
8級830万円
11級420万円
12級290万円
14級110万円

計算例

建設作業員(年収500万円、42歳)が足場から転落し脊椎圧迫骨折、後遺障害8級(労働能力喪失率45%)の場合。

・就労可能年数:67歳−42歳=25年
・25年に対応するライプニッツ係数:17.4131
逸失利益 = 500万円 × 0.45 × 17.4131 ≒ 約3,918万円

これに入通院慰謝料(入院2か月・通院10か月で約221万円)と後遺障害慰謝料(830万円)を加えると、損害額の合計は約4,969万円となります。

逸失利益の計算

逸失利益の計算

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数

会社に請求できる損害賠償項目の内訳

会社に請求できる損害賠償項目の内訳
損害項目内容労災保険との関係
治療関係費入院費、手術費、リハビリ費等療養補償給付でカバーされない部分を請求
休業損害休業期間中の収入減少労災の約80%給付との差額を請求
入通院慰謝料入院・通院の精神的苦痛労災からは支払われない
後遺障害慰謝料後遺障害の精神的苦痛労災からは支払われない
逸失利益将来の収入減少障害補償給付で不足する部分を請求
将来介護費重度後遺障害の場合の将来介護費用介護補償給付で不足する部分を請求
弁護士費用訴訟の場合、認容額の約1割労災からは支払われない

会社側の典型的な反論とその対策

会社側の典型的な反論とその対策

「安全帯を着けていなかったのは本人の責任(過失相殺)」

会社にはフルハーネス型墜落制止用器具の着用を徹底させる義務(指導監督義務)があります。着用させていなかった会社側の責任は免れません。裁判例では、安全帯未着用でも過失相殺は2~3割にとどまるケースが多いです。

「下請けの事故だからうちは関係ない」(元請け)

労働安全衛生法第30条により、元請けは統括管理義務を負います。判例で元請けの安全配慮義務違反を認めた事例は多数あり、「関係ない」という主張は通用しないこともあります。

「一人親方は労働者ではないから安全配慮義務は及ばない」

実態が「労働者」に近い場合(元請け等から具体的な指揮命令を受けていた場合等)は、一人親方であっても安全配慮義務の対象となりうることが判例で認められています。

「労災保険で補償されている」

慰謝料は労災からは支給されません。重度後遺障害では損害額が億単位になりうるため、労災給付だけでは到底足りません。

「示談で早期解決」

重度後遺障害の場合、損害額は非常に高額です。早期示談で低額の提示に応じないよう、弁護士にご相談ください。

弁護士に相談すべき理由

弁護士に相談すべき理由

元請け・下請けの責任関係の整理

建設現場では複数の事業者が関与しており、責任の所在が複雑になります。弁護士が法的に整理し、最も効果的な請求先を判断します。

重度後遺障害の場合は損害額が億単位

脊髄損傷や高次脳機能障害では、将来介護費を含めた損害額が1億円を超えることがあります。弁護士の専門的な知識と交渉力が不可欠です。

後遺障害等級の適正認定

高次脳機能障害の見落とし防止、脊椎圧迫骨折の適切な画像診断など、等級認定に必要な検査と資料の準備を弁護士がサポートします。

一人親方の方へ

特別加入していない一人親方の方は、元請け等への損害賠償請求が補償を得る主要な手段となります。実態が労働者に近い場合の法的判断を含め、弁護士にご相談ください。

まとめ~建設現場の墜落事故は命に関わります

まとめ~建設現場の墜落事故は命に関わります

建設現場での墜落・転落事故は、全産業の中で最も多くの死亡者を出している深刻な労災事故です。命を取り留めたとしても、脊髄損傷や高次脳機能障害など、一生涯にわたる重い後遺障害が残ることがあります。

労災保険からの給付を受けるとともに、会社(元請け・下請け)に安全配慮義務違反が認められれば、慰謝料、逸失利益、将来介護費などの損害賠償を請求することが可能です。

「会社(元請け)に迷惑をかけたくない」「一人親方だから仕方がない」と諦める必要はありません。まずは、労災問題に精通した弁護士にご相談ください。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。また、各分野について専門チームを設けており、労災分野では労災事故と後遺障害に集中特化した弁護士チームが、ご相談から解決まで一貫してサポートいたします。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀
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