
法的な解決、あるいは自分自身のこれからの人生を有利に進めるためには、疑いを持った瞬間の「初動」が運命を分けます。弁護士の視点から、配偶者に不貞行為の疑いがある場合に「どのような準備をすべきか」について、実務的なポイントを詳しく解説します。
「不貞行為」の法的定義を正しく理解する

まず、私たちが準備すべき「証拠」のゴールを明確にするために、法律上の「不貞行為」とは何かを再確認しておきましょう。
一般的に「浮気」や「不倫」という言葉は幅広く使われますが、裁判実務において慰謝料請求の対象となる「不貞行為」とは、原則として「自由な意思に基づく配偶者以外との肉体関係(性交渉)」を指します。
「頻繁にLINEで愛の告白をしている」「二人きりで何度も食事に行っている」「手をつないで歩いていた」といった事実だけでは、法律上の不貞行為があったと断定するには不十分とされるケースが少なくありません。裁判官に「これは肉体関係があったと推認できる」と確信させるだけの、客観的な証拠を集めること。これが「勝てる準備」の第一歩です。
自分でできる!隠密証拠収集のチェックリスト

探偵を雇う前に、まずはご自身で日常生活の中に潜む証拠を確保する必要があります。ただし、後述する「NG行動」に抵触しないよう、隠密に行うことが鉄則です。
スマホ・SNSの周辺情報
スマートフォンの内容を勝手に見ることはプライバシー侵害のリスクがありますが、ロックがかかっていない状態で、画面に表示されている不適切な通知や、開いたままのトーク画面を「自分のスマホで撮影する」ことは有効な場合があります。
ポイント
メッセージの内容だけでなく、送信日時、相手の名前(またはニックネーム)が写るようにしてください。
レシート・領収書・クレジットカード明細
財布や鞄、ゴミ箱の中に残された紙片は情報の宝庫です。
チェック対象
ホテルの領収書、二人分のレストランの伝票、高級ブランド品やアクセサリーの購入歴、自分が行っていない地域のコンビニレシート。
保存方法
原物を確保するのが一番ですが、難しい場合は日付と店名がはっきりわかるように写真に収めてください。
交通系ICカードの履歴や走行履歴
カーナビ・ドライブレコーダー
頻繁に訪れている見知らぬ場所や、車内での親密な会話、ホテルへの出入りの映像が記録されていることがあります。
交通系ICカード(Suica/PASMO等)
券売機で利用履歴を印字することで、仕事とは無関係な駅への頻繁な移動を証明できる場合があります。
スケジュール帳と日記の作成
これが意外と重要です。「〇月〇日、夫が残業と言って23時に帰宅。シャワーから出てきたら石鹸の香りがした」といった、日々の些細な違和感をノートに記録しておいてください。これ単体では直接証拠になりませんが、後に探偵の調査結果や他の証拠と照らし合わせた際、強力な裏付け(間接証拠)となります。
探偵事務所(調査会社)を利用する際の判断基準
「肉体関係を推認させる証拠」として最も強力なのは、やはり「ラブホテルへの出入りを捉えた写真や動画」です。これを素人が自力で撮影するのは極めて困難であり、発覚のリスクも高いため、探偵への依頼を検討することになります。
しかし、無計画に依頼すると数十万から数百万円の費用が無駄になりかねません。弁護士の立場から言える「賢い使い時」は、前述の「日記」や「レシート」によって、「いつ、どこで会っているか」の予測がある程度立ってからです。
「怪しいから1週間ずっと尾行してほしい」という依頼の仕方ではなく、「来週の金曜日は怪しいので、この日の午後から張ってほしい」とピンポイントで指定することで、コストを抑えつつ、裁判で勝てる決定的な証拠を得られる確率が高まります。
やってはいけない「NG行動」のリスク管理

準備を進める中で、ついやってしまいがちなのが以下の行動です。これらは、せっかくの準備を台無しにするだけでなく、あなた自身が法的責任を問われるリスクがあります。
問い詰め・自白の強要
証拠が揃わないうちに「浮気してるでしょう!」と問い詰めるのは最悪のタイミングです。相手は必ず警戒し、スマホの履歴を消去し、会う場所を変えます。一度警戒された後の証拠収集は難易度が数倍に跳ね上がります。
職場への連絡やSNSでの拡散
「相手を社会的破滅に追い込みたい」という気持ちは痛いほど分かります。しかし、相手の職場に乗り込んだり、SNSで不倫の事実を晒したりする行為は、名誉毀損罪や業務妨害罪に問われる可能性があります。最悪の場合、慰謝料をもらうどころか、こちらが損害賠償を支払う羽目になり、「相殺」されてしまうことすらあります。
違法な手段での証拠収集
相手のスマホに無断で「スパイアプリ(遠隔操作アプリ)」をインストールする行為は、不正指令電磁的記録供用罪などに該当する恐れがあります。違法に収集された証拠は、裁判で証拠として認められないリスクがあるため、絶対に避けてください。
不正アクセス禁止法においては、「不正アクセス行為」をすることが禁じられ、これに違反すると、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」とされています(不正アクセス禁止法3条、11条)。「不正アクセス行為」とは、アクセス権限のない人が、他人のID・パスワードを利用して、ネットワークに侵入することをいいます。 たとえば、配偶者のアカウントID・パスワードを何らかの方法で知り、別のパソコン等でログインすることは、「不正アクセス行為」として処罰の対象になります。
また、仮に不正アクセス禁止法等の法律には違反しないとしても、その証拠収集態様によっては、それ自体が不法行為として損害賠償請求の対象となってしまう場合もあります。
証拠が集まった後の「出口戦略」

証拠が集まった後、あなたがどのような未来を望むかによって、取るべき戦略は変わります。
関係を修復したい場合
証拠を突きつける目的は、相手に言い逃れをさせず、不倫相手との関係を完全に断ち切らせることにあります。「二度と会わない」という合意書を作成し、不倫相手にも慰謝料を請求することで、再発防止の楔(くさび)を打ち込みます。
離婚したい場合
不貞の証拠があれば、あなたは「有責配偶者」である相手からの勝手な離婚請求を拒否できますし、逆に有利な条件(慰謝料、財産分与、親権等)での離婚交渉を進めることができます。
不倫相手にだけ慰謝料を請求したい場合
配偶者とは離婚せず、家庭を壊した不倫相手にのみ責任を取らせることも可能です。この場合、相手の氏名と住所(または勤務先)の特定が必要になります。
まとめ~なぜ早期に弁護士へ相談すべきか

「まだ離婚するか決めていないのに、弁護士に相談してもいいのだろうか」と躊躇される方は多いです。しかし、実際には「決めるために、自分の持ち札(証拠と権利)を確認する」のが弁護士相談の本来の役割です。
私たち弁護士は、あなたが集めた断片的な情報が「裁判で勝てる証拠」になるかどうかを客観的に診断できます。また、今後の調査方針のアドバイスや、信頼できる探偵社の紹介、さらには相手と対峙する際の法的なバックアップを全面的に行います。
一人で悩み、夜も眠れない時間を過ごすのはもう終わりにしませんか。冷静な準備こそが、傷ついたあなたの尊厳を取り戻し、新しい人生の扉を開くための鍵となります。
次にあなたがすべきことは、まずは、お手元にある「違和感の記録」を整理してみてください。その内容を持って、一度法律相談にお越しください。今の状況で何が足りないのか、これから何をすべきか、一緒に戦略を立てましょう。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





