
失業してしまい求職活動する求職者が安定した生活を送りつつ1日でも早く再就職するための支援として、失業保険があります。会社から解雇され失業した場合でも一定の要件を満たせば失業保険を受給することができます。
本コラムでは、失業保険を受給するための要件や手続きについて解説します。
失業保険とは

失業保険(正式には「基本手当」と言います。)とは、失業者の生活を保障し、安心して求職活動に取り組めるようにすることを主な目的として、一定の要件を満たした失業者に対し給付されるものです。
ハローワークを通じて受給手続きを行います。
以下、失業保険を受給するための要件について解説します。
失業保険を受給するための要件

自己都合退職と会社都合退職
会社都合退職の場合、会社の倒産や解雇など再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者であるとして、「特定受給資格者」(雇用保険法23条2項)となります。
一方で、労働者の個人的な理由や都合で離職する場合を自己都合退職と言います。
自己都合退職のうち、契約期間が満了した際に更新を希望していたにもかかわらず雇止めされた者ややむを得ない正当な理由(本人の病気、家族の介護や看護、配偶者の転勤など)で退職した者については、「特定理由離職者」(雇用保険法)となります。
特定受給資格者又は特定理由離職者の場合、一般的な自己都合退職の場合と比べて、失業保険を受給するための要件、受給の開始時期や金額等の条件が緩和されます。
以下、失業保険の受給要件について解説します。
失業の状態にあること
失業保険を受給するためには、雇用保険法が定める失業の状態にあることが必要です。
失業の状態とは、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにも関わらず、職業に就くことができない状態を意味します。
すなわち、病気などによって働くことができない人などは就職できる能力が認められず、失業状態に当たりません。
雇用保険の被保険者期間が一定期間あること
失業保険を受給するためには、以下の被保険期間を満たす必要があります。
- 特定受給資格者又は特定理由離職者の場合
離職日以前の1年間の被保険者期間が6ヶ月以上あること(雇用保険法13条2項) - 一般的な自己都合退職の場合
離職日以前の2年間の被保険者期間が12ヶ月以上あること(雇用保険法13条1項)
失業保険の条件

いつからもらえる
- 特定受給資格者又は特定理由離職者の場合
求職者が離職後初めてハローワークに休職の申し込みをした日から7日間の待期期間(雇用保険法21条)が経過した後、すぐに受給することができます。
- 自己都合退職の場合
令和7年4月以前の自己都合退職の場合は7日間の待期期間に加え、原則、2ヶ月間の給付制限期間がありましたが、雇用保険法の改正により、令和7年4月1日以降の自己都合退職の場合、原則として、給付制限期間が1か月に短縮されました。
また、離職日前1年以内に厚生労働省が定める教育訓練を受講していた場合、又は離職後に受講する場合、給付制限期間が撤廃され、待機期間7日間を経ればすぐに失業保険の給付を受けられるようになります(雇用保険法33条1項)。
受給日数
失業保険を受給できる日数は以下のとおりです。
・特定受給資格者又は一部の特定理由離職者の場合
90日~330日(雇用保険法23条1項)
このように特定受給者又は一部の特定理由離職者の場合の受給日数は、年齢によって細かく分けられています。
・自己都合退職の場合
90日~150日(雇用保険法22条1項)
いくらもらえる
失業保険の金額は、以下の計算式で定まります。
失業保険の日額=賃金の日額(退職前6ヶ月の給与の総額÷180)×給付率(60歳未満50~80%、60歳以上65歳未満45~80%)
失業保険の手続き

失業保険を受給するためには以下の手続きをする必要があります。
離職票の取得
離職後、まずは会社から離職票(1・2)を受け取る必要があります。
受給資格の認定を受ける
失業保険の手続きは、以下の必要書類を持参し、お近くのハローワークで行います。
- 離職票1・2
- 顔写真付きの身分証
- マイナンバー確認書類
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
- 証明写真(縦3.0cm×横2.4cmを2枚)
雇用保険受給説明会に参加する
雇用保険受給説明会に参加し、雇用保険の目的や求職活動等の制度全体の基本的な事項について説明を受けます。
雇用保険受給説明会の開催日時は受給資格認定の際に指示されるので必ず出席しましょう。
雇用保険説明会の後、失業認定日が設定されます。
また、失業認定申告書及び受給者資格証の交付を受けます。
求職活動を行う
その後、失業認定日までの間、月に1回以上の求職活動を行います。
失業認定日ハローワークに行く
受給者資格証を提示するとともに失業認定申告書を提出します。
以上の手続きを経て、失業保険が給付されることになります。
不当解雇の場合には

法律や就業規則に反する不当解雇がなされた場合には、会社に対し、解雇が無効であるため復職することを求めて交渉、労働審判又は訴訟を提起するなどといった方法で争うことができます。
もっとも、解雇を争うとしても、会社からの給料は支払われないため、当面の生活費を確保する必要があります。そのようなときのために失業保険には、仮給付という制度があります。
仮給付は、解雇が有効であると判断された場合には、そのまま失業保険として受け取ることができます。一方で解雇が無効であるとされた場合、仮給付を返還する義務が生じます。
仮給付の手続きはハローワークにて行います。その際に、不当解雇で争っていることを示す書類が必要となります。
不当解雇を、会社という組織相手にご自身の力だけで争うのは非常に困難です。一度弁護士に相談してみましょう。
まとめ

- 失業保険は、失業してしまい求職活動する求職者が安定した生活を送りつつ1日でも早く再就職するための支援である
- 解雇された場合でも、要件を満たせば失業保険を受給できる
- 特定受給資格者又は特定理由離職者の場合、自己都合退職の場合と比べて、失業保険の受給の要件や受給の条件が緩和される
- 不当解雇を争う場合、雇用保険の仮給付制度を使える
- 不当解雇を争う場合には弁護士に相談を!
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