【弁護士解説】急増する電動キックボード事故の法的責任と過失割合|法改正後の実務対応

2023年7月の法改正以降、街中で急増する電動キックボード。便利さの一方で事故も多発しており、「相手が無保険だった」「過失割合でもめた」など、被害者が予期せぬ不利益を被るリスクが潜んでいます。 本コラムでは、交通事故に精通した弁護士が、新設された「特定小型原付」の法的定義から、事故時の損害賠償・過失相殺の特殊性までを徹底解説。ヘルメットの有無や歩道走行が賠償額にどう響くのか?最新の実務感覚を踏まえ、泣き寝入りしないためのポイントと弁護士介入のメリットをまとめました。もしもの時の備えとして、ぜひご一読ください。

はじめに~電動キックボード~

はじめに~電動キックボード~

街中で見かけることが日常となった「電動キックボード」。

手軽な移動手段として普及が進む一方で、交通事故の件数も急増しています。 2023年7月1日の改正道路交通法施行により、一定の条件を満たす機体が「特定小型原動機付自転車」として新たな区分に位置づけられましたが、ルールが複雑であり、利用者・周囲の交通参加者ともに正しい理解が追いついていない現状があります。

「電動キックボードにぶつけられた」
「電動キックボードで車と接触した」

こうした相談は、今後ますます増加することが予想されます。

本コラムでは、交通事故に詳しい弁護士の視点から、電動キックボード事故の特殊性、賠償実務における問題点、そして法的対応のポイントについて詳しく解説します。

電動キックボード事故の現状と統計

電動キックボード事故の現状と統計

警察庁の統計によると、電動キックボードに関連する事故件数は年々増加の一途をたどっています。特に法改正前後から、シェアリングサービスの拡大と共に事故件数は顕著に跳ね上がりました。

事故の類型として特徴的なのは以下の点です。

・単独事故の多さ

タイヤが小さく段差に弱いため、転倒による負傷が多い。

・対歩行者事故

歩道を高速で走行し、歩行者と衝突するケース。

・出会い頭の事故

一時停止無視や信号無視により、交差点で自動車と衝突するケース。

重大な懸念点は、違反を伴う事故の割合が非常に高いことです。

信号無視、一時不停止、酒気帯び運転、そして原則禁止されている歩道通行など、交通ルールを軽視した走行が重大事故を招いています。

これは単なる「不注意」ではなく、規範意識の欠如が事故の背景にあることを示唆しており、後の過失割合の協議においても大きな争点となります。

そもそも「電動キックボード」とは何か?

そもそも「電動キックボード」とは何か?

交通事故の法的責任を論じる前提として、その機体が法的にどのカテゴリーに属するかの判別が極めて重要です。ここが曖昧だと、適用される過失割合の基準すら定まりません。

現在は、主に以下の2つに大別されます。

① 特定小型原動機付自転車(いわゆる「特小」)

2023年の法改正で新設された区分です。

・要件

最高速度20km/h以下、長さ190cm×幅60cm以下、緑色の最高速度表示灯の装備など。

・免許

不要(ただし16歳未満は運転禁止)。

・ヘルメット

努力義務。

・歩道走行

原則禁止(ただし、最高速度6km/h以下に制御し、表示灯を点滅させる「特例特定小型原動機付自転車」モードであれば、自転車通行可の歩道を通行可能)。

② 一般原動機付自転車(従来の原付)

上記の要件を満たさないもの(速度が20km/hを超える、保安基準を満たさない等)は、従来どおりの原付バイクとして扱われます。

・免許

必須。

・ヘルメット

必須。

・歩道走行

禁止。

【弁護士の着眼点】

インターネット通販等で購入された機体の中には、見た目はキックボードでも、法的には「一般原付」に該当するものが多数存在します。これらを免許なし・ノーヘル・ナンバープレートなしで運転して事故を起こした場合、「無免許運転」「整備不良」などの重い法令違反が問われ、過失割合において運転者に極めて不利に働く可能性があります。

電動キックボード事故の問題点と特殊性

電動キックボード事故の問題点と特殊性

実務上、電動キックボード事故は一般的な自動車事故や自転車事故とは異なる「扱いにくさ」があります。

① 「無保険」のリスク

自動車であれば任意保険の加入が一般的ですが、電動キックボード(特に個人所有)の場合、自賠責保険ですら未加入(無保険)であるケースが散見されます。ましてや、対人・対物賠償をカバーする任意保険に加入している利用者は少数派です。 加害者が無保険の場合、被害者が重傷を負っても、相手に資力がなければ十分な賠償金を受け取れないという最悪の事態(泣き寝入り)が発生し得ます。

② 身体的脆弱性と重傷化

構造上、身体がむき出しであり、タイヤ径が小さく不安定です。「特定小型」ではヘルメットが努力義務であるため、頭部外傷を負うリスクが非常に高くなっています。 自動車対キックボードの事故では、キックボード側の過失が大きくても、キックボード運転者が甚大な被害(高次脳機能障害や死亡)を負うことがあり、被害規模と責任のバランスが複雑になります。

③ 証拠の乏しさ

ドライブレコーダーを搭載している電動キックボードは稀です。事故態様(どちらが赤信号だったか、一時停止したか)について言い分が食い違った際、客観的な証拠が乏しく、水掛け論になりやすい傾向があります。

交通事故案件への影響(損害額・過失割合)

交通事故案件への影響(損害額・過失割合)

実際に事故が起きた場合、法的実務にはどのような影響があるのでしょうか。

損害額の算定

損害賠償の項目(治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益)自体は、自動車事故と同様です。

しかし、電動キックボード事故では「後遺障害」が争点になりやすい傾向があります。

転倒による手首の骨折、顔面の挫創、頭部打撲による神経症状など、生活や仕事に支障をきたす後遺症が残る可能性が高いためです。

適正な後遺障害等級の認定を受けられるかどうかが、最終的な賠償額を数百万〜数千万円単位で左右します。

過失割合の判断基準

ここが最も専門的な判断を要する部分です。

「特定小型原動機付自転車」の過失割合については、基本的に「自転車」に準じた基準(別冊判例タイムズ等)を修正して適用する運用が固まりつつあります。

ケース1:自動車 vs 電動キックボード(特小)

「交通弱者」の保護の観点から、キックボード側がやや有利(自転車と同等)に扱われます。 しかし、キックボード側が以下のような違反をしていた場合、大幅な過失修正(10〜20%以上の加算)がなされる可能性があります。

  • 右側通行(逆走)
  • 信号無視
  • 夜間の無灯火
  • 一時不停止
  • スマホを見ながらの「ながら運転」
  • 酒気帯び運転

ケース2:歩行者 vs 電動キックボード(特小)

この場合、キックボードは「車両」であり「加害者」となります。

歩行者は絶対的な交通弱者です。

特に、歩道を高速(20km/hモード等)で走行して歩行者に衝突した場合、キックボード側の過失は100%に近い重い責任を問われることになるでしょう。

「歩行者が避けてくれると思った」という言い訳は通用しません。

なぜ弁護士に相談すべきなのか

なぜ弁護士に相談すべきなのか

電動キックボード事故は、法制度が新しく、保険会社や警察ですら判断に迷うケースが少なくありません。だからこそ、交通事故に精通した弁護士の介入が不可欠です。

① 適正な過失割合の主張立証

相手方保険会社は、電動キックボードの特性を十分に考慮せず、自動車同士の事故基準や、被害者に不利な修正要素を適用してくる可能性があります。

弁護士は、事故現場の状況、機体の法的区分、相手方の違反行為(無灯火、モード違反など)を精査し、裁判基準(赤い本基準)に基づいた適正な過失割合を主張します。

② 無保険者・資力不足者への対応

加害者が保険に入っていない場合、個人への請求となりますが、これは極めて困難な交渉です。

弁護士であれば、公正証書の作成や資産の差押えを見据えた強い交渉、あるいはご自身の保険(人身傷害保険や無保険車傷害保険)が使えないかの約款検討など、回収のためのあらゆる手段を模索できます。

③ 後遺障害等級認定のサポート

前述のとおり、キックボード事故は骨折や頭部外傷が多く、適切な後遺障害認定が賠償額の鍵を握ります。医師への診断書作成依頼のポイントや、必要な検査のアドバイスなど、等級認定を見据えた治療段階からのサポートが可能です。

④ 賠償額の増額

弁護士が介入することで、保険会社基準(低額)ではなく、裁判所基準(高額)での示談交渉が可能になります。

特に慰謝料や逸失利益においては、弁護士が入るだけで金額が2倍、3倍になることも珍しくありません。

当事務所のサポート内容

当事務所のサポート内容

初回相談無料

事故の状況、ケガの状態などを詳しくお伺いし、後遺障害、損害賠償請求の見通しについて具体的にご説明します。

証拠保全のアドバイス

事故直後から、証拠の収集・保全をサポートします。また、医学鑑定など幅広く考えて参ります。

損害賠償交渉・訴訟(裁判)の代理

経験豊富な弁護士が、粘り強く賠償交渉を行います。合意に至らない場合は、紛争処理センターや訴訟を通じて法的な解決を図ります。

自賠責(後遺障害)の手続サポート

後遺障害申請についても、スムーズに進むよう全面的にバックアップいたします。

最後に見ていただきたい交通事故サポートのこと

最後に見ていただきたい交通事故サポートのこと

電動キックボードは便利なツールですが、ひとたび事故が起きれば、その「気軽さ」とは裏腹に、深刻な身体的被害や複雑な法的トラブルを招きます。

「相手が電動キックボードだから、大したことはないだろう」 「新しい乗り物だから、過失割合なんてわからない」

そのように諦めたり、相手方保険会社の提示を鵜呑みにしたりせず、まずは専門家にご相談ください。 当事務所では、最新の法改正や判例動向を常にアップデートし、電動キックボード事故の被害に遭われた方の救済に全力を尽くしています。事故直後の対応から示談交渉まで、安心してお任せください。

お悩みがあれば、ぜひ一度、交通事故問題に精通した弁護士にご相談ください。

私たちは、交通事故に遭われた皆様が安心して治療に専念し、一日も早く元の生活を取り戻せるよう、法的な専門知識と経験を活かして、自賠責の後遺障害申請手続から相手方や保険会社との交渉まで、全面的にサポートいたします。あなたの未来への不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。

当事務所では、お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。

私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。

まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。


■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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