
配偶者の不貞行為が発覚した等の理由により離婚や別居を考えているという場合、すぐに離婚等に向けた行動を起こしたいという衝動に駆られますが、即座に行動に移すことは後々の証拠上のデメリットやこうしておけばよかったという後悔につながる可能性がありますので、そのようなときこそ先を見据えた冷静な判断が必要となります。
今回は、離婚や別居を切り出す前に準備しておくべき事柄について解説をしていきます。
離婚や別居を切り出すことにより起こりうる配偶者の反応

離婚や別居を切り出された配偶者の反応は事案によって様々ですが、自身の非を認め離婚等の手続に全面的に協力するという配偶者は稀といわざるを得ません。
多くの配偶者は将来的に離婚があり得るということを前提としていかに自身が不利にならないかという観点から立ち振る舞いを決定することになります。
具体的には、既に露見している以上の情報を自ら開示しなくなる、証拠があるなら見せろとどこまでの情報が把握されているか知りたがる、収入や財産関係の資料を手元から離さなくなる等の行動が見られます。
そのため、配偶者に対して離婚や別居を切り出す際には、今後、配偶者から現状以上の情報を得ることはできないという前提のもとで争っていかなければならないということを理解しておく必要があります。
離婚や別居を切り出す以前に得ておきたい情報

別居の際には別居以降の婚姻費用を設定する必要があり、離婚の際には離婚に伴う養育費、財産分与、慰謝料等の取り決めを行う必要があります。
適切な取り決めを行うためには双方の収入資料や財産関係資料を参照する必要がありますが、それらの資料の収集が不十分な状態で配偶者に対して離婚や別居を切り出してしまうと、前述したとおり、それ以降は収集が難しい状況に陥ることになります。
離婚や別居を有利に進めるという観点から離婚や別居を切り出す前提として手元に置いておきたい資料を以下に整理します。
①離婚や別居の原因に関する資料
配偶者の不貞行為を示す密会現場の写真、動画、不貞相手とのメッセージのやり取り等
配偶者の暴力や暴言を示す怪我の写真、診断書、動画・録音、夫婦間のメッセージのやり取り等
②別居期間中の婚姻費用や離婚後の養育費に関する資料
婚姻費用算定の前提となる双方の収入資料(源泉徴収票、確定申告書、課税証明書、給与明細等)
③離婚時の財産分与に関する資料
配偶者の保有する預金口座に関する情報(銀行支店名、口座種別、口座番号、取引履歴)、財形貯蓄や積立制度の利用状況、保険の加入情報(保険会社、保険種別、解約返戻金の有無)、自宅不動産に関する情報(住宅ローン残高、査定価値)、自動車に関する情報(車検証、査定価値)、保有する株式に関する情報(証券口座情報、保有銘柄、株式数)、退職金に関する情報(退職金制度の有無、一時金と確定拠出年金の内訳)
②及び③についてはおおまかな情報が把握できていれば調停や裁判の場で関係先から収集するという方法もあり得ますが、①については関係先から出てくる性質のものではないため、前もって自力で収集しておく必要があります。
なお、離婚に際しては年金分割についても合意をする必要がありますが、年金分割手続で使用する資料については事後的に年金事務所から取得することが可能ですので、離婚や別居を切り出す前に収集しておく必要は必ずしもありません。
各種情報の入手方法及び注意点

①離婚や別居の原因に関する資料
これについては日々の積み重ねが重要となってくる部分が多く、日頃から配偶者の行動に関する記録をとっておくことが肝要です。
配偶者から暴力を受けた場合には間を置かず受傷箇所の写真を撮影したり、医療機関にかかることをお勧めします。場合によっては警察や支援窓口に相談して履歴を残しておくことも考えられます。
不貞行為に関しては探偵に調査を依頼することがあり得ますが、調査内容や期間によっては費用が高額となることがあるため、不貞行為の慰謝料相場を確認した上でどこまで費用をかけるかについてはよくよく検討する必要があります(不貞行為の証拠が取れても調査費用との兼ね合いでは赤字という事案は多くあります)。
②別居期間中の婚姻費用や離婚後の養育費に関する資料
家計管理をしている側であれば月々の給与明細を受け取っているなどして配偶者の収入関係の資料を収集することは比較的容易かもしれません。
日常生活の中で収入関係資料に触れることがないという場合には同居期間中に役所に出向き配偶者の課税証明書を取得する方法があります。
③離婚時の財産分与に関する資料
②と同様、家計管理をしている側であれば支払関係で預金を移動する等して配偶者の財産関係資料を収集することは比較的容易かもしれません。
配偶者の側で財産管理をしていて配偶者がどのような財産を保有しているかよく分からないという場合には、配偶者が日頃どの金融機関を利用しているかを確認したり、自宅に金融機関や保険会社などから届く書類やDMがないかを日頃からチェックすることで財産関係のヒントが得られる可能性があります。
ヒントがあれば裁判所手続の中で関係先から回答を得ることができる場合がありますので、些細な情報であっても記録しておくことに損はありません。
まとめ

今回は離婚や別居を切り出す前に準備しておくべき事柄について解説をしてきました。
配偶者の収入や財産関係の資料については家庭での役割分担により入手しやすい場合と入手しにくい場合とに分かれますが、離婚原因に関する資料については日々の積み重ねが重要となりますので、配偶者に主だった離婚原因が存在する場合にはこまめに記録を残すようにしてください。
配偶者との離婚や別居を考えているが、現在手元にある証拠で自分の求める結論に辿り着くことができるかどうか判断ができないという場合には、配偶者に離婚や別居を切り出す前の段階で一度専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。
相談結果を踏まえ、いつの時点で配偶者に対して離婚や別居を切り出すべきかをご検討いただくことになるかと思います。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





