
連れ子を含む家族形態はしばしば見受けられ、当事者が亡くなった際に「相続」というデリケートな問題に直面することがあります。特に、再婚相手の連れ子は、法律上の親子関係がない場合、思わぬ形で相続権をめぐるトラブルに巻き込まれる可能性があります。
連れ子の「相続権」の有無を分ける鍵:養子縁組

まず、最も重要なポイントは、連れ子に相続権があるかどうかです。法律上、「連れ子」という立場がそのまま相続権を発生させるわけではありません。
相続権がある場合:養子縁組をしているケース
再婚相手の連れ子と、亡くなった親(再婚相手)との間に「養子縁組」が成立している場合、連れ子は法律上の「子」となり、実子と同じだけの法定相続分を持ちます。
法定相続分
・亡くなった方の配偶者(再婚相手)は、常に相続人となります。
・配偶者と子が相続人の場合、それぞれの法定相続分は2分の1ずつです。
・子が複数いる場合は、子の法定相続分(2分の1)を均等に分けます。
例:配偶者と実子1人、養子1人の場合、配偶者が2分の1、実子が4分の1、養子が4分の1となります。
連れ子を養子に迎えることは、家族としての絆を公的に証明し、相続においても実子と公平な地位を与えるための最も確実な方法です。
相続権がない場合:養子縁組をしていないケース
再婚相手の連れ子と、亡くなった親(再婚相手)との間に養子縁組がない場合、連れ子は法律上、亡くなった親の相続人ではありません。この場合、連れ子は一切の財産を相続する権利がなく、遺産分割協議に参加することもできません。
この事実は、長年連れ子を実の子のように育ててきた親御さんにとって、非常に残酷な結果をもたらす可能性があります。親御さんの「連れ子にも財産を残したい」という意思だけでは、法律上の相続権は発生しないのです。
養子縁組をしていない連れ子へ財産を残す方法

養子縁組は複雑な事情からできない、あるいは敢えてしないという選択をするご家庭もあるでしょう。その場合でも、亡くなった親(再婚相手)の意思で連れ子に財産を遺す方法は存在します。
遺言書の作成による「遺贈」
相続権のない連れ子へ財産を遺す最も強力な手段が「遺言書」の作成です。遺言書で「私の財産のうち〇〇を、連れ子の〇〇に遺贈する」と明確に指定することで、連れ子に特定の財産を渡すことができます。
遺言書の重要性
遺言書がない場合、連れ子は一切財産を取得できません。連れ子への遺贈は、亡くなった親の最後の意思表示として、法的に尊重されます。
形式の厳格さ
遺言書は、自筆証書遺言や公正証書遺言など、民法で定められた厳格な形式を満たさなければ無効になってしまいます。特に公正証書遺言は、公証人が関与するため、形式不備の心配がなく、最も安全で確実な方法として推奨されます。
生前贈与の活用
多額の財産を遺贈すると、残された配偶者や実子の遺留分を侵害する可能性があります。これを避けるため、生前に財産の一部を連れ子に贈与することも有効な手段です。ただし、贈与税の非課税枠や税率を考慮し、計画的に行う必要があります。
生命保険の活用
生命保険の死亡保険金受取人に連れ子を指定することで、確実に、かつ迅速に財産を遺すことができます。死亡保険金は、原則として受取人固有の財産とされ、遺産分割の対象外となるため、他の相続人の遺留分を侵害する可能性も低くなります(ただし、例外的に遺留分の対象となるケースもあるため注意が必要です)。
相続紛争を防ぐための「遺留分」への配慮

遺言書で連れ子に財産を遺す場合、必ず考慮しなければならないのが、配偶者や実子といった「法定相続人」の遺留分です。
遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に保障されている、最低限の遺産取得分です。亡くなった親が「全財産を連れ子に遺贈する」という内容の遺言書を作成したとしても、実子や配偶者は、自身の遺留分に相当する金銭を、連れ子(受遺者)に請求する権利があります(遺留分侵害額請求)。
対策のポイント
連れ子に財産を遺したいという親の意思と、実子・配偶者の権利とのバランスを取るため、遺言書作成時には以下の点に配慮すべきです。
遺留分を侵害しない範囲での遺贈
実子や配偶者の生活を考慮し、遺留分を侵害しない範囲で連れ子への遺贈額を設定します。
付言事項の活用
遺言書に「付言事項」として、連れ子への想いや、実子・配偶者への感謝、そしてなぜ連れ子に財産を遺贈するのかという理由を書き添えます。これにより、相続人間の感情的な対立を和らげ、紛争を未然に防ぐ効果が期待できます。
遺留分放棄の検討
実子や配偶者が、家庭裁判所の許可を得て生前に遺留分を放棄することも可能です。ただし、これは強制できるものではありません。
複雑化する相続における弁護士の役割

連れ子がいる場合の相続は、実子のみのケースに比べ、家族関係や感情的な背景が複雑になりがちです。
法的な正確性の確保
養子縁組の有無、遺言書の形式、遺留分の算定など、法的にクリアすべき点が多数あります。弁護士は、これらの手続きを正確に行うサポートを提供し、後々の無効化リスクを防ぎます。
公平性の視点
亡くなった親の意思を尊重しつつも、残された家族全員にとって公平で納得感のある解決策を模索するサポートを行います。
紛争の予防と解決
遺言書作成の段階から介入することで、将来の相続争いを予防します。また、実際に相続人間でトラブルが発生した場合、法的な代理人として交渉や調停、訴訟を通じて迅速かつ円満な解決を導きます。
終わりに

連れ子への想いを確実に、そして円満な形で実現するためには、生前の準備、特に専門家である弁護士と連携した遺言書の作成が不可欠です。相続は、残された家族の生活の基盤となる大切な問題です。手遅れになる前に、ご自身の家族構成と財産の状況に合わせた最適な対策を講じましょう。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





